今年のNFLドラフトは4月28日から3日間の日程でシカゴで行われ、計253選手が指名を受けた。
 今季から本拠地をロサンゼルスに再移転するラムズは、予想通り全体1位指名権をQBジャレッド・ゴフ(カリフォルニア大)に行使した。ゴフは新生ラムズの開幕先発の期待がかかる。


 もう一人の注目QB カーソン・ウェンツ(ノースダコタ州立大)は、これも予想通りイーグルスから指名を受けた。
 1巡ではさらにブロンコスが26番目指名でメンフィス大のQBパクストン・リンチを獲得した。昨季のスーパーボウルチャンピオンは「ポスト・マニング」時代を新人QBにゆだねることになりそうだ。


 今年のドラフトの全体を眺めて抱く感想は、良くも悪くもネット社会を反映したものだということだ。その闇に飲みこまれたのはミシシッピー大学のOTレアミー・タンシルだ。
 タンシルは今年のドラフト候補生の中でトップクラスの逸材と評価され、それぞれ1、2位指名権をトレードで譲渡する前のタイタンズやブラウンズが指名してもおかしくないタレントだった。


 しかし、ドラフト初日当日になってタンシルがガスマスクを着用し、フラスコから煙を吸引している画像が流出した。煙はマリファナであると報じられている。
 さらに、タンシルが大学関係者に金銭を求めているとされる文書が同じ日に公開され、一大スキャンダルとなった。後者の件はミシシッピー大学とNCAAが調査に乗り出すことになっている。


 NFLは選手の素行を重視する。高額な年俸を払う選手が、違法行為やリーグからの出場停止処分によりプレーできなくなる事態を避けたいからだ。
 それだけに事前の身辺調査や面談に時間を割く。今回のタンシルの件は事前には発覚しなかったものだった。


 タンシルによれば、上記の2件は彼が利用していた別々のSNSがハッキングされ、違法に流出したものだという。インターネットとSNSがこれほど普及する以前には想像もできなかった事態だ。
 結果的にタンシルは1巡13番目でドルフィンズに指名された。これでも十分に上位指名を受けたといえるのだが、ドラフト前に予測されたトップ5指名に比べれば最初の契約で手にする金額は1000万ドルは目減りしたと試算されている。


 インターネットを巧みに利用して成功した選手もいる。バイキングズから6巡指名を受けたWRモリツ・ボーリンガーだ。
 ドイツ人のボーリンガーはアメリカの大学でのプレー経験はなく、ヨーロッパのリーグ出身でドラフト指名された史上初の選手となった。


 一般に合衆国外の選手はスカウトの目が届きにくく、有能なエージェントもつかないためにドラフトでは不利だとされる。
 しかし、ボーリンガーは自分のハイライトシーンを動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開することで自分をアピールした。


 ハイライトビデオを作成してそれをチームに送付するというのは以前からよくあるやり方だ。特に高校の選手は自分のプレー集を大学に送り付け、関心を得ようとする。それをネットを介して行ったところに現代らしさがある。


 動画サイトは再生された回数が表示されるから、それが多ければスカウトも見るがあると思うだろう。これもビデオテープやDVDといったメディアにはない、ネットならではの宣伝方法だ。
 今後、この方法を使う米国外選手はますます増えるだろう。そして、これは日本人選手にも有効な手段だ。
 自分のプレーや身体能力テストを録画してまとめ、それを動画投稿サイトにアップする。そのURLを国内リーグはもちろん、NFLやCFL、ヨーロッパのリーグにメールで送るだけでいいのだ。ボーリンガーがロースター入りして活躍できれば、米国外のアメフット選手への門戸を大きく広げることになる。


 今年のオフにはジャガーズの大型補強が目立つが、ドラフトでもそれは同じでディフェンスを中心に選手を集めた。
 ディフェンスが弱点のジャガーズとしてはピンポイントの補強策で、高い評価を受けている。早くも今年のプレーオフ候補に挙げる評論家もいるが、それはキャンプやプレシーズンを見てみないと判断できない。


 同様に補強に躍起となったのがブラウンズだ。指名が下位のチームに順位を譲る代わりに指名権を余分にもらって増やすトレードダウンを繰り返し、指名した選手はなんと14人。ほぼ2年分の選手を1回のドラフトで獲得したことになる。
 もちろんこの14人すべてがロースターに残るとは考えにくいが、幅広く人材を集めて有能な選手を発掘するのは、長く低迷しているブラウンズには有効な手段かもしれない。


 ドラフトの成否の答えは短期では出ない。今年のドラフトからどんな選手が台頭し、どのように活躍するのか、長期的視野で見守りたい。

【写真】ラムズから全体1位指名を受けたQBゴフ(AP=共同)