NFL32チームの中で21世紀に入ってから一度もプレーオフに進んでいないチームが一つだけある。バファロー・ビルズだ。


 ビルズといえば1990~93年シーズンまで4年連続でスーパーボウルに出場し、いずれも敗れた悲劇のチームとして記憶されているファンも多いだろう。
 裏を返せばカンファレンス4連覇という、スーパーボウル開始以来例のない快挙なのだが、どうしても敗者の歴史として記憶に刻まれている。


 そのビルズが今年は4勝2敗と健闘し、17年ぶりのポストシーズン進出に期待を抱かせている。開幕2連敗した時は「ことしもダメか」という空気が流れたが、その後は一転して4連勝した。
 第4週には新人QBジャコビー・ブリセットを先発させたペイトリオッツに16―0で完封勝ち。ペイトリオッツは今でもこれが今季唯一の黒星だ。翌週には好調のラムズを倒して、俄然注目を集めている。


 快進撃の理由はアグレッシブなディフェンスが功を奏していることと、オフェンスがラン中心のものへと方針転換したことだ。


 昨年就任したレックス・ライアンHCは3―4守備隊形からブリッツを多用するスタイルを得意とする。守備の名将と言われた父・故バディ・ライアン氏から受け継いだお家芸だ。
 昨年はマリオ・ウィリアムズらがこのスタイルになじめず、ディフェンスは低迷。選手とコーチの間で不協和音が生じた。


 オフにはこうした不満分子を放出する一方で、双子の弟であるロブ氏をアシスタントコーチとして参入させた。
 ロブ氏自身も昨年はセインツの守備コーディネーターをシーズン途中で解雇されるなど結果を出せなかったのだが、現在のビルズの選手構成は「ライアン家」のスタイルに合っているようだ。


 プロ11年目のベテランLBロレンゾ・アレキサンダーはその最たる例だろう。昨年までほとんどが控えとして出場する選手だったが、ビルズに移籍して開花した。
 第6週終了現在で8.0サックはリーグトップである。チーム全体では計20サックで、ブロンコスの21に次ぐリーグ2位。ターンオーバー率(ターンオーバー獲得と喪失の差)は+8で、これもバイキングズに続くリーグ2位の成績だ。


 一方、オフェンスはRBルショーン・マッコイを核としたラン攻撃が武器だ。0勝2敗のスタートのあと、ライアンHCはグレッグ・ローマン攻撃コーディネーターをあっさりと解任した。
 実はこうした開幕直後のゴタゴタが失望感を呼んだのだったが、むしろこれはいい方向に向くきっかけとなった。


 ライアンは後任の攻撃コーディネーターにアンソニー・リンRBコーチを充てた。ライアンHCはもともとラン中心のオフェンスを好む。その意向を受けてリンはランファースト、それもチーム最高のプレーメーカーであるマッコイにボールを集めるという、わかりやすいオフェンスを構築しているのだ。
 これはパスがそれほど得意ではないQBタイロッド・テイラーの負担を減らす効果にもつながっている。


 強いディフェンスで相手のオフェンスを止め、ランでボールと時間をコントロールする。シンプルだが、フットボールでは普遍の勝ちパターンだ。


 ビルズが最後にプレーオフに出場したのは1999年シーズンだ。ワイルドカードでタイタンズと対戦したビルズは残り16秒でFGによって16―15とリードを奪う。誰もがビルズの勝ちを予想したが、直後のキックオフでタイタンズがプレーオフ史に残るトリックプレーを見せた。
 キックされたボールをキャッチしたロレンツォ・ニールはそのままボールをフランク・ワイチェックにハンドオフ。次にワイチェックは左方向にラテラルパスを投げ、それをケビン・ダイソンがキャッチ。カバーチームがノーマークだったため、ダイソンはそのままリターンTDを決めてタイタンズが劇的な逆転勝利を収めたのだった。


 このプレーは「ザ・ラテラル」とも、また、開催地であったテネシー州ナッシュビルが音楽の街として知られているため「ミュージックシティー・ミラクル」とも呼ばれ、今でも語り草となっている。
 この年はNFLでインスタントリプレーによるレビューが再導入されたシーズンでもあった。このラテラルパスもフォーワードパスではないかと、レビューの対象になったが、判定が覆ることはなかった。


 ナッシュビルの奇跡はバファローの悪夢となり、その「呪い」は長年ビルズを悩ませてきた。その低迷期に終止符は打たれるのか。
 ペイトリオッツとの再戦を含めベンガルズ、レイダーズ、シーホークス、スティーラーズとの対戦が控える後半をいかに戦うか。今後のビルズに注目である。

【写真】49ers守備陣のタックルをかわして好走するビルズRBマッコイ(AP=共同)