今季はドルフィンズ(アダム・ゲイス)、ブラウンズ(ヒュー・ジャクソン)、タイタンズ(マイク・ムラーキー=昨季途中の代行から留任))、イーグルス(ダグ・ペダーソン)、ジャイアンツ(ベン・マカドゥー)、バッカニアーズ(ダーク・コーター)、49ers(チップ・ケリー)で新HCが誕生した。


 カレッジからの登用が皆無なのは、近年の失敗例に学んだ結果だろう。そして、すべてがオフェンス畑出身であるのも昨今の攻撃主導型の潮流を象徴するものだ。
 なかでもあからさまにチームの方針転換でHC交代劇が起こったのはバッカニアーズだ。前任のラビー・スミスHCが2シーズンで解雇され、攻撃コーディネーターだったコーターが昇格した。


 スミスは2004年から9年間ベアーズで指揮を執り、2006年シーズンにはスーパーボウルに導いた実績あるコーチだ。専門はディフェンスで、師匠のトニー・ダンジーのアシスタントとしてバッカニアーズでLBコーチを務めていたこともある。
 ラトガース大学から鳴り物入りでHCに就任したグレッグ・シアーノが結果を出せないまま辞任した後、低迷するチームの再建を託すべき人物として招かれた。


 スミスの2年間の成績は計8勝24敗で職を失っても不思議ではない。しかし、昨季終了直後の解任は驚くべきニュースとして伝わった。
 なぜなら、新人QBジェーミス・ウィンストンをドラフト全体1位で獲得したばかりで、彼の育成を考えればチーム方針の転換を伴う可能性の高いHC交代は望ましくないからだ。


 ところが、オーナーであるグレイザー一家はそうは考えなかった。その理由もやはりウィンストンだった。
 ウィンストンは開幕戦から先発QBを務め、実戦経験を積みながら順調な成長を見せた。新人として史上3人目の4000ヤードパスを記録、バッカニアーズのフランチャイズQBとしての期待を膨らませるに十分な成績を残した。


 オフェンスではほかにもRBダグ・マーティンがエイドリアン・ピーターソンに次ぐリーグ2位のラッシングをマークし、WRマイク・エバンスは初の1200ヤードを達成した。1試合平均のオフェンスに獲得距離は375.9ヤードでチーム新記録だった。


 グレイザー一家はこのオフェンスの躍進をチャンスと判断した。かつてディフェンスの強いチームとして名をはせたバッカニアーズだが、現在の戦力ではオフェンス型のチームに変貌を遂げる方が近道だと考えたのだ。
 しかし、外部から招へいではオフェンスシステムが変わって、ウィンストンの成長の妨げになるかもしれない。内部昇格ならば、変化は最小限に抑えられる。こうした思考の結果がコーターへの指揮権委譲だったのだ。


 コーターという人物はなじみが薄いかもしれない。カレッジでの指導歴が長く、NFLに転向したのは2007年で、これまでジャガーズ、ファルコンズ、バッカニアーズで攻撃コーディネーターを務めてきた。
 ファルコンズではQBマット・ライアンとWRフリオ・ジョーンズのホットラインを確立した。
 ただし、13勝3敗という好成績を残した2012年のファルコンズ以外は、チームが特筆すべき成績を残していない。もちろん、当時のコーターはアシスタントコーチという立場なので責任を追及されるべきではないが、実績という点ではファンには物足りないだろう。


 バッカニアーズは、チーム史上唯一のスーパーボウルタイトル(2002年)をもたらしたジョン・グルーデンHCが2008年シーズンを最後に解任されてから、一度も勝ち越しのシーズンを経験していない。過去5年間はNFC南地区の最下位に甘んじている。


 オフェンスにそろったタレントを生かしたチーム作りという方向性は間違っていない。あとはコーターが正しいかじ取りをすることができるかだ。
 ルーキーHCの手腕はチームだけでなく、ウィンストンの今後の成長にも大きな影響を与える。重要なシーズンが間もなく始まる。

【写真】攻撃コーディネーターから内部昇格したバッカニアーズのコーター新HC(AP=共同)