ダラス・カウボーイズのオーナーであるジェリー・ジョーンズ氏が、NFLとの対立を深めている。
 ロジャー・グッデルNFLコミッショナーの〝続投〟に突如反対の意を表明し、任期延長が認められれば訴訟も辞さないとの姿勢を打ち出したのだ。これは今春、ジョーンズ氏自身を含む全32チームの賛意で決定した延長手続きを否定するものだ。


 グッデル氏の契約交渉は、オーナーの中らか選出された報酬委員会が行うことになっており、オーナーはその決定に従うことになっている。報酬委員会にはジョーンズ氏も名を連ねていた。
 オーナーの総意に反旗を翻した形のジョーンズ氏は、報酬委員会から除名され、NFLの利益に反する行為があったとして警告の通達を受けた。


 オーナー間で大きく意見の分かれることの少ないNFLでは異例の事態で、水面下で渦巻いていた確執が一気に表面化した形だ。


 ジョーンズ氏とグッデル氏は、カウボーイズのRBエゼキエル・エリオットの出場停止処分をめぐって激しく対立した。
 元交際相手に暴力をふるっていたことが発覚したエリオットに対し、グッデル氏は今季開幕からの6試合の出場停止処分を決定した。これに対しエリオットはNFL選手会の助けを得て異議を申し立て、一時は処分が執行停止となっていた。


 しかし、最近になってニューヨークの高等裁判所がエリオット側の要求を棄却する決定を下し、第10週から処分が執行された。
 ジョーンズ氏は「反グッデル」の姿勢は、エリオットの件は関係ないと主張する。むしろ、選手やコーチたちが行った試合前の国歌斉唱での抗議活動が巻き起こした騒動や、それに対するグッデル氏の対応に問題があるとして、自らの正当性を示す構えだ。


 エリオットが無関係というのもにわかには信じがたいが、抗議活動に関わる一連の騒動が理由だとすれば、その背後にちらつくのはドナルド・トランプ大統領の影だ。


 昨年、当時49ersのQBだったコリン・キャパニックが、人種問題を啓発するために始めた抗議行動は今季も続いた。
 それに対し、トランプ大統領が「国家と国旗に対する不敬行為であり、この国の統一のシンボルを貶めるものである」と糾弾した。


 この発言にNFL全体が敏感に反応した。それまで人種問題を理由とする抗議活動に参加していなかった白人選手やコーチまでもが一体となって、反トランプの行動を起こしたのだ。
 全員が腕を組んだり、片膝をついたり、または国歌斉唱のセレモニーが終わるまでフィールドに出るのを控えたりとチームによって対応はまちまちだったが、人種問題の啓発行為を国家への侮辱と断じられてことによる反発はリーグ全体に広がる大きなものだった。


 この反発行為をいち早く辞めたのはカウボーイズだった。第3週のカージナルス戦こそ国歌斉唱の前に選手、コーチ全員が一瞬だけ片膝をつく行為を見せたが、翌週からは全員が起立して国歌斉唱のセレモニーを迎えた。
 トランプ大統領はこれを絶賛した。ジョーンズ氏は親トランプとされるが、両者の関係がより近くなったことは想像に難くない。


 大統領の後ろ盾を得たジョーンズ氏が、自分のチームのエースRBに厳罰で臨んだコミッショナーを排除しようという動きに出たとみるのはうがちすぎだろうか。


 ジョーンズ氏は1989年に、チームのオーナー兼GMに就任した。彼が最初に行った仕事は名将の誉れ高く、チーム内外から絶大な尊敬を集めていたトム・ランドリーHCの解任である。
 そして、アーカンソー大学時代のチームメートで、マイアミ大学のHCだったジミー・ジョンソン氏を新たな指揮官に迎えた。


 ジョンソン氏は1992、93年にスーパーボウル連覇を果たすなどカウボーイズをエリートチームに育て上げたが、その間にチーム作りの方針の違いからジョーンズ氏との確執も生まれた。
 するとジョーンズ氏はあっさりとジョンソン氏を解雇して、やはりアーカンソー大出身のバリー・スィッツアー氏をHCに登用したのである。


 ジョーンズ氏ほどの権限を持っていれば、チーム内で意にそぐわない人物を排除することは簡単だ。
 ただし、それをNFLコミッショナーの人事にまで持ち込むのは行きすぎだろう。NFLの最高決議機関はコミッショナーではなくオーナー会議だ。ジョーンズ氏はその一人に過ぎないのだから。

【写真】ロジャー・グッデルNFLコミッショナー(左)とカウボーイズのジェリー・ジョーンズ・オーナー(AP=共同)