シーズンも佳境に入ってきました。勝者と敗者が残酷なほどに分かれる季節。そんな季節に最高の笑顔でシーズンを終えたチームがありました。


 11月10日、川崎球場で行われた鹿島ディアーズとの試合に勝利したIBMビッグブルーです。
 今シーズンはファーストステージで王者オービック・シーガルズに敗れたものの、その差はわずか1点。ノジマ相模原ライズにも接戦の末敗れはしましたが、この2試合でIBMの選手たちは負けた悔しさだけでなく「自分たちはできる!」という大きな手応えを感じたことと思います。


 そんな上り調子のなかで迎えたセカンドステージ初戦のパナソニック・インパルス戦は24―55の完敗でした。次の鹿島戦の結果を待たずにファイナルステージ進出の道は絶たれました。イケイケムードから一転。結果よりもその内容に、落胆は大きかったと思います。


 そして鹿島戦。
 自力で次のステージ進出を決めるために、さらには鹿島ディアーズとしては最後のシーズンという思いも重なり、緊張感や集中力が続いていると想像できる鹿島と、一度緊張の糸が切れてしまったであろうIBMの、この試合に対するモチベーションの違いが試合にどう出るのか、非常に心配でした。ですが、その心配は杞憂に終わりました。


 試合前のIBMの選手たちは「この一年間やろうとしてきたことを最後までやりきろう。フットボールを楽しもう。そして“鹿島ディアーズ”というチームに勝つ最後のチャンス、なんとしてでも勝とう」と誓い合い、とてもいい表情をしていました。
 結果は56対35。正直想像もしなかった大差での勝利。IBMサイドはまるで優勝したかのような騒ぎでした。
 最後のハドル。山田晋三ヘッドコーチ(HC)の「勝ったらうれしいなあ!」という言葉に選手たちは「うれしい! うれしい!」―。まるで子どものようなやりとりでした。


 満面の笑みでHCを見つめる選手たち。でも次のステージにはいけない。それが現実です。
 山田HCは続けます。
 「日本一目指してやってきたのに、ほんまに申し訳ない。日本一になるのは難しいな…。でも、ほんまにちょっとしたことなんや。覚えておいてほしい。日本一になるために大事なのは積み重ねや。この一年を経験したやつ。うれしいこと悔しいことを経験したやつが次に伝えていかなあかん。それがチームの伝統を作るんや。だから勝負はもう今から始まっているんやぞ」。選手たちの顔が引き締まりました。


 最後に。「まずきょうは楽しんで喜んで、そしてまた頑張ろう! ありがとう。おめでとう。ナイスゲーム!」
 仕事に家庭にフットボール。フットボールが全てではない社会人フットボーラーが、自分を信じ、周りを信じ、勝利への執念を持ち続けることは並大抵のことではないと思います。


 大半が苦しいこと。もどかしいこと。そんななかで勝利への執念を持ち続けることができるのは、この日のような出来事があるからでしょう。このほんの一瞬の思いがこれからまた1年、自分を、チームを支えていくのだと思います。


 クラブハウスへと引き揚げていく道すがら「もっと試合やりたかったなぁ」と話す選手たちの表情はとてもすがすがしく、素敵でした。
 来年は「シーズンの勝者」になれるといいですね。

【写真】キックオフでリターンするIBMのWR栗原=撮影:Yosei Kozano、11月10日、川崎球場