オハイオ州クリーブランドといえばプロフットボール発祥の地とされ、地元ファンは熱狂的でブラウンズに惜しみない愛を注ぐ。そのブラウンズが迷走している。


 ブラウンズは開幕週から先発を務めてきた新人QBデショーン・カイザーに代えて、第6週のテキサンズ戦では2年目のケビン・ホーガンをスターター起用すると発表した。
 ドラフト2巡指名のカイザーはパスの成功率が5割を超えた試合が1回しかなく、3TDパスに対して被インターセプトは9にも及ぶ。TDパスのなかった試合も三つあり、これではチームの開幕5連敗も仕方ない。


 業を煮やしたヒュー・ジャクソンHCはついにQB交代を決断した。
 カイザーのこの苦境は容易に想像できたはずだ。いや、むしろジャクソンは新人を開幕から先発起用することに否定的だった。
 カイザーは育成を優先し、実戦投入は急がないという方針を打ち出した。それを覆してまで断行した結果がこれだ。


 2年目のジャクソンHCはQB起用について方向性が定まらない。就任直後の昨年はレッドスキンズで先発の座を失ったロバート・グリフィンⅢ世を獲得して、直後に先発指名した。フィールド上でのプレーを一つも見ていないにかかわらず、である。


 そのグリフィンは開幕戦で肩を骨折して長期の戦列離脱を余儀なくされる。そのあとを継いだのが3巡指名の新人だったコディ・ケスラーだ。
 しかし、そのケスラーも故障してジョシュ・マカウンが登場。最後の4試合は復帰したグリフィンが務めた。


 オフにはグリフィンとマカウンをリリースして、テキサンズからブロック・オスワイラーをトレードで獲得した。
 この時点では先発経験豊富なオスワイラーをスターターとし、残ったケスラーを第2QBとするプランがあったはずだ。しかし、ドラフトではカイザーを指名した。こうして新旧のドラフト2巡の3人が先発を争うことになった。


 キャンプやプレシーズンではケスラーの好調が伝えられたが、開幕先発に指名されたのはカイザーだった。
 実戦の中で育成しようとする、方針転換である。オスワイラーは結局公式戦で1プレーも披露することなく解雇された。オスワイラーに代わって登録されたのがホーガンだった。


 オスワイラーは在籍しなくなったが、退団した選手に払い続ける契約金、いわゆる「デッドマネー」は残る。
 テキサンズからトレードで獲得した際にその契約内容(4年、総額7200万ドル)を引き継いでいるからだ。

 チーム事情による解雇なので、テキサンズとオスワイラーの間で結んだ契約のうち契約金と保証年俸はブラウンズに支払い義務がある。
 その金額は1500万ドルにも及ぶ。ここにも無計画なQB起用のツケが回ってきている。


 クリーブランドは1995年のシーズン後に、一度はプロフットボールチームを失った。当時のアート・モデル・オーナーがメリーランド州ボルティモアに本拠地を移したからだ。
 しかし、チームの所有権を主張するクリーブランド市民が訴訟に勝ち、ブラウンズはその歴史とともにクリーブランド市に帰属することになった。


 ボルティモアに移転したチームは名称を変更せざるを得ず、新チームとして誕生した。それが現在のレーベンズだ。
 一方のクリーブランドでは1999年にリーグ31番目のエキスパンションチームとして現ブラウンズが誕生した。


 現ブラウンズは長い低迷が続き、プレーオフも2002年シーズンに出場したのみだ。その大きな原因はフランチャイズQB不在にある。
 今週末に登場するホーガンは1999年以降ブラウンズで先発出場した第28代目のQBとなる。同期間では最も多い数字で、それだけ司令塔と呼ばれる重要なポジションに人材が見つからない苦境がわかる。


 現地メディアは、間もなく29人目が誕生するだろうと酷評するが、この迷走ぶりではそう言われても仕方ない。
 ジャクソンHCの下でブラウンズは1勝20敗だ。これでは、訴訟を起こしてまでチームを街に残したクリーブランド市民が浮かばれない。

【写真】10月8日のジェッツ戦でパスを投げるブラウンズのQBケビン・ホーガン(AP=共同)