コルツの本拠地であるルーカスオイル・スタジアム(インディアナ州インディアナポリス)で毎年恒例の「スカウティングコンバイン」が始まった。ドラフト候補生が身体能力を測り、チームとの面談に臨む場だ。


 このスカウティングコンバインがオフシーズンの補強策の第一歩で、3月9日に解禁となるフリーエージェント(FA)とトレード、4月27~29日にペンシルベニア州フィラデルフィアで予定されているドラフト会議がチーム構築の柱になる。


 各球団の補強方針は前年度に好成績を挙げたチームの影響を受けるものだ。2016年シーズンはカウボーイズ、レイダーズ、ファルコンズの躍進が目立った。
 この3チームに共通するのはOLの安定だ。したがって、今年のドラフトではOLの人気が高まると予想されている。


 また、エジキール・エリオット(カウボーイズ)の活躍で、RBへの再評価もされるだろう。近年RBのドラフト指名は遅いラウンドに下がる傾向があったが、エリオットのようにいい人材がいれば1巡上位で指名される可能性もある。
 RBに関しては、バイキングズとの契約切れでFAとなるエイドリアン・ピーターソンの去就も注目される。


 人材発掘で最も難しいのがQBだ。ポジションの性格と重要性から肩の強さ、機動力、頭脳、判断力、リーダーシップなど要求される要素が多いこともあるが、NFLとカレッジのプレースタイルがどんどん乖離していることも大きな理由だ。


 カレッジでは相変わらず「スプレッドフォーメーション」が主流で、QBはショットガン隊形(厳密にいうと従来のショットガンよりもCとの距離がやや短い)でセットし、身体能力に任せて走ったりパスを投げたりする。
 ところがNFLで成功するQBは「ポケットパサー」だ。アンダーCからドロップバックしてポケットの中で冷静にフィールドの動きを読む。ほとんどのチームはこうしたQBスタイルを採用しているので、ドラフト指名されたQBはNFL方式への順応が不可欠だ。この順応ができずに埋もれていった人材は少なくない。


 カレッジでもNFLと同様の、いわゆるプロスタイルのオフェンスを使うチームは依然としてあるが少数派だ。
 NFLでは、ゆるやかにではあるがQBの世代交代が進んでいる。昨年のペイトン・マニングの引退、ダク・プレスコット(カウボーイズ)の登場などはその象徴的な出来事だった。


 一方で長く先発の座を守っているベテランQBも多い。自身5度目のスーパーボウル制覇を達成したトム・ブレイディ(39歳)、ドルー・ブリーズ(38)、カーソン・パーマー(37)、ベン・ロスリスバーガー(34)、イーライ・マニング(36)、フィリップ・リバース(35)らがそうだ。こうした選手が短いスパンで一気にNFLを去る事態は十分に想定できる。


 実際、パーマーとロスリスバーガーがこのオフでの引退を示唆した。パーマーは現役続行を明言し、ロスリスバーガーもユニフォームを脱ぐ可能性は低いとみるが、彼らのNFL生活がそれほど長くないことは事実だ。


 昨年のカウボーイズのように新人のプレスコットがベテランのトニー・ロモからポジションを奪う形であれば連続性が保たれ、チーム力が落ちることはない。
 しかし、先発QBが引退してから人材を探すのは戦力低下を招く恐れがある。そして、新QBの育成に失敗すればチームの低迷は長期化する。


 現在のNFLはかつてないほどパス主流になっており、それだけにこれほど多くの好パサーがそろった時代も初めてだろう。
 ところが、人材を供給する場であるカレッジはパスに頼らない独自路線を行く。将来の人材不足は不可避な状況だ。


 チームはQBの人材発掘を急務と捉える必要があるだろう。先発QBが健在なうちに後継者を発掘しておくべきだ。QBの恐慌時代を招いてはならない。

【写真】ロモ(左)の故障で開幕から先発QBとしてプレーし、カウボーイズをプレーオフに導いた新人プレスコット(AP=共同)