今回、日本社会人選手権「ジャパンXボウル」(12月16日・東京ドーム)の予想を依頼されたが、率直に言ってまったく予測がつかない。過去にない激しい戦いになる予感だけがある。今回のこのコーナーは富士通フロンティアーズの藤田智ヘッドコーチ(HC)とオービック・シーガルズの大橋誠HCとの一問一答をお届けしたい。


 ▽富士通フロンティアーズ藤田智HC(12月2日、ジャパンXボウル記者会見で)
Q:藤田HCはこれで4度目のジャパンXボウル、2007年最初に松下電工(現パナソニック)と対戦したときにはオフェンスのスペシャルプレーを最初から組み込んだ。
A:あのときは負傷で選手がいなかった。(松下電工との)力の差も歴然としていたのでああいうトリッキーなことをやった。(今回は)今季ここまででやってきたような感じで普通に試合ができたらいい。


Q:戦力的に自信を持っているのでは。
A:戦力は段々良くなっている。ただ戦力で決まることではない。試合なので相手とのやり取りがある。大事なのは自分たちの力をいかに発揮するかということと、相手の強みをいかに取り去るかということ。余計なことを考えすぎずに、自分たちの力を発揮することに集中すればいいと思う。


Q:「考えすぎない」というのは、ファーストステージで鹿島と対戦したときも言っていた。
A:オービック相手でも一緒。対戦相手の問題ではない。自分たちの気持ちの問題だと思う。どういう気持ちでプレーすることが自分たちにとっていちばん良いか。相手は関係ない。


Q:オフェンスで、平本(恵也)がスターターQBとしてやっているが成長した点は。
A:今までは負傷で十分練習できないままシーズンに臨んで、結局出られていなかった。そういう意味では(社会人4年目の今季が)初めてのシーズンみたいなもの。今季は彼の持ち味である思い切りの良さが出ている。得意のパスには(出原、吉田という)他のQBとは違う良さがある。今までとは違うパスオフェンスになっていると思う。


Q:平本は、2年前のジャパンXボウルでオービックと対戦し、タックルされて負傷した。
A:タックルされてというか、あれは自分で怪我してしまった。それで1年棒に振った。


Q:本人は何かそれについては。
A:どうですかね。本人はあまり考えていないのではないか。


Q:富士通がオービックに勝っているストロングポイントを上げるとしたら。
A:選手層の厚さだと思う。全体の選手層ではいい勝負ができているのではないか。向こうはトップの選手レベルが高いですから。うちは選手の厚みの部分では勝っているところもあるかなと。


Q:試合のキーマンは。
A:QBじゃないですか。


Q:今年5月のパールボウル準決勝でオービックに勝った時と今とでは両チームの違う点は。
A:試合のビデオを見直していないのではっきり分からないのだが、我々はオフェンスもディフェンスも力が上がってきていると思う。フィジカルもそうだが、システムに慣れてきている。


Q:自信はあるか。
A:わからない。ただ今までよりは普通に試合ができるんじゃないかと思う。


Q:今年の富士通は過去最強ではないか。
A:私がヘッドコーチをやってきた中では今年が一番強い。年々力が上がってきている。


Q:RBにジーノ・ゴードンが加入して、高野橋(慶大)、進士(祐介)と3人体制となり交替でリフレッシュしながらプレーしている効果が出ているのではないか。
A:RBのレベルは高い。3人以外にも優れた選手がいる。そこは武器だと思う。


Q:どんな試合展開を予想するか。どんな展開に持ち込みたいか。
A:まったくわからない。そんな自分たちが望むようなわけにはいかないと思うので、その時その時で対応していくしかない。


 ▽オービック・シーガルズ 大橋誠HC(12月1日横浜スタジアム、12月2日記者会見)


Q:準決勝の鹿島戦で2インタ-セプト。ボールセキュリティーの問題は。
A:ファンブルは論外だが、インターセプトを恐れて投げられないということでは困る。我々は、タイプとして負けないフットボールをして勝ち続けるチームではない。どれだけ攻めのフットボールができるかということ。そこの折り合いをつけて修正していきたい。


Q:鹿島戦ではスペシャルプレーでWRの木下(典明)がTDパスを決めた。今年1月のライスボウルで関学大に決められたプレーを思い出した。
A:ああいった大きなゲームの中で、決め所で真っ向勝負するだけじゃないということは勉強させてもらった。


Q:4連覇は意識するか。
A:そんな余裕はない。過去3年、ここからの2試合がどれだけしんどいかというのは分かっている。(この試合に勝って)ライスボウルに出ることが決まったときに意識するのかもしれないが。ここまでの8試合でもがき苦しんで、やっと土俵に上がらせてもらったという感じなので。


Q:古谷(拓也)、(ケビン)ジャクソン、木下らベテランが勝負所で決めたという印象が強い。
A:決めてほしい人間が決めてくれると、ルーキーの(DB)砂川敬三郎のような選手が相乗効果で活躍してくれる循環がある。意図的に「こういうことをしてくれるだろう」という選手にはそれを期待して、プレーに選手をあてているというところもある。彼らとしての宿命ですね。


Q:昨年は圧勝続きでジャパンXボウルに進出したが、今年は苦戦が続いたため逆に充実感があるのでは。
A:まずいプレーもあったが、ここへ来てオフェンスはオフェンス、ディフェンスはディフェンスでやるべきことがやれるようになった。今シーズンずっと言ってきたことがやっと少し形になったという感覚はある。遅くはなかった。


Q:5月に富士通に負け、連勝が37で止まったことが今のチームに対して大きかったのではないか。
A:敗戦を糧にできないのなら何の意味もない。我々はあの負けのお陰で、と思えるように取り組まなければならなかったし、チームが大きく変われたならいい経験だったなと思える。それを証明するのが今回の試合。


Q:敗戦の一番の反省点は。
A:細部に対してのこだわりが薄れていたり、足りなかったりしていた。これぐらいでよかろうということが少なからずあったと思う。自分たちでやられる形を作ってしまった場面があった。詰め切れていなかったと思う。

Q:勝ち続けることの難しさは。
A:どうしても勝ちたいという飢餓感みたいなものをどうやって醸成するのか。あるいはそれに変わるモチベーションを持つのか。大きなテーマだと思う。やはりチームも個々の選手も成長したり進化をしているという実感をいかに持たすかしかない。なぜ自分がもう一度頂点に立ちたいと思うのか。それを常に忘れないようにしなければならない。いろいろな刺激をチームに作っていくという意味では、2013年は例年以上にやった年ではある。


Q:富士通は春に敗れたときとはさらに違ったメンバー。大橋HCの目から見てどう思うか。
A:富士通の平井(基之)主将が語っていたように、今年の富士通は思い切りがある、自信を持ってプレーしている。迷いがない、ということを強く感じる。やっていることやメンバーの能力は毎年優勝してもおかしくないものがあったと思うが、今季何が変わったかといえばその部分。


Q:どのように対していくのか。
A:そういうチームと相対するときに、一番大事なのはいかに受けに回らないか。試合の中で我々にとって不都合なことが数多く起こると思うが、起こったことに引きずられずに、これから自分たちが起こそうとしていることに集中をして弱気にならずにやり続けられるか。選手だけでなくプレーコールしているコーチ陣もそうだと思う。インターセプトされたから、ちょっとパスを投げるのを控えようとかという循環に入っていったら、我々に勝ち目はない。起こってしまったことを切り捨てて、今ベストと思える作戦をどれだけ強気に投入できるか。プレーヤーがそれに対してどれだけ思い切ってプレーするか。そこに尽きると思う。


 最後に私なりの見どころを挙げておきたい。


①米国選手対決 両チームともに優れた能力を持つ米国人選手がチームを牽引している。オービックはDLにジャクソン、バイロン・ビーティー・ジュニア、OLにフランク・フェルナンデス、ケアラカイ・マイアバと、米国出身選手が強力な攻守ラインを作り上げている。富士通はDLアンドリュー・セウマロ、RBジーノ・ゴードン、DBアルリワン・アディヤミを要所に配置している。彼らがどれだけ活躍するかで勝負は決まる。また日本人トップWRの木下とアディヤミのマッチアップも見物だ。


②QB対決 オービックQB菅原俊と富士通QB平本は大学時代からビッグゲームで顔を合わせてきた。2007年の関東大学選手権決勝では、日大の平本が後半からリリーフで登場して法大に逆転勝ち、菅原の4年連続甲子園ボウル出場を阻んだ。11年のジャパンXボウルでは、パス272ヤード、2TDで勝利の原動力となった菅原に対し、途中出場の平本は負傷退場、明暗を分けた。ともに小柄ながら優れたパサーで、ランにも切れ味を見せる2人の今回の対決はどうなるか。


③ベテランLB対決 オービック守備陣のハート&ソウルは主将の古庄直樹、35歳。豊富な運動量のタックルマシーン。ボールのあるところには必ず彼の姿がある。富士通ディフェンスを鼓舞するのが鈴木將一郎、34歳。並外れた身体能力とスピードでQBにプレッシャーをかけ、RBにハードヒットを見舞う。ともに日本代表LBとしても活躍し続けてきた2人。大舞台での対決は、もしかすると最後かもしれない。

【写真】悲願の初優勝を目指す富士通の選手たち=撮影:Yosei Kozano