12月1日、社会人準決勝のオービック・シーガルズ対鹿島ディアーズを取材するために、横浜スタジアムへ向かう電車に乗り込んだところで、スマートフォンを取り出し、米カレッジフットボールのスコアを確認した。そして、サウスイースタン・カンファレンス(SEC)伝統の一戦「アイアンボウル」アラバマ大対オーバーン大(現地11月30日開催)の結果に驚いた。オーバーン大がアラバマ大を34―28で破ったとある。


 自宅で直前まで米サイトの試合速報を見ており、オーバーン大が第4クオーター残り32秒で28―28の同点に追いついたところまで確認していた。延長タイブレークになるだろうと見ていた。家を出てほんの数分しかたっておらず、野球のように表と裏の攻撃があるタイブレークで決着がつく時間はないはず。なにがあったのか。


 速報記事によれば、残り時間を流さずにランで前進したアラバマ大が、残り1秒で57ヤードのフィールドゴール(FG)を蹴ったが、ゴールポストに届かず。エンドゾーンの奥に1人配置されていたオーバーン大のクリス・デービスがボールをキャッチし109ヤードをリターンしてタッチダウン(TD)して試合を決めたという。


 この一部始終は、3日にアップされた丹生恭治さんのコラムに詳しく書いてあるのでぜひお読みいただきたい。付言すれば、今季ここまで11戦全勝で全米ランキング1位、第2次大戦後では初となる全米3連覇を狙っていたアラバマ大の野望は、極めて厳しい状況になった。「フットボールの歴史を変えたワンプレー」と言ってもいいかもしれない。


 78回目のアイアンボウルだけでない。同時間帯に行われたオハイオ州立大とミシガン大の110回目のライバル対決も、42―41。1点差を追うミシガン大QBガードナーが第4クオーター残り32秒で2ポイントコンバージョンを狙いインターセプトされる劇的な幕切れだった。


 米国のファンを羨望しつつ、横浜へ向かった。そしてオービック対鹿島。レベルの高い攻防が随所に見られた好試合を最後はオービックが制したが、今回は触れない。オービックについても、鹿島についても、いずれは思うところを書きたい。この試合、あえて表現すれば「横綱対大関の13日目の土俵」であって、千秋楽の名勝負とは言えないように思えた。


 オービックと鹿島の一戦の後、セカンドステージ下位リーグ「バトル9」の1位決定戦、オール三菱ライオンズ対エレコム神戸ファイニーズが行われた。先行したエレコム神戸を追う展開となったオール三菱だったが、終盤にオフェンスが調子を上げて24―21で、白熱したシーソーゲームを制した。オール三菱の谷口翔真はパス241ヤード、1TD、ラン47ヤード、1TD。エレコム神戸のイノケ・フナキはパス112ヤード、1TD、ラン114ヤード、1TD。パス、ランの両方に優れ、フィジカルも強い2人のQBが攻撃をリードし、見応えのある試合となった。


 谷口は立命大時代にゾーンリードオプション攻撃で2010年の甲子園ボウルを制覇。フナキは元々RBながら、米ハワイ大で2008年にエースQBとして出場した経験を持つ。2人とも、上位チームでも十分に先発できる実績や能力を持つだけに、このくらいのパフォーマンスは当然だった。


 問題は違うところにあったようだ。観客数は、第1試合のほぼ3分の1。取材陣に至っては、試合終了まで残っていたのはリーグのオフィシャルカメラマンを除けば私1人だった。
 率直に言って、試合のコンセプトが明確ではなく、ファンや報道陣にきちんと伝わっていなかったと思う。よく「Xリーグは大量点差の試合が多くつまらない」という意見を聞くが、僅差のゲームが観客を呼ぶとは限らない見本となった。


 翌日、米のウェブサイトで、試合後にフィールドを埋め尽くしたオーバーン大ファンの写真を見た。あらためてうらやましいと思った。選手やチームはファンに注目され、見られることで上達し強くなるのだ。ビッグプレーがビッグゲームで飛び出す理由もここにある。そしてもう一つ感じたのがライバルチームの存在だ。関西学生リーグがなぜ盛り上がるのか。もう言う必要もないだろう。


 オーバーン大は、QBキャム・ニュートン(現NFLカロライナ・パンサーズ)の活躍で全米優勝した2010年以降は不振に陥り、昨年は3勝9敗。アラバマ大には49―0で敗れていた。1年で劇的な復活を遂げたことになる。
 今季はこれで11勝1敗となり、次週のSEC優勝決定戦に進出。全米ランクは3位に上昇し、来年1月の全米王座決定戦出場の可能性も出てきた。


 Xリーグが面白くないのは、強いチームと弱いチームに分かれているからではない。弱いチームがいつまでも弱いままだから面白くないのだと思う。オール三菱は5勝3敗、エレコム神戸4勝4敗。私ごときが言わなくとも、来季の目標はなにかはっきり分かっているはずだ。彼らの姿が来年は上位リーグで見られるようなら、リーグの前途は少しは明るくなるだろう。

【写真】力強い突進を見せるエレコム神戸のQBフナキ=撮影:Yosei Kozano、1日、横浜スタジアム