NFLのNFC北地区の首位を走るバイキングズ(5勝2敗)に激震が走った。ノーブ・ターナー攻撃コーディネーターが突然の辞任を申し出たのだ。


 オフェンスの不調なチームでコーディネーターが解雇される例は珍しくない。確かにバイキングズのオフェンスはラン攻撃がリーグ31位、パスは最下位、総合も31位と振るわない。それでもシーズン中に辞任するのは異例だ。
 ましてやチームは2連敗中とはいえ、カンファレンス2位の成績だ。オフェンスの責任者の退団は考えにくい。


 マイク・ジマーHCにターナー氏が辞任を申し出たのは11月2日(水)の朝だったという。マンデーナイトゲームでベアーズに敗れ、練習がオフの火曜日を挟んでチーム活動が再開した矢先だった。
 ジマーHCは「ただただ驚いている。彼にはオフェンスについてほぼ100パーセント任せていた。オフェンスについて私が提案することはあっても、彼の意に反することを求めたことはない」と戸惑いを隠せない。


 ターナー氏は、ジマーHCが2014年にHCに指名された際に真っ先に招聘された人物で、両者の間に確執は伝えられていなかった。それはターナー氏自身も否定している。
 ターナー氏は「とても難しい決断だった。ジマーは尊敬に値するコーチだ。関係が悪化して退団するとは思ってほしくない。ただ、環境が私に合わなくなったのだ」とコメントしている。


 選手たちにとっても寝耳に水だったようで、QBサム・ブラッドフォードはニュースを見た夫人の電話で初めて知ったという。後任にはパット・シャーマーTEコーチが代行として就き、プレーコールを担当する。
 ターナー氏は辞任の理由について詳細を語っていない。健康上の理由は明確に否定し、引退の意思もないという。そのため、いろんな憶測が飛び交う。


 その一つはカレッジのHCに転身するというものだ。カレッジフットボールのシーズンは間もなく終了し、12月にはHC人事が大きく動く。この頃のNFLはシーズン終盤で、プレーオフ進出を懸けた戦いが本格化する時期だ。
 好調のバイキングズはポストシーズンに向けて準備を進めているはずで、コーチングスタッフはカレッジ界からのオファーを受けにくい。


 現状、ターナー氏にカレッジのHC就任の噂はない。また、長くNFLでコーチ生活を送ってきたターナー氏が不慣れなカレッジ界に足を踏み入れることは考えにくい。
 やはり、現在のバイキングズオフェンスの方向性に違和感を持ったのだろうか。


 ターナー氏は有能なRBを中心としたラン攻撃とダウンフィールドを積極的に攻めるパスオフェンスをミックスさせたスタイルを得意とする。
 1990年代初めにカウボーイズの攻撃コーディネーターとしてスーパーボウル連覇に貢献した時も、チャージャーズのHCとしてリーグトップクラスのオフェンスを構築した時もこの方針が成功につながった。


 エイドリアン・ピーターソンはまさにターナーのスキームにフィットしたRBで、昨年はチームが地区優勝、ピーターソンもリーディングラッシャーに輝くなど素晴らしい結果を残した。
 ところが今季はピーターソンが第2週に半月板を損傷して戦列離脱中。今季中に復帰できる見込みだが、その時期はまだ未定だ。


 現在のRBマット・アシアタとジェリック・マキノンはピーターソンほどの突破力はない。オフェンスの基本スタイルもブラッドフォードのショートパスを中心とした組み立てになり、それが序盤の連勝の大きな要因となった。ただし、これはターナー氏の得意なオフェンスではない。


 バイキングズの中には来季、年俸の高いピーターソンを放出して、ランに頼らないオフェンスに転換しようとする動きがあると伝えられたことがある。
 来年はテディ・ブリッジウォーターがQBとして復帰する予定だが、ブラッドフォードでバイキングズがプレーオフを勝ち進むようなことがあれば、来季の先発の座がブリッジウォーターに約束される保証はなくなる。


 そこで鍵を握るのがシャーマー・コーチだ。彼は昨年までイーグルスでオフェンスのアシスタントコーチを務めていた。
 昨季のイーグルスはチップ・ケリー現49ersHCの好むテンポの速いオフェンスを展開した。チーム成績こそ7勝9敗(ケリーはシーズン途中で解任)と振るわなかったが、このスタイルでキャリア最高の数字を残したのがブラッドフォードだったのだ。


 バイキングズのオフェンスが、アップテンポなパスオフェンスに転換しようとする動きにターナー氏が反発したとすれば今回の辞任もうなずける。
 いずれにせよ、バイキングズはシーズン半ばにして大きな局面を迎えた。今後、ライオンズと2回、好調のレッドスキンズ、カウボーイズとの対戦が予定されている中で停滞は許されない。


 ターナー氏の辞任が、チームにネガティブな影響を及ぼさないようにする必要がある。ジマーHCがこの事態をどのように打開するか、注目だ。

【写真】バイキングズの攻撃コーディネーターを突然辞任したノーブ・ターナー氏(AP=共同)