このコラムでも何度か触れてきたが、NFLのチーム補強にはそれぞれのカラーが出るものだ。ドラフトで指名した選手を育てて生え抜きで構成するチームもあれば、トレードやフリーエージェント制度を使って積極的に外部の人材を求める球団もある。


 伝統的に前者の例にならうのはスティーラーズだ。ダン・ルーニー前球団代表とチャック・ノール元HC(ともに故人)が、1960年代半ばに導入した基本路線を半世紀を経た今日でも踏襲している。
 この逆の例が90年代のレイダーズで、他チームから運動能力の高い選手を引き抜いてスター軍団を作ろうとした。


 今回取り上げるパッカーズは、トレード主体で補強をするチームの一つだ。ことにテッド・トンプソン氏が2005年にGMに就任してからは、その方針が徹底している。昨年の開幕ロースターを見るとそれがよくわかる。


 登録53選手のうち実に47人が生え抜きで、35人がドラフトで指名された人材だった。
 他チームからの移籍組はOLBジュリアス・ペパーズ、TEジャレット・クックらほんのわずかで、育成プログラムがしっかりと確立されていることがうかがえる。


 2005年以降昨季まで地区優勝6回を含む9回のプレーオフ進出、2010年シーズンのスーパーボウル優勝などトンプソンGMの方針が好結果生んでいることは明らかだ。
 もっとも、パッカーズが伝統的に生え抜き重視で来たわけではない。むしろ、90年代はトレードやフリーエージェントによる選手補強が大きく影響した。


 パッカーズといえば、60年代にNFLで最も強いとされたチームだった。1961~65年でのNFL優勝は3回を数える。
 66年に対抗リーグだったAFLとの王座決定戦としてスーパーボウル(当時の名称は「AFL―NFLワールドチャンピオンシップ」)が新設されるとNFL王者としてチーフスと対戦し、初代統一王者に輝いた。翌年はレイダーズを倒して連覇を達成した。
 この時のHCこそが、現在のスーパーボウル優勝トロフィーにその名が付けられているビンス・ロンバルディだ。


 70年以降は低迷が続いたが、60年代の黄金期に由来して「タイトルタウン」とまで呼ばれたグリーンベイが、その輝きを取り戻したのは90年代だ。
 当時NFCの2強といわれたカウボーイズと49ersに割って入る形でプレーオフの常連となり、96年シーズンに30年ぶりのリーグ制覇を果たした。


 この当時主力選手だったQBブレット・ファーブやDEレジー・ホワイトは、ともに他球団からの移籍組だった。これらの選手を獲得したのは名GMの誉れ高いロン・ウルフ氏だ。
 ウルフ氏は実績の有無にかかわらず、自分が目を付けた選手は積極的に獲得した。ファーブはファルコンズで控えだった選手だ。その彼を獲得して先発起用し、NFL歴代屈指のQBに育て上げたのだ。思えば、49ersのアシスタントコーチにすぎなかったマイク・ホルムグレン氏をHCに招聘したのもウルフ氏だった。


 ホワイトはすでにイーグルスでスター選手として活躍し、「防衛大臣」のあだ名を欲しいままにしていた。
 当然引き抜きには多額の金額を必要としたのだが、ウルフは人材獲得による戦力向上を優先した。現在のトンプソン氏とは180度方針が異なりながら、それでも強豪チームを作り上げているのは面白い。


 可能な限り生え抜きでチームを構成したがるトンプソン氏だが、さすがに昨年は方向転換を余儀なくされた。度重なるRBの故障による戦列離脱が原因だ。


 エースRBエディ・レイシーがシーズン序盤で足首を故障、バックアップのジェームス・スタークスも半月板損傷で手術を受けた。
 RB不在がQBアーロン・ロジャースのパスにも大きく影響し、苦肉の策としてトンプソン氏はチーフスとのトレードでRBナイル・デービスを獲得したのだった。


 トンプソン氏がシーズン中のトレードに踏み切るのは異例で、2010年以来のことだったという。
 さらにパッカーズは11月に入ってシーホークスから自由契約となったクリスティン・マイケルを獲得したが、これも珍しいことだった。


 デービス(獲得からわずか2週間で解雇)もマイケルもパッカーズのランオフェンスの救世主とはならず、むしろWRからコンバートされたタイ・モンゴメリーが先発に定着したのは皮肉な結果だった。
 それでも昨季のパッカーズは2年ぶりにNFC北地区の優勝を奪還し、カンファレンス決勝にまで駒を進めた。このあたりは、生え抜き選手中心に地力を蓄えてきたパッカーズの強さだろう。


 チーム作りの方法はいくつもあってしかるべきで、たった一つの正解はありえない。ただ、ルーニー、ノール、ウルフ、トンプソン各氏はその時々でチームのニーズを正確に把握し、強化につながる最も適切な方策を選択する眼力を持ち合わせていた。
 こうした首脳陣こそが、長期にわたって強豪と呼ばれるチームを作ることができる人物なのだ。

【写真】長くパッカーズのエースQBとして活躍し殿堂入りしたブレット・ファーブ氏(AP=共同)