4週間で行われるNFLのプレシーズンゲームも3試合目に突入し、最初の2週間には限定的な出場だった先発メンバーも出場時間が増えて、最終的な調整に入る。
 新人やフリーエージェントで加入した新戦力の状況も把握し、9月の開幕へ機運が高まる。と言いたいところなのだが、必ずしもそうではないチームもある。チャージャーズだ。


 ドラフト1巡(全体の3番目)で指名したDEジョーイ・ボサとの契約がいまだに成立せず、依然としてチームに不参加だ。このままでは今季を全休する可能性もある。
 ボサとその代理人がチャージャーズとの契約を保留にしているのは、その内容に複数の不満があるためだとされる。最大の論点は契約金の額だ。チャージャーズは1700万ドルを提示し、さらにそのうちの85%を年内に、残りを来年3月までに支払う内容を提示した。これをボサ側は拒否している。


 チャージャーズによればこの額は過去2年のドラフトでは最高額だそうで、年俸との合計額でもイーグルスに全体2位指名で入団したQBカーソン・ウェンツに次ぐという。


 契約内容ではもう一つ問題がある。いわゆる「オフセット条項」だ。現在の労使協約では1巡で指名を受けた新人選手の契約は4年で、5年目についてはチーム側に行使の選択権がある。
 この4年間の年俸は保証されており、選手は契約途中でチームから解雇されても契約書に記された年俸の総額を受け取る権利がある。


 しかし、チームの中には解雇した選手が別の球団と新契約を交わした場合、選手に支払うべき保証年俸から新契約で定められた年俸分を差し引いて支払うという条件を契約に盛り込むところがある。これがオフセット条約である。


 選手がオフセット条項を受け入れれば、チームは年俸の支払いを減額できる可能性が出てくる。逆に拒否すれば、選手はNFLでの初契約から4年以内に移籍した場合に年俸が2重取りできるといううまみがある。もちろん、ボサはこのオフセット条項を拒否している。


 今年のドラフト1巡指名選手の中で、チームとの契約が成立していないのはボサだけだ。そして、事態はさらに悪化しようとしている。
 というのも、業を煮やしたチャージャーズがボサに提示した金額や、両者の歩み寄りがない理由についてメディアに暴露してしまったからだ。これでボサ側はさらに態度を硬化させ、現在はほぼ冷戦状態だという。


 言うまでもなく新人選手にとってトレーニングキャンプは重要だ。NFLのパワーやスピードに直に接する初の機会であるし、何よりも新しいシステムに慣れ、プレーブックを覚える貴重な時間でもあるからだ。ボサはすでにその時間を無駄にしている。


 万が一急転直下で一両日中にも契約がまとまったとしても、コンディションの状態やスキームへの認知度からして最後のプレシーズンゲームに出場するのは難しい。レギュラーシーズンも開幕戦に間に合わないケースも考えられる。
 これが現実となればチャージャーズは年俸総額を下げてくるだろう。ますますボサは首を縦に振らなくなる。悪循環だ。こうした醜聞は今のチャージャーズが最も恐れることだ。


 チャージャーズはフランチャイズを置くサンディエゴ市に対し、都市部に新しいスタジアム建設を要求し、チームの公式サイトではそのデザインを公表している。
 しかし、その財源確保のためには増税が必要で、市民の理解はなかなか得られていないと伝えられる。また、行政も巨額の公的資金投入と有権者の反感を買う増税には及び腰だ。
 こんな状況で明るみに出たボサとの契約問題はチームの評判を落とすだけだ。スタジアム建設にも影響を及ぼしかねない。


 チャージャーズは現行のクォルコムスタジアムの老朽化が進んでいるため、一時はレイダーズとの共用スタジアムを建設してロサンゼルスに移転する計画を立てた。
 しかし、同地区ライバルチームが同じ球場を使うのはどう考えても不自然であり、NFLオーナー会議で否決された。
 移転も不可、新スタジアムも財政難とあってはチャージャーズも行く先が見えない。ファンは開幕を心待ちにしているが、チャージャーズはそれどころではないというのが本音かもしれない。


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  このコラムが掲載された直後に、ボサはチャージャーズと4年契約をまとめ、練習にも合流した。


 ボサ自身は同地区ライバルのチーフスと敵地カンザスシティーで対戦する9月11日の開幕戦(日本時間12日)に出場する意欲を見せているが、トレーニングキャンプとプレシーズンゲームという貴重な練習機会を失った代償は大きく、マイク・マッコイHCは起用に慎重な姿勢を示している。


 チャージャーズはプレシーズンゲームをあと1試合残しているが、ボサの出場予定はなく、レギュラーシーズンでいきなり実戦を迎えることになる。

【写真】5月の新人トレーニングキャンプに参加したチャージャーズのドラフト1巡指名DEジョーイ・ボサ(AP=共同)