不祥事を起こした選手への対応にはチームの性格がよくあらわれるものだ。
 アリゾナ・カージナルスが、飲酒運転で逮捕されたWRマイケル・フロイドをシーズン中にもかかわらず解雇した。逮捕からわずか2日後のことだった。


 カージナルスは第14週終了現在で5勝7敗1分けの成績で、数字上は可能性が残されているもののプレーオフ出場は絶望的だ。開幕前にはスーパーボウル出場の有力候補にも挙げられていただけに失望感は強い。
 事実上の終戦を迎えたとはいえ、エースWRラリー・フィッツジェラルドに次ぐ第2レシーバーをあっさりと切ってしまった。ここにカージナルスの潔さがある。


 フロイドは2012年のドラフト1巡(全体の13番目)指名選手だ。188センチ、99キロのサイズはフィッツジェラルド(191センチ、98キロ)とほぼ近い体格を持つ。
 フィッツジェラルドがフロイドの能力を見抜き、チームにドラフト指名を強く進言したとも言われる。それだけにフィッツジェラルドもフロイドをかわいがり、育成に努めていたようだ。


 2年目にはキャリアで唯一の1000ヤードレシーブを達成し、昨年は自己最多となる5回の100ヤードレシーブを記録した。今年は契約の最終年で、活躍次第では大型契約を手にできるはずだった。
 残念なことに今季は33回のパスキャッチで446ヤードと平凡な数字に終わり、パスドロップの多さも批判の対象となっていた。


 フロイド解雇はブルース・アリアンズHC、スティーブ・キームGM、そしてマイケル・ビドウェル球団社長の合意の上で決断されたという。
 彼がオフにはフリーエージェントになるという事情が後押ししたことは間違いないだろう。それでも戦力にダメージを与えかねない重大な決断だ。


 不祥事を起こした選手は例外なくNFLから処罰を受ける。チームの多くはNFLの判断を待って処分を決定する。カージナルスはリーグの判断に先んじた形だ。
 もし、カージナルスがフロイドをそのまま在籍させていたら、おそらくリーグから来季開幕直後の4試合の出場停止処分を科されるだろう。それでもNO. 2レシーバーを失い、新たな人材を獲得するよりはましだ。


 フロイドはプロ入り前の2011年にも飲酒運転で逮捕された経歴があり、2度目の過ちを重く見た結果なのかもしれない。


 ロジャー・グッデルが2006年にコミッショナーに就任した後、NFLは選手の行動規範を厳しく取り締まるようになった。
 結果的に選手の出場停止処分が多くなり、WRジョシュ・ゴードン(ブラウンズ)、LBアルドン・スミス(49ers、レイダーズ)のように累積で1年を越える停止処分を受ける例も散見されるようになった。


 チームもその方針に同調する傾向にあり、逮捕をきっかけに選手の解雇に踏み切るチームは多い。
 一方で逮捕歴や長期の出場停止分を受けたことのある選手に対するチームの対応はさまざまだ。パッカーズはオーナーシップが市民にあるためか規律が厳しく、逮捕歴のあった選手はドラフトで指名を敬遠する傾向が強い。


 一方、カウボーイズやベンガルズなどは寛大だ。カウボーイズのジェリー・ジョーンズ・オーナー兼GMは「更生のためにセカンドチャンスを与えることが必要だ」との信念があり、過去に不祥事を起こした選手でも獲得することが少なくない。


 もっとも、彼も単に温情や教育的観点から選手にチャンスを与えるわけではない。ビジネス面で有益だから活用するにすぎない。
 潔癖さと強さがイコールではないのがプロスポーツの世界だ。


 そして、ウェーバーとなったフロイドを早くもペイトリオッツが獲得した。ペイトリオッツはTEロブ・グロンカウスキー、WRダニー・アメンドーラが相次いで負傷し、レシーバーが足りない状況だ。
 カージナルスを追われたフロイドがペイトリオッツの一員としてプレーオフで活躍するシナリオは十分に考えられる。カージナルスで果たせなかったスーパーボウル出場も夢ではない。


 それが現実となったら、カージナルスとしては忸怩たる思いだろう。だが、それはカージナルス自身が選択した「覚悟」だ。理不尽かもしれないが、それもまた勝負とビジネスが渦巻くNFLという世界なのだ。

【写真】飲酒運転で逮捕されカージナルスを解雇されたWRマイケル・フロイド(AP=共同)