NFLは華やかな世界だ。選手は子供たちの憧れであり、アイドルだ。他のプロスポーツがうらやむ人気と資金があり、一つひとつの試合で凝った演出が行われる。
 試合ごとに新調されるユニフォーム、きらびやかな衣装のチアリーダー。そのすべてがNFLを象徴するものだ。


 しかし、その華やかな世界に身を置くことのできるものはごくわずかの期間である。それを享受するには相応の能力と努力、そして運が必要とされる。そこをはき違えると道を誤ることになる。その最たる例が、鳴り物入りでNFL入りしたQBジョニー・マンゼルだ。
 マンゼルは贅沢を追求し、プロ選手という立場を忘れた。その結果、彼は所属するチームを追われて失職中だ。


 マンゼルはテキサス農工大在籍中の2012年に、史上初めて1年生で最高選手賞である「ハイズマントロフィー」を受賞した。
 身体能力を存分に生かしたプレースタイルでファンを魅了し、「ジョニー・フットボール」のニックネームで呼ばれた。


 2014年にドラフト1巡でブラウンズが指名した時、本拠地クリーブランドは熱狂した。マンゼルに低迷を続ける老舗チームの救世主の姿を見たのだ。


 しかし、それが幻だったことが露見するまでにさほどの時間はかからなかった。
 入団直後からマンゼルはSNSを賑わすようになる。札束を両手に持つ姿やシャンパンをラッパ飲みする写真が次々とネット上に掲載され、「パーティー三昧」の印象が付きまとうようになる。


 それでもブラウンズは辛抱強くマンゼルを育成した。ルーキーイヤーはシーズン終盤に先発のチャンスをもらうが、故障もあって勝ち星はなし。
 その反省から2年目のオフには心を入れ替えてフットボールに専念すると宣言し、アルコール中毒のカウンセリング施設に自ら入って治療を受けるなどしてブラウンズとファンを期待させた。


 その期待が裏切られたのは昨年の第11週のバイウィークだった。1週間の休養期間を前にマイク・ペティンHC(当時)はマンゼルを呼び出し、行動には気を付けるようにとわざわざ釘を刺した。
 マンゼルはチームに迷惑をかけるようなことはしないと約束したが、その舌の根も乾かぬうちにパーティーで騒ぐ彼の姿がSNS上に流失したのだ。


 この時点でブラウンズとペティンの堪忍袋の緒は切れた。バイウィークの前の2試合で先発を務めたマンゼルは控えに降格した。
 しかし、スターターに復帰したばかりのジョシュ・マッカウンが鎖骨骨折で戦列を離れたため、ブラウンズには再びマンゼルを先発起用する以外に選択肢がなかった。
 戒めのための降格処分を撤回しなければならなかったブラウンズは、マンゼルがフィールドに立つ度に恥の上塗りをさせられたも同然だ。


 昨季の終了とともに、マンゼルはブラウンズから契約を解除された。この時点ではまだマンゼルにも他のチームから声がかかる機会がないとは言えなかった。
 しかし、直後にNFLから4試合の出場停止処分が下された。昨年に発覚した交際相手への暴力行為が問題視されたのだ。


 事実上、マンゼルのNFL復帰への道は閉ざされたと言っていいだろう。フットボール選手としての能力は高くても、素行の悪さのためにそれが生かされないのでは意味がない。
 そして、彼の覚醒を信じて契約しても4試合を棒に振ることが確実なのだ。よほどの物好きでなければ契約書を用意しない。


 NFL選手が華やかさを享受できるのは、実績に対する評価を得たのちである。きらびやかさのみを求めたマンゼルにはそれがわからなかった。
 それが彼の人格によるものなのか未熟さによるものなのか。いずれにせよ、彼が払う代償は大きなものとなった。そしてNFLもまた、貴重な人材を埋もれさせてしまったのは残念な限りだ。

【写真】昨年11月のベンガルズ戦で、敗れて引き揚げるブラウンズのQBマンゼル=シンシナティ(AP=共同)