第14週の結果次第で14年ぶりのプレーオフ進出が決まるレイダーズ(10勝2敗)に興味深い選手がいる。パンター(P)のマーケット・キングだ。


 QBデレク・カー、WRアマリ・クーパー、DEカリル・マックといったスター選手がそろうレイダーズで、なぜわざわざPをクローズアップするのかと疑問に思う読者もおられるだろう。
 ぜひ彼のプレーを見ていただきたい。能力が高いだけでなく、フィールド上の「エンターテイナー」なのだ。


 キングは現在のNFLでただ一人のアフリカ系アメリカ人Pだ。彼が初めてプロのフィールドに立った2012年のプレシーズンゲームで、対戦相手のカウボーイズの選手は見慣れない黒人Pの出現に驚き、パントフェイクのトリックプレーを警戒したほどだ。


 もっとも、彼が注目に値するのはこれが理由ではない。まず目を見張るのがパントの飛距離だ。今季の最長は72ヤード。自陣の20ヤードラインから蹴っても相手をゴール前8ヤードまで押し戻す計算だ。


 滞空時間も長いのでカバーチームが余裕を持ってリターナーに到達することができる。今季は平均飛距離(48.2ヤード)、そこからリターンされた距離を引いたネットアベレージ(42.6ヤード)、敵陣20ヤード以内に蹴り込む(インサイド20)回数(27回)はいずれもリーグトップ5に入る。


 Pの能力を計る重要な尺度のひとつがインサイド20だが、昨年はすべてのパントの55%、今季は47%で成功しており、パントのコントロールのうまさが際立つ。
 ちなみにキャリア序盤は30%を超えたことがなく、蹴り込む力だけでなく近年はテクニックも身につけていることがわかる。


 ただ、パントの能力が高いだけならエンターテイナーとは呼べない。キングのもう一つの魅力はいいパントを蹴った後のセレブレーションだ。
 NFLの選手がTDを決めた後にダンスやメッセージを込めたゼスチャーでセレブレーションをするのはおなじみだ。しかし、Pとなるとセレブレーションをする選手はほとんどいない。キングのほかにはコルツのパット・マカフィーくらいか。


 そもそもパントは攻撃権の放棄であるから、オフェンスの観点からは喜んでいる場合ではない。それでも陣地を大きく回復するという目的を果たした時、Pはセレブレーションで自己アピールするのだ。


 キングのセレブレーションは試合ごとに異なる。なぜなら、対戦相手を意識したものになるからだ。
 地区ライバルのブロンコスと対戦した時は暴れ馬を操るカウボーイを演じ、パンサーズ戦では相手のスターQBキャム・ニュートンのTDセレブレーションを真似た。
 相手チームやファンの心理を逆なでする行為とも見られがちだが、本人いわく「相手をばかにするつもりはなく、試合をおもしろく盛り上げたいだけ」なのだそうだ。


 時には行き過ぎた行為もある。第13週のビルズ戦の終盤に、キング自身が相手選手にボールを蹴った後にぶつかられる「ラフィング・ザ・キッカー」を受けた場面があった。レイダーズは15ヤードとファーストダウンを獲得してオフェンスの継続となる。


 キングはオフィシャルが投げたイエローフラッグを拾い上げて、コミカルなダンスをした後、それを再びフィールドへと投げ捨てた。これがアンスポーツマンライクコンダクトとみなされ、今度はレイダーズがペナルティーを受けることになる。
 ファーストダウン25ヤードとなったレイダーズは結局このオフェンスでもパントを蹴ることになった。


 試合も残り2分余りで、14点差をつけてリードしていた試合だったのでダメージはなかったが、これから迎えることになるであろうポストシーズンではご法度の行為だ。キングも反省しきりだったという。


 この話はこれで終わらない。キングがダンスをしている時、ビルズのDBニッケル・ロビーコールマンがそれを指さしてオフィシャルに訴えているシーンがテレビに映し出された。
 キングは自身のSNSでロビー-コールマンを名指しして「オフシャルに告げ口した」と不満を述べたのだ。どこまで本気で反省しているのか疑問に思うのだが、これも彼一流のユーモアなのかもしれない。


 レイダーズの大躍進は今季のNFLを盛り上げる話題の一つだ。ペイトリオッツと並ぶAFCトップの成績ではあるが、地区ライバルのチーフス(9勝3敗)やブロンコス(8勝4敗)も好調で予断を許さない。
 それでも久しぶりの「強いレイダーズ」はプレーオフで注目の存在だ。そして、その大舞台でもキングのパントセレブレーションをぜひ見てみたいものだ。

【写真】第14週のチーフス戦でパントを蹴るレイダーズのPキング(AP=共同)