NFLはいよいよ8日(日本時間9日)に2016年シーズンが開幕する。これから来年2月5日(同6日)にテキサス州ヒューストンで行われるスーパーボウルに向けた熱い戦いが繰り広げられる。
 8日は1試合だけの開催で、11日に13試合、12日に2試合が予定されており、全チームが初戦を迎える。


 開幕カードはパンサーズ@ブロンコスという昨季のスーパーボウルのリマッチだ。いきなりの好カードだが、状況は7カ月前の対戦時とは大きく異なる。
 王者ブロンコスはQBペイトン・マニングが引退し、その後継者と思われていたブロック・オスワイラーはフリーエージェント(FA)でテキサンズに移籍。ほとんど実戦経験のない2年目のトレバー・シーミアンが開幕先発を務める。


 パンサーズのスーパーアスリートQBキャム・ニュートンを封じ込めた自慢のディフェンスはDTマリック・ジャクソン、LBダニー・トレベイサンが退団。スーパーボウルMVPボン・ミラー、デマーカス・ウェアらは健在だが、新先発メンバーが昨年並みの守備力を発揮するまでには時間がかかるだろう。


 今季は有力選手が故障や出場停止処分のために欠場するチームが多いのが特徴だ。プレーオフ常連のペイトリオッツはQBトム・ブレイディが4試合の出場停止で、その間は2番手のジミー・ギャロッポロが司令塔を務める。


 もっとも、ペイトリオッツにとってブレイディの欠場はそれほど大きな痛手にならないだろう。ブレイディ不在で対戦するのはカージナルス、ドルフィンズ、テキサンズ、ビルズ。NFC優勝候補の一角であるカージナルス戦こそ厳しいが、他の3試合はブレイディ抜きでもペイトリオッツ有利とみられる。しかも、この3試合はすべて圧倒的に勝率の高いホーム開催だ。


 ブレイディの処分が決定してから十分な準備期間があったので、智将ビル・ベリチックが何の手も打たないはずがない。
 最初の4週を3勝1敗で乗り切る可能性は高く、悪くても2勝2敗の五分で行けばブレイディ復帰後にチームは上昇気流に乗れるだろう。


 AFCの優勝候補にも挙げられるスティーラーズは、複数の主力選手の欠場を克服する必要がある。成長株だったWRバータビアス・ブライアントが1年間の出場停止となったほか、エースRBレベオン・ベルも開幕から3試合の謹慎処分を受ける。
 さらにFAで獲得した期待のTEラダリアス・グリーン、パスラッシュLBバド・デュプリーが故障のためにシーズン前半は出場できない見込みだ。いきなり逆境でのスタートとなる。


 昨年NFC北地区を制したバイキングズはQBテディ・ブリッジウォーターが膝の靱帯断裂で今季絶望。今季はプレーオフで勝ち抜くべく補強を進めていただけに残念だ。
 そこでバイキングズは驚くべき手段に出た。イーグルスで今季先発予定だったQBサム・ブラッドフォードをトレードで獲得したのだ。


 交換条件は来年のドラフト1巡指名権である。ブラッドフォード自身も2010年のドラフト全体1位指名を受けた選手で、オクラホマ大学時代にはハイズマントロフィーも受賞している。
 しかし、NFL入りしてからは故障がちでラムズやイーグルスでもこれといった活躍はできていない。
しかも、来年にブリッジウォーターが復帰すればブラッドフォードはお払い箱だ。にもかかわらず貴重な1巡指名権を放出してまで獲得したのは、それだけバイキングズが今年にかけているということだ。


 今季は新球場U・Sバンクスタジアムがオープンする記念すべき年でもある。RBエイドリアン・ピーターソンも30歳を迎え、あと何年トップレベルでプレーできるか分からない。こうした事情がブラッドフォード獲得の裏にはある。


 イーグルスはこのトレードで得をした。ブラッドフォードとは今年のオフに2年の契約更新をしたばかり。さらにドラフトではカーソン・ウェンツを1巡で指名した。
 ウェンツはいずれフランチャイズQBとなるべき存在だが、先発候補が二人もいる状態だった。しかも、バックアップ要員でケース・ダニエルを獲得している。重要なポジションとはいえ、QBに過剰投資していた事実は否めない。


 こうした状況でのバイキングズとのトレード成立だ。ブラッドフォード放出により年俸を払う必要はなくなり、ウェンツへのポジション委譲もスムーズに行われた(もっとも、プレシーズンゲームで最も多く出場したダニエルはかなり面白くなかったそうだが)。おまけに1巡指名権の獲得である。今頃イーグルスのフロントはほくそ笑んでいるに違いない。


 ただし、ウェンツで勝てるか否かは別問題だ。運動能力が高いQBであるが、プレシーズンでは初戦に故障してから欠場していたため、ほとんど実戦経験を積んでいない。キャンプでは3番手扱いだったから、スターター陣との連携も不十分だ。不安材料は少なくない。


 開幕前の戦力を分析すると、AFCはペイトリオッツ、ベンガルズ、スティーラーズ、NFCではパッカーズ、パンサーズ、シーホークス、カージナルスといった最近のプレーオフの常連組はやはり安定している。こうしたチームがスーパーボウルを戦う有力候補だ。
 そこにどのようなチームが食い込んでくるか。得点力高いオフェンスを作ることに定評のあるアダム・ゲースを新HCに迎えたドルフィンズ、世代交代を図るレーベンズ、アンドルー・ラックの復活が鍵を握るコルツ、オスワイラーが新QBを務めるテキサンズ、ディフェンスが強いチーフス、そして、数年にわたる計画的な補強が実を結びつつあるレイダース。


 NFCはQBカーク・カズンズの覚醒で昨年の東地区優勝を手にしたレッドスキンズ、急速にオフェンス力をあげてきたバッカニアーズ、タレントぞろいのファルコンズといったところが注目だ。

【写真】イーグルスからバイキングズへトレードでの移籍が決まったQBブラッドフォード(AP=共同)