アメリカンフットボールにおけるマッチアップで、最も華やかでドラマチックなものはWRとCBの対決だろう。NFLの試合でも頻繁にクローズアップされる。


 今季、ほぼすべての試合で相手チームのトップWRとのマッチアップが注目されているのが、レッドスキンズのCBジョシュ・ノーマンだ。
 第12週のサンクスギビングデーでは、カウボーイズのWRデズ・ブライアントとの勝負が幾度となく繰り広げられた。最後にはお互いのフェイスマスクをつかみ合って小競り合いに発展する後味の悪いものとなったが、注目に値する好勝負を見せてくれた。


 好調のレッドスキンズのディフェンスの一角を担うノーマンだが、現地メディアの評価は辛口だ。というのも、彼はこのオフに5年間で総額7500万ドルという大型契約で入団したからだ。
 過大評価との論調が主流で、これに同調したブライアントは、皮肉を込めてメディアに向かって「レッドスキンズはノーマンから金を返してもらうべきだ」とまくし立てた。


 ノーマンが一気にブレークしたのはパンサーズに在籍していた昨シーズンだ。自己最多の4インターセプトを記録し、チームのスーパーボウル出場に貢献した。
 相手のエースレシーバーを封じる、いわゆる「シャットダウンCB」としての評価が高まり、昨年限りで契約が満期を迎えることになっていたためフリーエージェント市場の目玉ともされた。


 当初パンサーズは慰留するべく、高年俸を約束する代わりに独占交渉権を認めさせるフランチャイズ指定をノーマンに行使した。
 しかし、後になってパンサーズはこれを撤回。ノーマンは急きょフリーエージェントとなって複数のチームの獲得競争が始まったのである。


 そうした経緯を経てノーマンを獲得したのがレッドスキンズだったのだが、一方で過熱する契約交渉を疑問視する声もあった。
 ノーマンが活躍できたのはディフェンスにタレントがそろうパンサーズだからこそで、他のチームに移籍して同じプレーができる保証はないという評価だ。


 確かにパンサーズはLBルーク・キークリー、トーマス・デービス、DTケイワン・ショートらを擁し、相手オフェンスを悩ませる。
 だが、裏を返せばその中でも目立ったノーマンはやはりトップクラスのディフェンダーなのだという解釈も可能なわけで、レッドスキンズはそれに賭けたとも言える。


 その真価が今季問われているのだが、WRとCBのマッチアップは勝ち負けの判断が難しい。第12週はブライアントに5回のパスキャッチで72ヤードを許したが、TDキャッチは防いだ。
 第2週の同じカードではやはりTDは許さなかったものの7キャッチ、102ヤードの活躍をされてしまった。


 もちろんブライアントのすべてのプレーでノーマンがカバーしているわけではないが、チームのトップCBとしてその責任は重い。


 全ての試合でエースレシーバーと対峙するため、さすがに相手を完全に封じるということは不可能だ。その意味でノーマンは全盛期のダレル・リービス(現ジェッツ)やフィジカルなプレーで知られるリチャード・シャーマン(シーホークス)の域には達していない。
 それでも、ノーマンの存在感を知らしめるゲームもあった。


 シーズンの折り返しとなる第8週、レッドスキンズはロンドンでベンガルズと対戦した。ノーマンのマッチアップの相手はA・Jグリーンだ。
 キャッチがうまいだけではなく強靭さもあり、タックルを外してランアフターキャッチでゲインすることのできるNFL屈指のレシーバーである。


 結論から言うとこの日のノーマンはグリーンに5回のパスキャッチで、最長40ヤードを含む計76ヤードのゲインを許す。
 それだけではなく、フェイスマスクに手をかけてしまうなど5回もの反則を取られてしまう。散々な結果だ。おまけに脚を痛めて、しばらくはサイドラインで治療を受けなければならなかった。


 ところが、この治療の間がかえってノーマンの存在感を浮き立たせたのだ。ベンガルズのQBアンディ・ダルトンはグリーンをカバーする控えCBを狙い撃ちし、いとも簡単にパスを通した。
 数プレー後にノーマンが復帰すると、ダルトンは再びほかのレシーバーにボールを集めるようになった。明らかにダルトンはノーマンを警戒していた。QBに警戒心を抱かせるCBは貴重な存在だ。


 この試合でのノーマンは最もユニフォームが汚れた選手の一人だった。それだけ懸命にグリーンをカバーしていたのだ。まさにボロボロの状態で肩で息をするシーンも映し出されたが、その姿はむしろ感動的ですらあった。
 もっとも、試合後に反則を多く取られたことで審判を名指しで批判した態度は褒められたものではなかったが。


 ノーマンがオーバーレイテッド(過大評価)されていることについては同意する部分がある。相手を挑発したり、審判を批判したりする態度も好ましくない。
 しかし、ベンガルズ戦で必死にグリーンに追いすがるノーマンの姿が脳裏に焼き付いているので、筆者は彼を嫌いになれない。

【写真】試合中にらみ合うレッドスキンズのCBノーマン(左)とカウボーイズのWRブライアント(AP=共同)