NFLは全米で絶大な人気を誇る安定したプロリーグであるにもかかわらず、毎年大きなルール変更を行う。今週もフロリダ州ボカラトンで開催された会議でいくつかの新ルールが決定した。


 注目すべきは「アンスポーツマンライクコンダクト」を1試合で2度行った選手が即退場になるという新ルールだ。
 サッカーでいうところのイエローカードの累積に近い。ただし、イエローカードとは違い、反則の実績は次戦に持ち越されることはなく、退場も反則を行った試合に限られる。


 また、アンスポーツマンライクコンダクトの反則のすべてが累積の対象となるわけではなく、殴打やキックなどの暴力行為、暴言、トーンティングなど悪質で故意のものに限定される。


 もう一つの特徴的なルール変更は、キックオフがタッチバックとなった際のオフェンスのスタートラインだ。従来の自陣20ヤードから25ヤードに変更される。
 これは故障の多いキックオフ時の選手の安全性を高めるのが目的だ。リターンチームはより有利になったタッチバックを選びやすくなり、エンドゾーンからのリターンは減る可能性がある。


 その反面、キッキングチームがエンドゾーンに蹴り込むことを避けるようになるのではないかとの懸念もある。
 ボールをあえてエンドゾーンより手前に落としてカバーチームがリターナーをタックルすれば、相手の攻撃開始地点を25ヤードより後方に抑えることができる。パントのように滞空時間の長いキックを蹴れば十分に可能だ。
 この場合はコンタクトプレーが避けられないため、安全面強化というルール変更の前提が崩れることになる。


 上記の反則(アンスポーツマンライクコンダクト限定)累積による退場とキックオフがタッチバックとなった後のボールが置かれる位置の新ルールは、1年の試行期間が設けられる限定ルールである。
 2016年シーズンを通して実験的に施行され、来年のNFL会議で検証されて、恒常的なルールとして採用するか否かを協議する。


 ちなみに昨季話題となったエキストラポイントのキック位置の変更も1年限定の実験的施行だった。今年のNFL会議でこのルールが今後も継続して採用されることが決まり、恒常的ルールとなった。
 

 さらに、限定的に認められてきたチョップブロックは全面的に廃止される。これはディフェンス選手にとっては朗報だ。
 すでにブロッカーと対峙している時に、足元に別の選手が突っ込んでくるという恐怖から解放されるからだ。これにより、ディフェンス選手の負傷が減るとNFLは期待している。
 ロジャー・グッデル氏がコミッショナーに就任した2006年以降、NFLは選手の安全面強化に腐心し、数々のルール変更を行ってきた。


 ファンや選手の一部からはコンタクトスポーツの醍醐味がなくなったとの不満の声も聞かれるが、脳しんとうや脊髄の損傷など生涯にわたって後遺症の残る危険のある負傷を避けるためには仕方のないことだろう。


 その一方で、QBやWRなどを故障から守るルールを新設、または適用が徹底されたためディフェンスが不利になったとの見方もある。それは、オフェンスが高得点をあげるという現在の傾向の一因にもなっている。
 フットボールにおけるルール変更は多くの場合、選手の安全面と競技の面白さの両天秤だ。どちらかが重視されれば、天秤は傾く。安全面に向けて大きく傾斜しているのが現状だ。


 ファンはそれを受け入れるだけだが、ルールに縛られる選手やチームはそうはいかない。ルールをしっかりと把握し、その中で自分たちに有利な戦術を組まなければいけない。


 タッチバック後のボール位置の変更はキックオフのセオリーを変える可能性がある。チョップブロックの廃止は、カットブロックからのランを多用するチームにはブロッキングテクニックの見直しを意味する。
 こうしたルール変更に応じた戦術づくりにもチーム首脳陣の能力の差が表れるものだ。大きなルール変更が頻繁に行われるNFLでは対応力も重要なのである。

【写真】会議の後、記者の質問に答えるロジャー・グッデルNFLコミッショナー(AP=共同)