Xリーグは10月21日にファーストステージの日程を終えた。全勝対決となったセントラルのオービック・シーガルズ対ノジマ相模原ライズ(20日、横浜スタジアム)、イーストの富士通フロンティアーズ対鹿島ディアーズ(21日、等々力競技場)を中心に、第5節の戦いを振り返りたい。


 ▽自陣1ヤードからの攻撃
 オービック対ノジマ相模原、富士通対鹿島では「自陣1ヤードからのドライブ」が勝敗を左右した。
 一日中雨が降り続いた20日の横浜スタジアム。ノジマ相模原に先制されながら、第3クオーターに逆転し6点をリードしていたオービックは、前半にリターナーのファンブルロストが窮地を招いたこともあり、第4クオーター、ノジマ相模原のパントボールをキャッチしなかった。それが自陣エンドゾーン近くまで転がり、残り10分26秒で自陣ゴール前1ヤードからの攻撃となった。
 しかし、オービックはRB古谷拓也、山﨑公士の連続ランであっさりファーストダウン、窮地を脱すると、その後も攻撃を重ねた。結局オービックはこのドライブを8プレーで43ヤード前進、4分15秒を消費した後、中央付近でパントを蹴った。


 このボールもゴール前まで転がり、今度はノジマ相模原が残り6分11秒で自陣1ヤードからのドライブ。2プレーで4ヤード進んだノジマ相模原は第3ダウン6ヤードでRB東松瑛介が右へ走り、オービックDB滝澤輝久がタックル。東松は必死に手を伸ばしたが数インチ届かず、ノジマは結局自陣10ヤードからパントを余儀なくされた。
 オービックの攻撃は中央付近からとなり、4回の攻撃で25ヤード前進、FGを決めた。残り2分35秒で9点差、オービックが勝利を大きく引き寄せた。


 21日の等々力競技場。第1クオーター最初のドライブでタッチダウン(TD)を決めた富士通の2度目の攻撃は相手陣39ヤードからのパント。自陣1ヤードからの攻撃となった鹿島は、ファーストダウンで左オフタックルのランプレーを選択し、最も信頼できるRB丸田泰裕に窮地脱出を託した。
 しかし、素早い反応を示した富士通のDLアンドリュー・セウマロ、LB芹澤隆文、青木悠二らが走路をふさぎ、鹿島のOL倉持和博ごと丸田を押し込んでボールデッドに。そこはエンドゾーン内で鹿島にとっては屈辱のセーフティーとなった。
 試合を通じて鹿島のお家芸であるラン攻撃を21ヤードに抑え、ランではファーストダウンを一度も更新させなかった富士通守備陣の強さを象徴するプレーとなった。


 ▽「ジジイ」の活躍
 中村多聞さんのコラムによれば、30歳以上のベテラン選手は「ジジイ」なのだそうだ。しかし、20日の横浜スタジアムはジジイたちが活躍した。オービックの37歳、RB古谷拓也はチーム最多の11キャリーで58ヤード。何度もファーストダウンを奪い、雨のためラン主体となったオービックの攻撃をリードした。ノジマ相模原の43歳、OL鴨志田正樹も交替でセンターとして出場し、オービックと互角のラン攻撃を支えた。アサヒビール・シルバースター対東京ガスクリエイターズ(20日、横浜スタジアム)では東京ガスの47歳、QB田昌光が、前後半ともに激しい雨の中でパス攻撃を展開してツーミニッツオフェンスを進め、32ヤードと36ヤードのフィールドゴール(FG)トライをセットアップした。いずれも失敗したため東京ガスは2点差でシルバースターに敗れたが、役割は十分に果たした。


 ▽米国人選手の底力
 全勝対決2試合は、勝ったオービックと富士通の米国人選手が本場の力を見せた戦いでもあった。オービックはDLバイロン・ビーティー・ジュニアがチーム1位の6タックル、第2クオーターには、TEをマンツーマンでカバーし、決まればTDとなるパスをはたき落とす活躍を見せた。DLケビン・ジャクソンは、ノジマ相模原の最後の攻撃で、QB木下雅斗を連続でサック、勝利を決定づけた。
 富士通は前述のようにセウマロがラン守備に貢献。RBジーノ・ゴードンは先制TDを決めただけでなく、ワイルドキャット隊形でQBにも入り、鹿島守備陣を幻惑した。
 圧巻はDBアルリワン・アディヤミ。第4クオーター残り3分、鹿島のQB加藤翔平がエンドゾーン内のエースWR前田直輝に投げたパスを、忍者のような動きで奪い取った。決まればTDだっただけに値千金のインターセプトだった。米国人選手なしに勝ち抜くことは今後難しくなる。そう実感した2試合となった。


 ▽ミスを意識しすぎない
 富士通は鹿島を苦手としていた。春シーズンも含め5年間で2勝5敗。秋の公式戦では2009年10月のリーグ戦以来勝っていない。内容的には、前半で優位に立ちながら反則やターンオーバーなどのミスからペースを失い、後半に失点して敗れる試合が続いていた。選手の試合後のコメントも「自滅」「自分たちの弱さ」といった表現が目立った。
 この試合も、前半は圧倒的な富士通ペースだった。タイムオブポゼッションは、ほぼ18分対6分、獲得ヤードにいたっては235対13。
 しかし後半、鹿島守備に対応され攻撃が進まなくなる。第3クオーターにTDを許した後のドライブでは66ヤードを前進しながら20ヤードのFGを失敗する。FGを決められなかったのはこの日2本目。フィールドに漂い始めた嫌な雰囲気を破ったのが、第4クオーターの2本のインターセプトだった。


 富士通の藤田智ヘッドコーチ(HC)は「確かにミスはあったが、今までの戦いでも、後で見ると相手の鹿島も同じようにミスをしている。自分たちがミスをしたことを意識しすぎて、これまではやられていた」と考えていた。だから「自分たちが心の中に作っていた壁をブレークできたという意味で、今日の勝利は大きい」という。
 2009年も、リーグ戦で鹿島に勝ちながら社会人決勝のジャパンXボウルで敗れている。藤田HCは「もしこの先でもう一度戦えるなら、今年はその分もお返ししたい」と最後まで表情を崩すことはなかった。

【写真】【自陣1ヤードから 鹿島】1Q富士通守備陣が鹿島からセーフティーを奪う=撮影:Yosei Kozano、21日、等々力陸上競技場