サッカーのワールドカップなどで、1次リーグの組み合わせで強豪国が同じ組にそろってつぶし合いをするグループを「死の組」と表現することがある。
 Xリーグでも11月2日からセカンドステージの戦いが始まった上位リーグ「スーパー9」の中では、ファーストステージでウエスト1位のパナソニック・インパルス、イースト2位の鹿島ディアーズ、セントラル3位のIBMビッグブルーがいる枠が最もタフで面白い組み合わせとなった。Xリーグ版「死の組」はどのような戦いになるのか。2日のパナソニック対IBM(東京・アミノバイタルフィールド)に注目した。


 IBMはファーストステージ3勝2敗ながら、敗れた2試合はオービック・シーガルズ戦の41―42、ノジマ相模原ライズ戦の21―24と、いずれも大接戦。QBケビン・クラフト率いるパス攻撃は今シーズンも絶好調だ。
 セカンドステージで連勝すれば、準決勝進出の可能性が残る上、パナソニックには1年前、同じ場所で敗れており、リベンジを狙っていた。西の強豪パナソニックも、危ういかと思われた。しかし、試合は予想外の展開となった。


 パナソニックはIBMの最初の攻撃をパントに追い込むと、自陣からの攻撃でQB高田鉄男がパスを立て続けに決める。74ヤードをわずか4プレーで進み先制タッチダウン(TD)を奪った。さらに巧みなキッキングでIBMを自陣ゴール前に張り付かせパントに追い込むと、スペシャルチームに入っていたLBデービッド・モトゥーがリターンTD。第1クオーターで早くも2TD差をつけた。
 後半に入るとパナソニックの攻撃は止まらなくなる。4TD、1フィールドゴール(FG)と攻撃の度に得点し、最後の攻撃をニーダウンで終えるまで一度もパントを蹴らなかった。守備では、LB東健太郎、DL武田航らがクラフトにプレッシャーをかけ続け、ファンブルロストを誘発するなど、自慢のパス攻撃を機能させず。さらにキックオフリターンで末吉智一を4回で8ヤードに封じるなど、キッキングも制した。


 最終スコアは55-24。「死の組」初戦はパナソニックの完勝で終わった。
 大勝の原動力は高田だ。IBM守備陣の速いパスラッシュに動じることなくショートからミドルのパスを決め続け、パス成績は288ヤード2TDと、クラフトを上回った。守備のプレッシャー対策として味方の守備チーム相手に練習を続けたのが奏功したという。「前の試合(接戦となったアサヒ飲料チャレンジャーズ戦)で、デイフェンスに迷惑をかけたのでお返しできた」と笑顔を見せた。


 立命館大時代も含め日本選手権(ライスボウル)で3回優勝、日本代表のエースとしても活躍した高田は9月で32歳となった。昨シーズンは負傷でほとんど試合に出られず、チームもセカンドステージでシーズンを終えた。今季は負傷も癒え、体調はいいという。「東京ドームで試合をしたい。関西のチームは滅多にできないから」と、軽い口調で締めくくった。


 強豪パナソニックは、着実に世代交代が進んでいる。高田とホットラインを形成したWR長谷川昌泳、DL山中正喜、RB石野仁大ら主軸がここ数年でチームを去り、44歳の「鉄人DL」脇坂康生も今回の東京遠征からは外れた。代わるように台頭してきたのがルーキーのモトゥーやWR小山泰史、RB横田惇、QB永吉悠馬らだ。
 この試合でも、小山は先制の34ヤードTDパスをキャッチ。モトゥーは本業の守備でOLを切り裂いてロスタックルを決めただけでなく、WRと比べてもタイム的に変わらないという俊足で、リターンTD。永吉は高田と交代で入ったユニットでスピーディーなオプションからのラン攻撃でIBM守備陣を翻弄。横田は力強いランで2TDを記録した。


 中堅選手では5年目26歳のTE吉田武蔵の活躍が目立つ。高田のメーンターゲットとしてTDこそなかったものの、いずれもチームトップとなる9回128ヤードのレシーブを記録。先制TDのドライブでは29ヤードのポストパターンパスを捕球するなど、20ヤード以上のパスを4回捕球してパナソニックの高得点ゲームを支えた。長谷川とは違い、決して快足レシーバーではない吉田の「鉄男さんのボールがとてもいいところに来ていたから」という言葉が、高田の円熟味を裏付ける。


 2000年代に入ってから「ジャパンXボウル」を3回、ライスボウルを2回制覇した「西の王者」だが、東京ドームのゲームは2010年のジャパンX(対オービック戦、敗退)が最後だ。関東のチームとは違い、Xリーグウエストのチームが東京ドームで試合できるのは、ジャパンXボウルとライスボウルだけ。何気なく言ったように聞こえた言葉にベテランQBの覇権奪回への思いが込められていた。

【写真】昨季のけがから復活し、チームをけん引するパナソニックのQB高田鉄男=撮影:Yosei Kozano,2日、アミノバイタルフィールド