前人未踏の日本選手権「ライスボウル」4連覇を狙うオービック・シーガルズは、17日に大阪・長居陸上競技場でアサヒ飲料チャレンジャーズを44―17で下し、12月1日の社会人準決勝に進出した。久々に王者らしさを見せたオービック快勝の裏には、二つの選手起用があった。


 一つはOLケアラカイ・マイアバを左のGで先発させたことだ。米UCLA時代はCやGだったマイアバは、今季開幕戦から一貫してOLの外側、左のTでプレーしてきた。134キロとは思えないスピードと敏捷性を買われて、QBのブラインドサイドを守る任務を与えられていたのだ。それがなぜGに戻されたか。理由は明白だった。アサヒ飲料の守備ライン中央には、今季オービックから移籍した紀平充則が、スピード派DLの平澤徹と並んで位置していた。


 日本代表の中核として、オービック3連覇の立役者の一人として、長年活躍してきた紀平の突進力と恐ろしさを誰よりも知っているのがオービックの首脳陣だった。「力の紀平」「スピードの平澤」を防ぐためにマイアバをインサイドに入れ、不動のCフランク・フェルナンデスとコンビネーションさせたのだ。


 オービックの策は奏功した。第1クオーター、RB古谷拓也の先制タッチダウン(TD)では、フェルナンデスが紀平を、マイアバが俊敏なプルアウトで平澤をブロックした。マイアバは1対1でも紀平のパワーにまったく負けていなかった。紀平も中央のランは止めて、3タックルと奮闘したが、得意のブルラッシュでQBにプレッシャーをかけるまでには至らなかった。


 大橋誠ヘッドコーチ(HC)は「アサヒ飲料の守備の強みはインサイドだと分かっていた。そこを押し切れないまでも、ある程度コントロールできれば、オフェンスが形になると思っていた」。対戦が決まってから、マイアバをGに起用する隊形をずっと練習しており、マイアバは元々のポジションだけに、順応は早かったという。「むしろ、代わりに外を守った両Tがよく頑張った。エッジラッシュでやられるというシーンがなかった」と、保呂篤志、 渡邊翔を称賛した。


 オービックを快勝に導いたもう一つの選手起用が、QB菅原俊の2か月ぶり先発復帰だった。4日のアサヒビール・シルバースター戦で、龍村学をリリーフして2TDをパスで決め、この日の先発が決まった菅原は「立ち上がりが勝負だと思っていた」。
 その言葉通りに、古谷の先制TDの後、前半で3本のTDパスを決めた。1本目はプレーアクションで44ヤードをWR木下典明に。22ヤードの2本目は、パス守備を完ぺきに読んで、ワイドオープンとなった木下へ。3本目はゴール前7ヤードから、低く速いタイミングのパスをWR池井勇輝に。3種類のパスを自在に投げ分けた。大橋HCも菅原の好調さに、いつ交代させようか少し悩んだという。


 3連覇の原動力・菅原は、今季第3戦のIBMビッグブルー戦から先発の座を龍村に譲っていた。龍村の調子が良かったこともあるが、菅原のパスが精度を欠いていた。理由ははっきりしていた。新しい試合ボールが合わなかったのだ。


 詳述は省くが、今季からライスボウルでの使用球が変更されるという。それに合わせて、Xリーグの今季リーグ戦では、各チームが申請した新しいボールを公認して使っているそうだ。オービックのニューボールは、形状が従来よりも太く、表面の白いラインが剥げないようにワックスがかけられていて滑りやすい。QBとしては小柄な菅原は、手も大きくないため、ニューボールはしっかり握るのが難しかったという。握りにくい場合はボール中央にある縫い目に指をかけて投げればよいのだが、菅原は守備の速いプレッシャーにクイックリリースで対応するために、握り直さず投げることにこだわっていた。


 菅原は「そういうことを理由にできるレベルの選手ではないので」という。しかし、シーズンが深まり、練習を重ねてボールに慣れることで、パスの調子が上がってきたのは事実だった。
 この試合で菅原が心掛けたのは「プレーコールの中で、攻めたボールを投げる」こと。「良いレシーバー、良いRB、良いOLがそろっている。強気で行こうと思った」。その言葉通り、今季ベストのパフォーマンスを見せた。


 1日の準決勝で、オービックは鹿島ディアーズと横浜スタジアムで対戦する。菅原がパスの調子を上げてきたのに対し、鹿島もラン攻撃が復調、満を持しての対決となる。社会人らしいレベルの高い攻防を期待したい。

【写真】第2クオーター、アサヒ飲料のDL紀平をブロックするオービックのOLマイアバ=撮影:Yosei Kozano、11月17日、長居陸上競技場