Xリーグは11月からセカンドステージの戦いが始まる。日本社会人選手権「ジャパンXボウル」、そして日本選手権「ライスボウル」を目指す上位リーグ・スーパー9は、ここからの2試合は生き残り戦で、負ければ11月でシーズンが終了となるチームもある。そんな中、選手やコーチ、スタッフたちに劣らない熱い思いを持って試合の日に臨む女性たちがいる。今シーズン限りで会社側の支援が打ち切られる「鹿島ディアーズ」のチアリーダー(KDC)にスポットを当てたい。


 今季のKDCメンバーは10人で、キャプテンを務めるのは亀山舞子さん。ディアーズが結成される前年1988年に東京で生まれ「舞うように活発におおらかに」と両親が願ってつけた名前の通りに育った。
 5歳からクラシックバレーを10年、高校からはチアダンスに転じ、玉川大学の体育会チアダンス部で活動した。鹿島に入社後も勤務の傍らチアを続けて今年で4年目となる。昨年末、ジャパンXボウルでディアーズがオービック・シーガルズに敗退した後に、KDC11代目キャプテンとなったときは、チームを待ち受ける運命はまったく考えてもいなかった。
 4月、ディアーズの選手と一緒に、鹿島本社のフットボールからの撤退を伝達されたときは「本当に頭の中が真っ白になりました」。しかし、すぐに最後のシーズン、どうしたらチームが日本一になれるよう支えられるかと考えを切り替えた。


 亀山さんは、最後のシーズンだからといって特別な意識はないという。「打ち切りのお話があった後にみんなで集まって、いつもとやることは一緒だね、と話し合いました」。ディアーズのファン、鹿島社員、これまで作り上げてくれた先輩に、KDCをどう見せるか。そして自分たちが試合を盛り上げ、雰囲気を作り上げて、優勝の後押しをすることができれば本望だと話す。


 ここ数年、KDCにはコーチがいない。週3回の練習では、メンバーが先輩後輩の隔てなく率直にお互いに意見をぶつけ合って、ハーフタイムショーの演目やサイドラインのダンスを作り上げている。
 今年のチームは、若いメンバーが多いので大人の雰囲気を出すのが少し難しいという。「フレッシュさを出しつつ、Xリーグを代表するチアチームとして、成熟したダンサブルな踊りとハーフタイムショーを見せていきたい」
 ディアーズがここから5試合を勝ち抜いて日本一になると信じているが、ジャパンXボウル、ライスボウルでは単独チームのハーフタイムショーはない。KDCとしてのショーは多くても残り3試合。少しでも多くのファンに見に来てもらい、試合を盛り上げたいと亀山さんは願っている。


 鹿島のチアリーダーはディアーズ創設の翌年1990年に誕生した。当初は社員有志で編成されていたが、2000年代に入ってからは、オーディションを実施し社外メンバーも受け入れるようになった。
 同じ時期、NFLチアリーダーの最高峰、ダラス・カウボーイズ・チアリーダー(DCC)を目標として、「KDC」の呼称を使うようになった。ブーツにショートパンツというスタイリッシュな衣装も「アメリカズチーム」カウボーイズを意識して取り入れた。


 Xリーグチアのトップを目指し、研究のためNFLのオールスター戦「プロボウル」を現地観戦したり、NFL各チームのチアリーダー選考を受験するメンバーもいる。24年間の在籍者数はスタッフも含め152人。OGの1人、海東奈月さんは、プロバスケットボールNBAダラス・マーベリックスのダンスチームに合格して、マーベリックスの全米優勝シーズンに活動した。
 bjリーグ、NBL、日本チアダンス協会などでチアリーダー育成や、チアチームディレクションに携わっているOGも多いという。「ディアーズが日本一を目指すなら、チアリーダーも日本一に」「チアリーダーである前に、一人前の社会人であること」が創設時からのモットーだ。


 私が個人的に好きなピッツバーグ・スティーラーズにはチアリーダーはいない。それもあって、スーパーボウルで3度対戦したライバルのカウボーイズチアが、最も格好いいと思ってきた。
 Xリーグを頻繁に撮影するようなったのは2000年代に入ってからだが、鹿島のチアが「アメリカズチーム」のチアに憧れ、目標としているのはすぐに分かった。
 移動中でも常に背筋の伸びた姿勢できびきびと歩き、ダンスはシンクロ性が高く、キックラインでは全員の脚が高くキレイに揃う。試合中は、ほぼ動きっぱなし。ハーフタイムショーでは、すぐ後ろのOGスタッフから容赦のない叱咤が飛ぶ。鍛えられ、凜とした美しさがある。


 10月末、ディアーズの引き受け手が決まったという報道もあったが、公式の発表はなく、現状は定かではない。ディアーズの選手もKDCのチアも、今はそんな情報に一喜一憂することなく、目の前の試合に集中しているはずだ。
 日本屈指のフットボールチーム、ディアーズが新チームに移行できるなら素晴らしいことだが、願わくば彼女たちも一緒に新チームに移り、新たな歴史を作り上げられるように取りはからってもらえれば、と思う。


 最後に、メンバーの皆さんから一言ずつ。


 満田彩さん(8年目)「意味があってここにいる10人で、KDCプライドを持って精いっぱいやり切りたい」
 川村祐依さん(7年目)「今季は日本一で終わるしかない。最後までディアーズを信じて応援していきたい」
 松原紋奈さん(4年目)「残り試合、もう絶対に負けたくない。最後のシーズンにいい歴史を残せるようにがんばります」
 生田安紀さん(4年目)「今まで皆さんが作り上げてきた歴史の中に、自分が所属していることを誇りに思います」
 古屋桜さん(4年目)「日本一を目指すのはいつもと変わらない目標。選手が思いきりプレーできるように、お客さんが楽しめるように応援したい」
 簗瀬美紗子さん(3年目)「ディアーズらしさを貫いて、自分自身もチームも悔いが残らないシーズンにしたい」
 伊藤奈美さん(ルーキー)「中学生の頃からディアーズの大ファンでした。チアとしてもファンとしても気持ちの入ったシーズンにしたい」
 土井詩栞さん(ルーキー)「10人の中で、私は黄色のビタミン剤だと思っています。ディアーズのビタミン剤になれるように頑張りたい」
 角田恵さん(ルーキー)「ディアーズの魅力をたくさんのお客さんに感じてほしい。記憶に残るチームとなるよう力を尽くしたい」

【写真】動きのシンクロ性が持ち味の一つである鹿島ディアーズチアリーダーズ=撮影:Yosei Kozano