ファインダー内の富士通QB平本恵也に向かって、巨体が横っ飛びに飛んできた。私は反射的にシャッターを切った。平本が崩れ落ちた。16日に東京ドームで行われた日本社会人選手権「ジャパンXボウル」、オービック・シーガルズ対富士通フロンティアーズの一戦、第1クオーター2分過ぎのプレーだ。
 強烈なヒットを浴びた平本はいったん立ち上がったものの動けなくなり、ストレッチャーでフィールドから運び出された。オービック応援席からは大歓声が上がり、富士通のサイドラインは静まりかえったというよりは凍りついたように感じた。


 QBサックを決めたのはオービックのDEバイロン・ビーティー・ジュニア(BJ)。軽々とジャンプすると、地面と平行の軌道で宙を舞いながら、ミサイルのように平本を襲った。米カレッジフットボールの強豪コロラド大でパスラッシャーとして活躍したBJの一撃が、この試合の流れを決定づけた。

 エンドゾーン奥から400ミリ望遠レンズを通して見ていた私は、プレーの詳細が分からなかった。翌日、テレビ解説のためフィールドを見下ろす位置で観ていた月刊「タッチダウン」誌の上村編集長に、富士通のパスプロテクションを尋ねた。
 ブロッカーはRBの進士祐介だったという。小柄な進士では189センチ110キロのBJをブロックするのは基本的に無理というもので、ミスマッチを生じさせるオービック守備の仕掛けがあったのではないか、という見立てだった。
 そこで、録画したテレビ放送を再生して確認した。オービックディフェンスは、主将のLB古庄直樹がインサイドからブリッツし、防ごうとした富士通OLのブロックが内側に集中、右のアウトサイドからラッシュしたBJをブロックする選手が進士だけになっていた。


 4連覇を達成したオービックの大橋誠ヘッドコーチは、試合最初のドライブをどう止めるのか、ということを守備の大きな課題にしていたという。「富士通は最初のシリーズをつなげて得点すると、そこを起点にゲームを作ってくる」。実際、富士通はファーストダウンを2回更新して38ヤードを進み、オービック陣内に入っていたが「BJらしいプレーで、良く止めてくれた」。「オープニングシリーズだったので、(直前のプレーを顧みるハドルの必要がない)オフェンスもフィールドを見ていたと思う。チーム全体を鼓舞するプレーになった」と称賛した。


 今季ベストのコンディションで試合に臨めたという古庄主将は「ディフェンスにホンマに目立つヤツが多くて、自分の調子が悪いのかなと思ったくらいです」と笑った後、「ディフェンスが試合を作れなければ今日は勝てないと思っていたので、(試合の中で)いいスタートができた」と振り返った。


 第1クオーターの先制タッチダウン(TD)も鮮烈だった。交代で出場した富士通QB出原章洋をタックル、ファンブルさせて得た攻撃権。ゴール前14ヤードまで攻め込むと、サードダウン残り4ヤードで、QB菅原俊はファーストダウンではなく、エースWR木下典明で一気にTDを狙った。木下はマンツーマンカバーの富士通CBアルリワン・アディヤミをスピードで振り切ってエンドゾーン奥でパスをキャッチした。


 アディヤミは、米サンディエゴ大では1年から先発CBとして出場、4年間43試合で、同大のタイ記録となる15インターセプトを記録し、今季から富士通に加入。日本人にはない高い身体能力とスピードで、リーグ戦ファーストステージの鹿島戦では、鹿島のエースWR前田直輝に投げられたパスをエンドゾーンで奪い取り勝負を決めていた。いわば富士通パス守備の切り札だ。攻守の「エース対決」で、木下が完勝したのだった。


 対戦相手の強い部分を避けるのではなく、真っ向勝負で折って、精神的なダメージを与える。オービックの「ミーンな強さ」をあらためて見せつけられた気がした。もちろん試合はモメンタムだけで決まるものではない。富士通は、左足首を痛めたQB平本がその後の試合の大半を欠場。早いタイミングのパスやリードオプションからのランがリーグ戦のような決定力を欠いたことが最大の敗因だろう。


 しかし、「今年こそ勝つ」という意気込みで入場時から気合十分だった富士通の選手たちに、開始早々から動揺が起きたのは否めない。誤解を恐れずに言えば、アメリカンフットボールには「けんか」の側面もある。百戦錬磨の王者が食らわせた、ディフェンスとオフェンス双方の鮮やかな「先制パンチ」は、優勝経験がない富士通のリズムを最後まで狂わせたと思う。

【写真】第1クオーター2分、宙を飛んで富士通のQB平本をサックするオービックのDLビーティー=撮影:Yosei Kozano、16日、東京ドーム