NFLペイトリオッツのQBトム・ブレイディが来日する。スポーツ用品メーカーの新製品のプロモーション活動の一環で、「アジアツアー」と称して北京や上海、東京を訪れるものだ。
 21日には東京都内で次世代のフットボール選手に向けたクリニックも予定されている。


 NFL選手がプライベート旅行ではない公式イベントで来日するのは久しぶりだ。「アメリカンボウル」と呼ばれたプレシーズンゲームが毎年開催されていた時代は、4月頃に親善大使に任命された選手が来日し、記者発表に登場するとともにファンイベントに参加するのが恒例だった。
 アメリカンボウルが2005年を最後に中断されてからは、チアリーダーや元選手がNFLの宣伝活動のために来日することがあったが、だいぶ前からそうした行事もなくなっている。


 1990年代初めはまだ日本経済にバブルの名残りがあり、国内企業にも活気があってアメリカンボウルの他、NCAAの公式戦である「コカ・コーラボウル」(旧ミラージュボウル)、大学4年制のオールスター戦だった「ジャパンボウル」、アイビーリーグに日本選抜が挑戦する「アイビーボウル」など国際イベントも数多くあった。


 91年だと記憶しているが、パールボウルのイメージキャラクターとして、当時49ersの現役QBだったジョー・モンタナが来日したこともあった。
 今では考えられない贅沢なゲストである。もっとも、今年のパールボウル(19日東京ドーム)にはデーモン閣下が〝降臨〟するそうだから、これも当時は想像できなかった「魔界」からの客人かもしれないが。


 実は筆者が初めて直接話を聞いたNFL選手がこのモンタナだった。来日に合わせて東京港区のアメリカンクラブで記者会見があった。
 会見のあと別室に移動してレセプションパーティーが行われたのだが、準備が整う間、モンタナはソファーに座って待っていた。


 集まったメディアの人々はスーパースターを目前にしながら、遠巻きに眺めるだけで誰も声をかけようとしない。
 当時、新聞記者1年目で怖いもの知らずだった筆者は、ここぞとばかりにモンタナに声をかけたら「座れ」と言われ、そのまま即席のインタビューになったのだ。掲載している写真はその時のものだ。


 前年のジャイアンツとのプレーオフで負傷していたため、その回復具合などを訪ねたことを覚えている。
 あとになって先輩記者から「お前度胸あるな」と言われもしたが、今思えば貴重な経験だった。


 アメリカンフットボール専門誌やNFLジャパンにも寄稿している関係で、来日する選手とインタビューする機会をたくさんもらった。
 パッカーズのQBブレット・ファーブは気分屋だが、真面目な顔をして冗談を言う茶目っ気のある人だった。ただ、南部訛りが強く、文法を無視した喋り方をすることがあるのでヒアリングに苦労をした。


 人柄の良さを感じたのは49ersのQBジェフ・ガルシアだ。質問者から目をそらさず、答えるときもじっくりと丁寧な英語で答えてくれた。たくさんしゃべってくれるので字数を稼げたのも助かった。


 オイラーズなどで活躍したQBウォーレン・ムーンは引退後の来日だった。彼には「スター選手はなぜNFLのコーチになろうとしないのか」と訪ねたところ、「スターのうまみを知ったら、コーチのような重労働はやりたくないんだよ」という答えが返ってきて笑ってしまった。


 ムーンはその夜に行われたパーティーで会場の参列者にミニチュアのフットボールを投げるというイベントに参加したのだが、そのスパイラルの見事さは現役さながらで、美しい放物線を描くパスに同席していたフォトグラファーの小座野容斉氏とため息をついたものだ。
 「こんなパスを投げるQBが(お互い好きな)スティーラーズに欲しいね」。もちろん、ベン・ロスリスバーガーが入団する前の話である。


 他にもスティーブ・ヤング(49ersQB)、エミット・スミス(カウボーイズRB)、キーショーン・ジョンソン(ジェッツWR)らとのインタビューも懐かしい思い出だ。
 今回はブレイディとのインタビューの機会には恵まれなかったが、かつてのようにNFL選手が来日して、ファンと接するチャンスが増えることを切に願っている。

【写真】来日したNFLのスーパースター、49ersのQBジョー・モンタナ氏(中央)にインタビューする筆者(左)=写真提供・生沢浩さん