5、6月はNFL各チームでオーガナイズド・チーム・アクティビティ(OTA)と呼ばれるオフ中のチーム練習やミニキャンプが行われる。
 それぞれが2~4日間と短期で、着用するのはヘルメットのみと簡略なものではあるが、フリーエージェントやトレード、ドラフトを経て形成されたチームの新たな体制が公式にスタートする場でもある。


 とくにHCが交代してチームのシステムそのものが大きく変わる場合には、新スキームを導入する重要な機会となる。
 ポジション争いがスタートするのもこの時期だ。夏のトレーニングキャンプからプレシーズンにかけての競争ほど激しくはないものの、新人を加えた練習のなかで生き残りをかけたバトルが展開される。


 そんななか、ベアーズは実に9年ぶりに先発QB争いが起きている。昨年まではジェイ・カトラーが不動のエースだったが、不振を理由にリリースされた。ベアーズは後継者にチーム内部ではなく、他チームからの移籍組と新人に人材を求めた。


 3月には前バッカニアーズのマイク・グレノンを獲得し、直後にベテランのマーク・サンチェスと契約した。さらに4月のドラフトではトレードによって指名順位を全体2番目までにあげてミッチェル・トルビースキー(ノースカロライナ大)を指名した。


 ところが、5月のOTAでサンチェスが左ひざを故障し、少なくとも7月下旬に予定されているトレーニングまで戦列を離れることとなった。ベアーズは急きょ、コナー・ショーを獲得した。
 ショーは唯一の試合出場が3年前で、彼が先発争いに加わるとは考えにくい。サンチェスも故障の影響は大きく、事実上はグレノンとトルビースキーの一騎打ちだ。


 グレノンは「今季は自分の年だ」と自信を深めている。2013~14年シーズンにバッカニアーズで先発を務めた経験があるのも理由だが、実は首脳陣から「お墨付き」をもらっているようなのだ。
 グレノン自身がOTAで語ったところによると、チームがトルビースキーを指名した直後にGMライアン・ペースから電話をもらい、少なくとも今シーズンの先発はグレノンに任せる旨を告げられたのだという。


 もちろん、ペースの発言は何の保証もなく、それはグレノンも十分承知しているだろう。ただ、3年目を迎えるジョン・フォックスHCはトルビースキー投入を急ぐ意思はなく、時間をかけてNFLのスタイルに慣れるように育成する方針だ。こうした状況がグレノンの自信の背景にある。


 ところが、そう簡単にシナリオを描けないのがNFLだ。「新人QBはじっくり育てる」などと言いながら、あっさりとその言葉を翻した例は過去にいくらでもある。
 ましてや全体2位指名のトルビースキーを起用もせずにベンチに置いておくなど、すぐに結果を求めるファンは納得しないだろう。


 ファンを黙らせるには、グレノンがチームに勝利をもたらす活躍をするしかない。しかし、一昨年の全体1位指名のジェーミス・ウィンストンにポジションを明け渡したあと、ほとんど実戦経験のないグレノンにどこまで期待できるか。
 2015年は出場がなく、昨年も控えでわずか11回しかパスを投げていない。全16試合を通じて、プレーオフ争いを演じるだけの活躍ができるとは思えないのだ。


 不振が続けばファンのトルビースキー待望論が大きくなる。過去2年間で結果を出せていないフォックスもHC職を続けるために新人起用に傾くかもしれない。


 グレノンの契約期間は3年だが、来年からの2年分はベアーズ側に行使の選択権がある。つまり、保証されているのは今季のみで実質は単年契約なのだ。
 もっとも、わずか1年で1600万ドルというグレノンの過去の実績に対して破格とも言える年俸を保証しているので、ベアーズもそれなりの期待をかけていることになる。


 その期待に応えられるか、それとも再び新人QBの露払いで終わってしまうか。6月中にあと2回予定されているOTAと、それに続くミニキャンプはグレノンのNFLキャリアを左右する重要なものになるだろう。

【写真】ベアーズの先発QBの座を争うグレノン(8)とトルビースキー(10)(AP=共同)