シーズンが佳境となり、一年で最も面白い試合が続くこの時期。このコーナーも、コラムではなく観戦リポートが続くことになるがご容赦いただきたい。


 Xリーグセカンドステージの「スーパー9」で、パナソニック・インパルス(ウエスト1位)、鹿島ディアーズ(イースト2位)、IBMビッグブルー(セントラル3位)がそろった「死の組」の戦いを2週続けてリポートしてきた。3週目の今回は、パナソニック対鹿島(17日、大阪・長居陸上競技場)を取り上げる。


 横浜スタジアムで同時間に開催された富士通フロンティアーズ(イースト1位)対ノジマ相模原ライズ(セントラル2位)戦の結果次第とはいえ、鹿島の準決勝進出はパナソニックに勝つことが大前提だ。それどころか、敗れれば鹿島ディアーズとしての試合は二度とない。一方、パナソニックは2日のIBM戦で完勝し準決勝も確定していたが、目標は日本一。リーグ戦全勝は至上命題だった。両者の力、技、闘争心がきっ抗し、Xリーグの歴史に残る名勝負となった。

 ▽第1Q、パナソニック守備陣の連続ビッグプレー
 試合は序盤から大きく動いた。開始直後、鹿島の攻撃3プレー目にQB加藤翔平が投げた右のフラットゾーンのパスをパナソニックDB増谷俊紀がインターセプトしゴール1ヤード前までリターン。先制チャンスにRB横田惇があっさりタッチダウン(TD)を決めた。


 次の鹿島のドライブ。加藤が投げた右へのパスを外からラッシュしたパナソニックLBデービッド・モトゥーがジャンプしてはじくと、浮いたボールをDB中村正芳が奪う。75ヤードのインターセプトリターンTDとなって、開始3分足らずで14―0。さらに次の鹿島の攻撃ではパナソニックLB石原洋のハードヒットでQB山城拓也がファンブル、リカバーはパナソニック。看板のディフェンスが次々にビッグプレーを決め、サイドラインは盛り上がった。


 一方的劣勢に見えた鹿島だが、森清之ヘッドコーチ(HC)は冷静だった。
 「選手たちは気持ちが入りすぎでミスが出た。加藤は気負っていてボールが上ずっていた。しかし、中盤や終盤の勝負所でミスが出たら取り返しがつかないが、序盤なら時間は十分ある。パナソニックは早い段階でリードしたために、大事に行こうとなってしまったのではないか。本来ならオフェンスがもっとガンガンくるはずだったので、結果的にはそれがわれわれには幸運だったのかもしれない」


 ▽第2Q、鹿島の反撃
 鹿島は4回目のドライブで初TDを決めると落ち着きを取り戻す。第2クオーターには2本目のTDで3点差に。しかし、パナソニックはQB高田鉄男がTE吉田武蔵にTDパス。さらにディフェンスが、鹿島・加藤から3本目のインターセプトを奪うと、フィールドゴール(FG)に結びつけて27―14とリードした。


 ターンオーバー以外では鹿島の攻撃は機能していた。第2クオーター残り4分余りで始まったドライブでは、モーションを交えたオプション系の多彩なラン攻撃で敵陣に攻め入ると、途中から早いタイミングのパスに切り換えて連続でファーストダウンを更新。最後は長身WR鈴木謙人に17ヤードのTDを決めた。
 ファーストダウンで4人のレシーバーセットから1人をモーションさせてランのピッチフェイク、パナソニック守備の速い反応を逆手に取った。鹿島にとっては、前半残り34秒で6点差としただけでなく、ラン、パスともに手応えのある10プレー、72ヤードのドライブとなった。


 ▽第3Q、値千金のQBサック
 後半開始のキックオフで、パナソニックはリターナー辻篤志が65ヤードのビッグリターン。このチャンスにランでたたみかけ、ベテランRB小林孝敏がエンドゾーンへ持ち込んで再び13点差に。しかし、鹿島は加藤がパスで攻め込むと、自らがエンドゾーンに飛び込んで再び6点差とした。


 追っても追っても差を詰められない鹿島に欲しいのは守備のビッグプレー。それが第3クオーター9分過ぎに飛び出した。鹿島DB桑澤勇士がブラインドサイドからブリッツし、QB高田を背後からサック。182センチ90キロとLB並の桑澤のヒットに高田はたまらずにファンブル、DL重近弘幸がリカバーして攻撃権を奪った。
 鹿島はWR前田直輝がQBに入る「ワイルドキャットフォーメーション」から、主将のRB丸田泰裕が21ヤードのロングゲイン。さらにWR中川靖士へのパスでゴール前に迫ると、丸田がOL倉持和博のブロックを生かしてTD。第3クオーター11分、鹿島がついに逆転した。


 ▽第4Q、パナソニック執念の反撃
 パナソニックはK佐伯栄太の50ヤードのFGで、いったんは逆転するが、鹿島のラン攻撃が止まらない。エンドゾーン前まで攻め込むと丸田の中央ダイブを意識させて、加藤がゴール右を駆け抜けた。再び逆転。次のドライブでも鹿島はランを中心に攻め込むと、丸田が2本目のTD。10点差をつけた。


 パナソニックも執念を見せる。残り1分48秒から高田がノーハドル攻撃で立て続けにパスを決め、TD。2ポイントコンバージョンも決めて2点差に。しかし残り26秒、パナソニックのオンサイドキックを鹿島のWR岩井悠二朗がおさえ、まれに見る激闘に終止符が打たれた。最終スコアは47―45だった。
 試合後、電光掲示板に横浜スタジアムの途中経過が映し出された。第4クオーターで富士通がノジマ相模原を大量リードしていることが伝えられると、鹿島応援席からは大歓声が上がった。


 ▽QB加藤の立ち直り、支えた攻撃ライン
 鹿島はこの試合で1回もパントを蹴らなかった。第2クオーター終盤からは5回連続で攻撃がTDを決めた。QB加藤はパス31試投で27回成功。3インターセプトを除けば96%という驚異的なパス成功率でファーストダウンを16回も更新、パスとランで4TDを決めた。


 数字以上に評価したいのは、自らのミスが原因で前半に17点も奪われながら、萎縮することなくプレーを決め続け、試合の中で立ち直った点だ。関学大時代から期待されてきた大器が、成長の証を見せた試合となった。
 加藤が立ち直れたのは主将・丸田を中心としたパワフルなラン攻撃があったからだ。ゴリゴリと39回219ヤードを進み、主導権を奪い返した。


 「お家芸」を支えたのが社会人屈指の大型攻撃ライン。「第2クオーターの途中ぐらいから、オフェンスをやるごとに、うちの攻撃ラインが押すようになって、パナソニックの守備ラインやLBの足が止まるようになってきた」という森HCの言葉通り、C笠井公平、左右のG荒井航平と倉持和博の「130キロトリオ」を中心にしたインサイドブロックが、パナソニック守備陣を切り崩し、消耗させた。最大の武器が、土壇場の試合で真価を発揮。培ってきたチーム力を強く感じた。


 抽選の結果、12月1日の準決勝は、鹿島が日本選手権3連覇の王者オービック・シーガルズ(セントラル1位)=横浜スタジアム=と、パナソニックは富士通(大阪・キンチョウスタジアム)と対戦することが決まった。
 鹿島のシーズンは過去3年連続でオービックに敗れて終わっている。横浜スタジアムの戦いは、鹿島が3年分のリベンジを果たすか、王者オービックが返り討ちにするか。いずれにしても激戦は必至となるだろう。

【写真】3Q、鹿島のDB桑澤のサックでファンブルするパナソニックのQB高田=撮影:Yosei Kozano、17日、長居陸上競技場