NFLは全32チームがトレーニングキャンプに突入し、9月7~11日のキックオフウイークエンドを目指して準備が急ピッチで進んでいる。
 新たな戦術やプレースタイルを本格的に導入し、先発メンバーを決定する重要なキャンプだが、具体的にはどのように行われているのだろうか。


 どのチームも7月下旬から約3週間の日程でキャンプを行うが、開始日はチームによってまちまちだ。
 今年最も早くキャンプインしたのがカージナルスで7月21日から始まった。逆に遅かったのがコルツ、チャージャーズ、ライオンズの7月29日だ。同じキャンプでも開始日が8日も違う。


 上記のキャンプインは2年目以降の選手、すなわちNFLでいう「ベテラン選手」の開始日だが、チームによってはそれよりも早く新人選手のみのキャンプを開始する。
 ベテラン選手に交じると新人選手は練習機会がほとんど与えられないので、特別枠を設けるのだ。
カージナルスやベアーズ、セインツなどは1週間も前倒ししてルーキーキャンプを始める。


 その一方でスティーラーズやビルズのように、新人とベテラン選手のキャンプインの日が同じチームもある。


 一般的に前年シーズンにプレーオフに出場したチームはキャンプインを遅くする傾向がある。
 レギュラーシーズンが終了してからさらに1~5週長くプレーするため、選手の疲弊を防ぐのが目的だ。


 キャンプ地にもチームの個性が表れる。最近ではペイトリオッツ、ベンガルズ、ライオンズのように普段から利用しているホームスタジアムやチーム所有の練習施設で行うチームも増えてきたが、かつては地元の大学施設を利用するケースが多かった。
 今でもスティーラーズやバイキングズなどはその伝統を守っている。


 この時期、ほとんどのアメリカの大学は夏季休暇中で学生はほとんどいない。その間を利用してキャンプを行うのだ。
 これには地域活性化の目的がある。NFL選手を間近に見ようとファンが集まるから、ちょっとした観光事業である。


 興味深いのはキャンプ期間中に選手も大学内で寮生活を行うことだ。億単位の年俸をもらっている選手ですら、二人部屋の狭い部屋での生活を強いられるのだ。
 学生生活に戻ったようだと面白がる選手もいるが、実際には不自由さに不満を漏らす選手も少なくない。


 キャンプでの練習はファンに公開されるが、最近ではチケット制にして有料にするチームがほとんどだ。
 その場合は客席のない大学施設よりも本拠地のスタジアムの方が使い勝手がいい。チーム所有の施設を使うチームが増えてきた理由である。
 選手も自宅から通えるため家族と離れる必要もなく、リラックスできる環境で疲労もたまりにくい。


 キャンプでの練習はフルパッドによるフルコンタクトが導入される。NFLでは開幕前にこうした「ガチンコ」の練習が許されているのはこのトレーニングキャンプだけだ。
 春のOTA(チーム合同練習)やミニキャンプでは装備はヘルメットとショルダーパッドのみでフルコンタクトは禁止されている。


 キャンプでは実戦と同じ装備、スピードで練習が行われるため、どうしても故障が多くなる。選手同士の小競り合いも起きる。
 新人選手がNFLの本当のスピードとパワーに圧倒されるのもキャンプでのことだ。


 一回の練習はほぼ2時間から2時間半。そのスケジュールは分刻みで、タイムキーパーが時間を計り、ストレッチからポジション別練習、スクリメージ、2ミニッツドリル、スペシャルチームの練習など実に手際よくメニューがこなされる。


 かつては一日に2回の練習を行う、いわゆる「2部練」を実施するチームもあったが、2011年に更新された労使協約で練習時間の上限が決められたために今では禁止されている。


 キャンプに参加できる選手数は最大90人と定められている。昨年までは8月下旬に75人に絞り、さらに開幕直前に公式登録数である53人を決定するという段階を踏んでいたが、今年からルールが変わり、開幕直前に一気に53人にまでカットされることになった。
 シーズンインの数日前まで、熾烈なポジション争いが展開されるのだ。


 「キャンプアーム」と呼ばれるQBがいる。これは本来のポジション争いには加わらず、レシーバーたちの練習のためにパスを投げる役割の選手だ。
 野球に例えればバッティングピッチャーのようなものだ。もっとも、練習でいいパスを投げ続けていれば第2、第3QBに「昇格」する可能性も皆無ではない。


 キャンプで新しい戦術を学びコンディションを整えた選手たちは、プレシーズンゲームで実戦経験を積む。
 プレシーズンゲームは各チーム4試合ずつ行う(毎年恒例の殿堂入り記念試合=ホールオブフェイムゲームに出場する2チームは5試合)。


 プレシーズン第1週はレギュラーメンバーはほとんど出場しない。出場しても第1Qの最初の1、2シリーズに登場するだけだ。
 実はかつて日本でも行われていた「アメリカンボウル」シリーズはこの第1週のプレシーズンゲームだった。


 ファンのお目当てのスター選手は第2Qが始まるころにはベンチに下がり、あとは控え選手のポジション争いを眺めるだけだった。


 本来の先発メンバーが多く登場するのは第3週だ。だからこの試合を見ればそのシーズンのレギュラーメンバーがわかる。
 QBの先発争いが展開されているチームなどは、このタイミングで一つの答えを出さなければならないのだ。


 プレシーズン最終週は、再び控え選手が多く出場する。先発陣は開幕に向けて休養して不要な故障を避ける。
 控え選手にとってはロースター入りをかけた最後の「オーディション」である。特に今年は一発でロースターカットが行われるので、ボーダーラインにいる選手にとっては文字通り生き残りをかけた大事な試合となる。


 今年の最終ロースターカットの期限は9月2日午後4時(アメリカ東部時間)だ。この期限までにすべてのチームは故障者リスト入りの選手や出場停止選手、練習生を除いた登録選手を53人に絞らなければいけない。


 ただし、人数の上限を守れば入れ替えは自由なので、他のチームからカットされた有望選手を新たに獲得し、その枠を作るために誰かを解雇するという目まぐるしい動きが展開される。
 ここでもビッグネームの移籍が起こる可能性があり、目が離せない。


 2017年シーズンはスーパーボウル王者のペイトリッツがチーフスを地元ジレットスタジアムに迎えて、現地時間9月7日午後8時半(日本時間8日午前9時半)に開幕戦を行う。

【写真】キャンプで黙々とトレーニングに励むペイトリオッツのエースQBブレイディ(AP=共同)