今年のプレーオフの目玉と期待していたレイダーズを不運が襲った。QBデレク・カーが第16週のコルツ戦でサックを受けた際に右脚脛を骨折したのだ。全治4~6週間と診断されており、ポストシーズンの出場は絶望的だ。
 レイダーズは14年ぶりのプレーオフ出場を決めたばかり。歓喜の熱が冷める前に厳しい現実に直面してしまった。


 また、8年ぶりとなるドルフィンズもQBライアン・タネヒルが左膝の捻挫で2試合に欠場している。現地時間2017年1月7~8日に行われる1回戦に間に合うかは微妙だ。
 シーズンを通してチームを牽引してきた先発QBが終盤で負傷し、控えQBでポストシーズンを戦わなければならない例は過去にいくつかあった。そして、そのほとんどが望ましくない結果に終わっている。


 記憶に新しいのは2014年のカージナルスだ。10勝1敗と好スタートを切ったが、先発QBカーソン・パーマーとバックアップのドリュー・スタントンが相次いで故障。3番手のライアン・リンドリーがレギュラーシーズン第16週からスターターとなったが、連敗してNFC西地区優勝をシーホークスに奪われた。
 プレーオフでも1回戦でパンサーズに敗れ、チーム史上最高とも言われたシーズンが尻すぼみで終わった。


 レギュラーシーズンの先発出場がなかったQBをいきなりポストシーズンでスターター起用しなければならなかった例もある。
 2012年のバイキングズだ。クリスチャン・ポンダーがチームを10勝6敗に導いたが、肘の故障でプレーオフの出場が不可能となった。
 代わって出場したのがレギュラーシーズンで1度もパスを投げていないジョー・ウェブだった。同じNFC北地区のライバルであるパッカーズの本拠地ランボーフィールドに乗り込んでの1回戦だったが、パス30回の試投でわずか11回の成功と不調を極め、エースRBエイドリアン・ピーターソンもTDなしに抑えられて敗退した。


 故障が理由ではないのだが、1999年のビルズは不可解なQB起用をした。このシーズンはダグ・フルーティーがスターターを務めてきたが、ウェイド・フィリップスHC(当時)は何を考えたのかプレーオフ初戦でロブ・ジョンソンにスイッチしたのだ。
 小兵で機動力のあるフルーティーよりも、長身でポケットパサーのジョンソンが的確と判断したのだろうが、故障でも不振でもないのにポストシーズンで先発QBを代えるのは前代未聞だ。


 結果、ビルズはタイタンズに負ける。決定的なプレーとなったのはビルズが残り16秒でFG成功によって16―15とリードを奪った直後のキックオフリターンだ。
 キックオフされたボールをタイタンズのロレンゾ・ニールがキャッチしてフランク・ワイチェックにハンドオフ。ワイチェックは左サイドで待ち構えていたケビン・ダイソンにラテラルパスを投げ、そのままダイソンがリターンTDをした。「ミュージックシティー・ミラクルキャッチ」と呼ばれる劇的なプレーだ。ビルズはこの敗退後プレーオフに縁がない。


 プレーオフでバックアップQBが活躍した例もわずかながらある。2011年のテキサンズは、チーム誕生から10年目にして初めてポストシーズンへの出場権を勝ち取った。
 しかし、その初戦にシーズン中の躍進の立役者であるマット・ショーブの姿はなかった。プレーオフ初戦のベンガルズ戦で先発したのはその年に5巡指名を受けたばかりのT・Jイェーツだった。


 ルーキーには荷が重い状況ではあったが、巧みなパスワークと同じく新人ながらエースDEとして活躍を見せたJ・J ワットのインターセプトリターンTDなどもあって、球団史上初のプレーオフゲームを勝利で飾った。


 控えQBが歴史に残る逆転劇を演じたのが1992年のビルズだ。その前の2シーズン連続でスーパーボウルに出場していたビルズは、この年も11勝5敗と好調だったが最終戦でジム・ケリーが膝を故障。プレーオフ初戦はフランク・ライクが先発を務めた。
 得点力の高いヒューストン・オイラーズ(現テネシー・タイタンズ)を相手に第3Q序盤で3―35と大きく引き離された。しかし、第4Q終了までにこの32点差を追いつき、オーバータイムの末逆転勝ちした。


 最後に、バックアップQBで頂点に上り詰めた唯一の事例を紹介したい。1990年のジャイアンツはフィル・シムズが好調で開幕から10連勝を飾った。ところが、第15週のビルズ戦で脚を骨折してシーズン絶望となってしまう。


 代わりに司令塔を任されたのが7年目のジェフ・ホステトラーだ。ポケットパサーのシムズと違い、ホステトラーはパスワークが荒削りでどちらかを言えば脚力を生かす、当時では異端のQBだった。それが災いしてか、それまでほとんど出場機会のない無名選手だった。


 しかし、ホステトラーは決してきれいとは言えないパッシングフォームからロングパスを次々と成功させ、オフェンスに新たな息吹を与えた。
 結果的にジャイアンツはホステトラーが先発となった第16週以降、一度も負けないままスーパーボウルを制することになる。皮肉にも王座決定戦の相手は、シムズをサイドラインに押しやったビルズだった。


 ホステトラーはこの年の活躍が認められて翌年にはシムズと先発争いをする。さらに93には当時ロサンゼルスに籍を置いていたレイダーズに移籍し、その年のうちにチームをプレーオフに導いた。
 ちなみにこれが現在までで、ロサンゼルスで行われた最後のプレーオフゲームである。


 プレーオフを目前にしてQBを失う事態はなかなか克服が難しい。しかも、今年のレイダーズやドルフィンズのように久しくポストシーズンを経験していないチームならなおさらだ。
 まだレギュラーシーズンは終わっていないが、チームはすでに対策に追われているに違いない。

【写真】コルツ戦でタックルされ負傷したレイダーズのエースQBデレク・カー(AP=共同)