意外と言っては失礼かもしれないが、ラムズが3試合を終えてNFC西地区の首位に立った。開幕こそ49ersに0―28と完封負けしたが、その後はシーホークス、バッカニアーズに連勝。シーホークスと同率ながら直接対決で勝っているので暫定1位だ。


 22年ぶりのロサンゼルスでの公式戦となった第2週のシーホークス戦では、公称で9万1000人を超えるファンが集まった。それだけLA市民がプロフットボールの回帰を待ち望んでいた証だ。
 ファンの次なる願いは、今年のドラフト全体1位指名のQBジャレッド・ゴフの登場だろう。「新生ラムズ」のフランチャイズQBとなる期待を背負って入団したゴフだが、これまでのところ公式戦の出場はない。


 開幕週は左肩の故障の影響もあって3番手QBだったが、翌週からはバックアップに昇格し、スタイルしてサイドラインに立つ。すなわち、先発のケース・キーナムが負傷するか、長期の不振に陥ればゴフの投入があるということだ。


 「LAラムズ」としての再出発の記念すべき開幕QBに指名されたキーナムだが、彼がそのままスターターでい続ける可能性は低い。いずれはゴフにその座を受け渡すのが既定路線だからだ。キーナムが先発ポジションを守るためには結果を出し続けるしかない。


 最初の2試合はTDなしだったが、バッカニアーズ戦は激しい点の取り合いで昨年の1位指名のジェーミス・ウィンストンに勝った。
 QBの最大の仕事はチームに勝利を呼び込むことだから、その意味ではキーナムは責任を果たしている。


 しかし、内容を見るとやはりNFLトップクラスのQBと比肩できるレベルではない。パスのタッチは柔らかいのだが、ロングパスのコントロールが定まらず、ボールを長く持ちすぎる傾向もある。こうしたプレーが出てしまうたびにゴフの存在がクローズアップされる。
 ただし、ジェフ・フィッシャーHCはゴフ投入を急がない姿勢だ。そこにはプレシーズンでのゴフの不調が関係しているかもしれない。


 カリフォルニア大学で数々のパッシング記録を塗り替えてきたゴフだが、常にショットガン隊形からパスを繰り出したカレッジ時代とは違い、NFLではアンダーセンターからドロップバックしながらフィールドを読むテクニックが要求される。プレシーズンを見る限り、この点でゴフは苦しんでいるようだ。


 4人のラッシュでプロテクションに余裕があるときはきれいなスパイラルのパスを投げるのだが、予想外のブリッツが入った時にはサックを受けてしまう。
 さらに、NFLのQBの水準に比べて手が小さいためか、ファンブルが多い。これは大学時代から指摘されていたゴフの欠点の一つだ。
 普段の練習でこうした苦手分野での進歩がみられるまで、フィッシャーはファンの期待をあえて裏切り続けるだろう。


 皮肉なことに、ゴフのあとにドラフト指名された新人QBたちが次々に先発出場を果たしている。2番目指名のカーソン・ウェンツは落ち着いたクオーターバッキングでイーグルスを開幕3連勝に導いている。
 カウボーイズでは4巡指名のダック・プレスコット、ブラウンズでは3巡指名のコディ・ケスラー、ペイトリオッツでも3巡のジャコビー・ブリセットがすでにデビューした。


 もっとも、彼らの先発デビューはいずれもQBの故障が関わっている事実を忘れてはいけない。プレスコットはトニー・ロモの代役だし、ケスラーに先発が回ってきたのはロバート・グリフィン3世、ジョシュ・マカウンが最初の2週で相次いで故障したためだ。
 ブリセットにしても、トム・ブレイディの出場停止の間にスターターを任されたジミー・ガロッポロが負傷欠場を余儀なくされたことで出番が回ってきた。


 ある意味でウェンツもそうだ。バイキングズのテディ・ブリッジウオーターが膝のじん帯断裂で今季絶望となり、開幕先発予定だったサム・ブラッドフォードがその穴埋めとしてトレード移籍した。プレシーズンでは3番手だったウェンツが一気にスターターの座を与えられたのだった。


 フィッシャーもこうした状況を冷静に見ており、他チームが新人QBを起用するからといってそれに影響されるわけではない。
 2009年以降、ドラフトの全体1位で指名されたQBはゴフを含めて5人いる。ゴフ以外の4人はすべて新人でありながら開幕先発を務め、ブラッドフードを除く3選手が今でも指名されたチームの先発QBを務めている。


 最近の例に照らせばゴフの育成方針は異例だ。それだけ失敗のないように堅実に育成しようというのがラムズの方針なのだ。


 ゴフの登場を待ちわびる気持ちがある一方で、時期尚早な投入で失敗する姿は見たくない。チームには勝ち続けてほしいが、それではゴフのデビューが遅くなる。そんなジレンマをラムズファンは感じているに違いない。

【写真】バッカニアーズ戦で先発しチームを勝利に導いたラムズのQBキーナム(AP=共同)