NFLオークランド・レイダーズの勢いが止まらない。第9週には地区ライバルであり、スーパーボウル王者であるブロンコスを破り、7勝2敗でAFC西地区の単独首位に立った。
 AFCではペイトリオッツ(7勝1敗)に次ぐ好成績で、暫定のプレーオフシード順位は2位である。


 2002年シーズンのスーパーボウルでバッカニアーズに敗れた後、プレーオフ出場はおろか勝ち越しのシーズンすらないレイダーズだが、いよいよその低迷期にも終止符が打たれそうだ。
 ファンには心強いデータがある。レイダーズは今季ロードゲームで5連勝中だ。これは現行プレーオフ制度が導入された1990年以降で46例目だという。そして、過去45チームはすべてプレーオフに進出している。
 データ通りならレイダーズはポストシーズンへの切符をほぼ手中にしたも同然だ。


 今季の躍進は予想通りだ。過去数年にわたりドラフトで着実に人材を集め、足りないところをフリーエージェントで補うという理想的なチーム作りをしてきたからだ。なかでも1巡指名のDEカリル・マック、WRアマリ・クーパーらはチームの中心選手となった。
 そして、重要なQBにデレク・カーという人材を得たこともチームが上昇気流に乗った大きな理由だ。


 カーは2014年にドラフト2巡で指名を受けた。ブレイク・ボートルズ(ジャガーズ)、ジョニー・マンゼル(前ブラウンズ)、テディ・ブリッジウォーター(バイキングズ)らと同期だが、通算勝利数17は今季欠場中ブリッジウォーターと同数で他の二人を大きく上回る。すでに1巡指名の3人をしのぐ成長を遂げているといっていいだろう。
 ちなみに2002年に誕生したテキサンズの全体1位指名で、初代先発QBとなったデービッド・カーは12歳差の実兄だ。


 カーの魅力は肩の強さを生かした思い切りのいいプレースタイルだ。パスの試投数はNFL最多の354回で、積極的にパスを投げていることがわかる。
 成功率も66.1%でキャリアベスト。17のTDパスに対して被インターセプトは三つしかない(数字はいずれも第9週終了現在)。


 第8週のバッカニアーズ戦では、オーバータイムを含む数字であるもののパスで513ヤード、4TDを記録した。
 1試合で500ヤードを超えるパッシング、4TD以上をマークしながら被インターセプトがなかったのはY・Aティトル(ジャイアンツ、1962年)、ベン・ロスリスバーガー(スティーラーズ、2014年)に続き史上わずか3人目だ。


 フィールド上はもちろん、ロッカールームやサイドラインでもリーダーシップも発揮し、チームメートの信頼も厚いという。それを物語るエピソードがある。


 レイダーズオフェンスには、OTを有資格レシーバーに申請してTDパスのターゲットにするプレーがある。もちろん練習でも行うのだが、ベテランのOTドナルド・ペンがターゲットとなるプレーでカーはちょっとしたいたずらをするらしい。


 ペンが巨体をゆすってエンドゾーンを駆け抜けるのを見て、カーはわざとQBキープでTDをしてしまう。ペンにしてみれば「お前が走るのかよ」と突っ込みたくなる場面だ。
 カーなりのベテランいじりである。何度か繰り返されるとさすがにペンもあきれ、肩で息をしながら「勝手にしろ」とつぶやくのだそうだ。


 そして、このプレーを実戦で使う時がやってきた。第8週のバッカニアーズ戦の第4Qのことだ。ゴール前1ヤードでファーストダウンのプレー。ペンは有資格レシーバーとして右TEにセットし、スナップと同時にエンドゾーンを右方向に走る。
 カーはランのフェイクをした後、これも右にブーツレッグする。リプレーではカーの進行方向にいるディフェンダーはフェイクにつられて出遅れ、TDランのチャンスに見える。しかし、カーはあえてペンにパスを投げ、見事にTDパスを成功させたのだった。キャッチしたペンは「どうだ」と言わんばかりに腕を組んで仁王立ちした。


 実はこれにはカーの意図があった。ペンは2013年シーズン後にバッカニアーズを解雇された経緯がある。ビジネスと割り切っていてもやはり解雇はショックだったとペンは述べている。そんな彼にとってこの試合はタンパへの「凱旋」なのである。


 カーは言う。「ドナルドにTDパスを投げることができてよかった。もちろん試合に勝つことが最優先だけれど、古巣のタンパでのTDパスキャッチは彼も喜んでくれたよ。」
 こうした粋な計らいは、ペンのみならずチームメートの心をつかむ。誰もがカーをリーダーとして認めるようになる。チームに良好なケミストリーが生まれる瞬間だ。


 シーズン後半に向けて、レイダーズは最も注目すべきチームの一つだ。今後は地区優勝やプレーオフに向けて徐々にプレッシャーがかかっていく。
 この時期に前半と同様に勝ち進むことができれば、長く続いた低迷を脱することができるだろう。今後の戦いはレイダーズの将来を左右するものになる。

【写真】第8週のバッカニアーズ戦でパスを投げるレイダーズのエースQBデレク・カー(AP=共同)