NFLの最高議決機関にあたるオーナー会議が、今春はシカゴで開催された。
 注目の議決はオーバータイムが従来の15分から10分に短縮されることだ。オーバータイムの戦略に影響を与えるルールとして話題を呼んでいる。


 このルール改正とともに2021年の2月に行われるスーパーボウルの開催地が、すでに決定していたロサンゼルスからフロリダ州タンパに変更になった。ロサンゼルスの開催権は翌2022年に持ち越された。
 理由は19年の完成を目指しているロサンゼルスの新球場の工期の遅れだ。昨季ロサンゼルスにフランチャイズを移したラムズが、今年から移転するチャージャーズと共有することになるこのスタジアムは19年シーズンから使用される予定だった。


 ところが、ロサンゼルスにしては異例の長雨で工事がはかどらない。やむなくラムズは5月中旬に完成の1年延期を決定して発表した。


 オーナー会議がスーパーボウルのロサンゼルス開催を先送りにする決断を下したのは、ラムズの発表からわずか1週間後のことだ。素早い決断である。
 代替地にタンパが選ばれたのは20、21年大会の招致にも名乗りを上げており、ともに最終選考で落選した経緯があるからだ。


 日本ではほとんど話題になっていない開催地の変更だが、スーパーボウルの経済効果の大きさを考えれば、オーナーの迅速な決断には驚くばかりだ。


 いろんな試算があるが、スーパーボウル開催がホストシティーにもたらす経済効果は500~600億円とされる。
 王座決定戦とはいえわずか1試合、準備期間を合わせても1週間でこれだけ潤うのだ。開催要件を満たすスタジアムを持つ都市が招致に熱心なのも理解できる。


 それだけの利権の絡む権益をあっさりとロサンゼルスからタンパへ移してしまうところに、オーナー会議の権限の大きさがうかがえる。


 21年2月には新スタジアムが完成しているのだから、変更の必要がないとも考えられる。しかし、NFLにはスーパーボウルを開催するスタジアムは最低でも2年のレギュラーシーズン開催実績が必要とする内規がある。今回の決定はこの規約を適用した。


 過去にも開催地が変更になった例はある。第27回大会(1993年1月)は、カリフォルニア州パサディナのローズボウルで行われたが、これは本来アリゾナ州テンピのサンデビルスタジアム(アリゾナ州立大学のホーム)で開催される予定だった。


 1983年にアメリカは当時のロナルド・レーガン大統領が、アフリカ系アメリカ人の公民運動の指導者であったマーチン・ルーサー・キング牧師をたたえるべく1月の第3月曜日を国民の祝日とする決定を下した。ところが、アリゾナ州はこれを設けていなかった。
 そこでNFLはオーナー会議でテンピからパサディナへの変更を決定したのだ。NFLの大多数を占めるアフリカ系アメリカ人選手に配慮したためと言われる。


 その後アリゾナ州は「マーチン・ルーサー・キングデー」を定め、96年1月に第30回大会の招致に成功した。


 03年2月の第37回大会は当初のサンフランシスコからサンディエゴに変更となった。これは招致に成功した97年当時には49ers新スタジアム建設の計画があったからだ。
 しかし、それがとん挫したため、当時のスタジアムでは観客収容数が基準に満たず、やむなく権利放棄となった。サンフランシスコは念願のスーパーボウル開催を実現するまで、さらに13年の年月を待たなければならなかった。


 開催規模や懸案となった問題の焦点が異なるので比較にはならないかもしれないが、20年東京五輪・パラリンピックの開催地問題ですったもんだした我が国とは違い、決断が早く、有無を言わせないのがNFLのオーナー会議だ。
 それがコミッショナーの独断ではなく、オーナーの決議で決定していくところに巨大プロスポーツリーグであるNFLの強みがあるのだろう。

【写真】オーナー会議終了後に記者会見する、ロジャー・グッデルNFLコミッショナー(AP=共同)