ダラス・カウボーイズの元エースQBトニー・ロモ(36)が引退を発表した。昨シーズン、故障欠場している間に新人のダク・プレスコットにポジションを奪われ、このオフは移籍先を探していた。
 関心を持つチームは複数あったようだが、条件が折り合わずに現役続行を断念した。今後はCBSのアナリストとして新たな人生をスタートさせる。


 通算成績は78勝49敗。カウボーイズを4度プレーオフに導くとともに、自らも4回プロボウルに選出された。
 イースタンイリノイ大学という無名校からドラフト外でNFL入りし、伝統あるカウボーイズの先発QBとなったのだから、これも一つの「サクセスストーリー」なのだろう。


 ただ、今一歩スターになりきれない残念な部分も持ち合わせていた。チームを一度もスーパーボウルに導けなかったのもそう思わせる理由だ。
 ごく限られた選手だけが享受できる特権ではあるものの、やはりプロは結果で評価される。


 チャンスがなかったわけではない。最も期待が高まったのは2010年だ。前年を11勝5敗で終えてディビジョナルプレーオフにまで進んだカウボーイズは、優勝候補の筆頭だった。
 2年前にオープンしたカウボーイズスタジアム(現AT&Tスタジアム)でのスーパーボウルが予定されていたため、史上初のホームチーム出場が実現するとの期待もあった。


 ところが、その大事なシーズンにロモは故障して長期の戦列離脱を余儀なくされる。チームは低迷し、ウェイド・フィリップHC(当時)はシーズン途中で解雇された。
 ロモが「持っていない」と評され、それを言い表す「ロモってる」という言葉がNFLファンの間で使われるようになったのはこの頃のことではなかったか。


 先発1年目の2006年には初のプレーオフを経験するが、TD後のキックのホールドに失敗し、勝利を手にすることができなかった。
 翌年も連続してプレーオフに出場するが、13勝3敗でNFCトップシードだったにもかかわらず初戦でライバルのジャイアンツに敗れた。


 この時、試合直前のバイウィークに当時の交際相手であるジェシカ・シンプソンさんとリゾート地に旅行していたことが発覚し、批判された。
 チームメートも数人同行していたが、非難の矛先はロモへと向かった。ファンは「オフに何をしようと自由だが、トム・ブレイディやペイトン・マニングならリゾート地ではなくスカウティングルームで過ごすだろう」と言いたかったに違いない。


 調子に乗ってくると信じられないようなビッグプレーを生むところなどは、彼がずっと憧れていたというブレット・ファーブに通じるものがある。そして、調子に乗りすぎて独り相撲で試合を壊してしまうところも。


 それでもロモはその「天然キャラ」で多くのファンに愛された。ロジャー・ストーバックやトロイ・エイクマンのようにカウボーイズにスーパーボウル優勝をもたらすことはできなかったが、パス獲得距離(3万4183ヤード)とTD数(248)では彼ら以上の成績を残した。


 二人の大先輩のように殿堂入りできるかはわからないが、「アメリカズチーム」と呼ばれるほど全米で人気があり、伝統あるチームを長く牽引した実績は称賛に値する。
 あと1、2年は現役を続行すると思っていただけに引退は残念だが、秋にはどんな解説を披露してくれるのか楽しみに待ちたい。

【写真】引退を発表したカウボーイズのQBトニー・ロモ(AP=共同)