アメリカンフットボール中継のリポーターとしてのデビュー戦だった2006年のパールボウル決勝は、今でも思い出すと心が痛むような、苦い苦いものでした。


 中継リポーターは、試合中、フィールドの端に設けられ場所で、放送の映像をモニターで見つつ、マイクを持ち、放送席の実況アナウンサーと解説の方の話に割り込んでリポートを入れます。内容もタイミングも、誰からの指示もありません。自分でタイミングを計りマイクのカフを上げリポートを入れるのです。そして、できれば次のプレーが始まるまでにリポートを終わらせるのが理想です。


 これが、非常に難しいのです。さぁしゃべろうと息を吸うと次のプレーが始まります。「あー、駄目だった。よし、次!」。ファウルマーカーが投げ込まれました。放送席では反則についての話をしています。「うーん、このタイミングじゃないか。めげるな、次こそ!」と思っているうちにフォースダウン、パント。攻撃権が替わってしまいました…。


 事前取材はたくさんしました。ネタはたくさんあります。でも、入れられないのです。焦りばかりがこみ上げてきた私にはもう、実況アナウンサーと解説者の話が頭に入ってきません。試合がどう動いているのかさえも、さっぱりわからないのです。当然どうにかこうにか入れたリポートはどこかチグハグ。しかも伝えたいことをその場で短くまとめることができず、発した言葉はいわゆる「カミカミ」。正直もう逃げ出したかった。早く終わってほしかった。それはそれは長い3時間でした。


 情けなかった。何よりもわたしの取材に丁寧に答えてくださったコーチ、選手たちの話をこれっぽっちしか、いやこれっぽっちも伝えられなかった申し訳なさでいっぱいでした。早いものであれからもう7年が経ちました。


 いままでいったい何試合のリポートをしたことでしょう。あのときと比べたらずっとずっと余裕がもてるようになりました。でも、中継開始前にマイクを握ると、いつでもあのときの苦い記憶が蘇るのです。「気を抜くなよ。初心忘れるなよ」。いつも自分にそう言い聞かせて、中継に臨んでいます。ちょっぴり緊張しながら…。

【写真】2006年から国内アメリカンフットボールのリポーターを務める小西綾子さん