筆者はNHK―BS、G+、DAZNなどでNFLの解説を担当するとき、事前に調べた内容をノートにまとめて収録スタジオに持ち込むことにしている。そのノートも今季で26冊目となった。


 主に記しているのはチームのデータや選手の情報、エピソードなどだ。時間の都合で放送枠で紹介しきれないことの方が多いのだが、あとから見直すといいネタ帳になっていて役に立つこともある。
 そこで今回はそのノートの中からプレーオフ中のネタをいくつか紹介したい。


 2年ぶりのポストシーズン出場となったライオンズは今季第4Q開始時にリードされていながら逆転勝ちした試合が8回もあり、NFL新記録となった。
 従来の記録は2009年シーズンのコルツで、その時のヘッドコーチ(HC)が現在のライオンズのHCジム・コールドウェルだった。


 そのコールドウェルは就任から3年でチームを2度のプレーオフに導いている。その前は14年間で1度しかポストシーズンを経験していなかっただけにチーム内での彼の評価は高い。
 しかし、そんなコールドウェルも1991年シーズンを最後に遠ざかっているプレーオフでの勝利をチームにもたらすことはできなかった。


 そのライオンズをワイルドカードラウンドで破ったシーホークスは5年連続のプレーオフ出場というチーム史上初の快挙を成し遂げた。
 しかもすべて初戦を突破しており、すっかりプレーオフの常連の風格を身につけた。


 プレーオフ直前にKRデビン・へスターを獲得したことが話題となった。WR兼KRのタイラー・ロケットが第16週に脚を骨折してシーズン絶望となったためだ。
 ヘスターといえばリターンでの通算20TDというNFL記録保持者である。今季はレーベンズに所属していたが12月に解雇されたばかり。彼にとっては思わぬ形でプレーオフ出場のチャンスが転がり込んできた。


 シーホークス入団が決まった時、へスターはピート・キャロルHCに電話をかけて、「やっと僕をとってくれましたね」と述べたという。
 ヘスターは大学に進学する際、多くのメジャーカレッジから奨学金のオファーを受けたが、当時キャロルがHCを務めていたUSCだけは見向きもしなかったのだそうだ。へスターはマイアミ大学に進んだが、14年の時を経てようやくキャロルに必要とされたのだった。


 実はヘスターはシーホークスから契約の打診がある前にペイトリオッツとの交渉もしていた。しかし、ほぼ同じ時期にカージナルスから解雇されたWRマイケル・フロイドが先に契約をしたために破談。その後ペイトリオッツはスーパーボウルで優勝することになっただけに、ヘスターはスーパーボウルリングを手にする機会を逃してしまった。


 パッカーズの本拠地ランボーフィールドといえば、冬の厳しい寒さは有名だ。その気候も手伝ってか、パッカーズはホームでのプレーオフゲームの勝率が高い。
 なんといっても2002年シーズンにファルコンズに敗れるまで、ランボーフィールドでのプレーオフゲームは無敗だったのだ。


 どのチームもできれば避けて通りたいはずのランボーフィールドを得意としているのがジャイアンツのQBイーライ・マニングだ。
 過去に07年と11年シーズンにランボーフィールドでパッカーズに勝利している。いずれもブレット・ファーブ、アーロン・ロジャーズというNFL史に残るQBを破っている。
 その勢いのままにスーパーボウル優勝まで駆け上がっているだけに、マニングにとっては相性のいいスタジアムなのかもしれない。ただし、今年ばかりは勝手が違ったようでパッカーズに大敗してシーズンを終えた。


 ジャイアンツのシーズン終盤の躍進を支えたのはディフェンスだった。とくにその堅いディフェンスはNYPD(New York Pass Defense)と呼ばれた。ニューヨークの大衆紙「ニューズデー」でジャイアンツを取材する記者が命名したと言われる。


 ニューヨークでNYPDといえば「New York Police Department(ニューヨーク市警察)のことだ。
 略称の無断使用を責めるかと思えばそこは粋なニューヨークだ。「NYPD Football」というロゴ入りのキャップを制作し、チームに寄贈したのだそうだ。


 スーパーボウルでペイトリオッツに逆転負けを喫したファルコンズのQBマット・ライアンは、過去のプレーオフでの戦績が振るわなかった。
 08年にNFL入りしてから昨季までに、4シーズンでプレーオフに進出したが通算1勝4敗。しかも、08年のカージナルス、10年のパッカーズ、11年のジャイアンツ、12年の49ersと、ライアンが敗れたチームはいずれもスーパーボウルに進んでいる。もっとも、12年はNFC決勝なので当たり前なのだが。


 今回ようやく自身が初の大舞台を経験したのだが、あと一歩で優勝をもたらすことはできなかった。
ファルコンズを含み、スーパーボウルでの優勝経験のないチームは現在13だ。
 ただし、そのうちライオンズ、ブラウンズ、イーグルス、カージナルス、タイタンズ(当時はオイラーズ)、ビルズ、チャージャーズはNFLまたは旧AFLでのリーグ制覇がある。


 優勝経験のない6チームはファルコンズ、バイキングズ、ベンガルズ、パンサーズ、ジャガーズ、テキサンズだ。
 また、スーパーボウルに縁がないのはジャガーズ、テキサンズ、ライオンズ、ブラウンズの4チームである。

【写真】NFLのテレビ解説者としても活躍する生沢さんの「ネタ帳」=写真提供・生沢浩さん