「マニングは本当に引退するの?」
 第50回スーパーボウルが終わってからの1週間、何度この質問を投げかけられただろう。もちろん、優勝したブロンコスのQBペイトン・マニングのことだ。


 今年で40歳を迎えるマニングは、2015年シーズンを最後にユニフォームを脱ぐのではないかと噂されている。
 スーパーボウル直前の報道も、マニングの引退を前提にしたものが多く見られた。そして、リーグ制覇という最高の形で身を引くことが有終の美であり、彼の輝かしいNFLキャリアの幕引きとして最もふさわしいものであるはずだ。


 ただ、現在のところマニングは自身の去就について沈黙を保ったままだ。
 スーパーボウル制覇とともに引退したスター選手は過去にもいる。スティーラーズのRBジェローム・ベティスは、生まれ故郷のデトロイトで行われた第40回スーパーボウルで優勝し、直後のセレモニーで正式に引退を発表した。
 レーベンズLBレイ・ルイスは2012年シーズンのプレーオフ中にシーズン限りでの引退を表明。それに奮起したチームメートが12季ぶりの王座奪回という花道で彼を送り出したのだった。


 一方で、引退の決断まで時間をかけた選手も少なくない。シングルシーズンのQBサック数でNFL記録(22.5)を保持するマイケル・ストレイハン(ジャイアンツ)は、2007年シーズンのスーパーボウルで勝ったあと、4カ月後に引退を発表した。
 そして、現ブロンコスのGMジョン・エルウェーも、1998年の優勝の後、引退宣言まで2カ月を要した。


 引退の決断にはさまざまな要素が複雑に絡み合う。本人は体力の限界と現役続行への執着のはざまで悩む。NFL選手は周囲が感じるほど自身の限界を自覚していない場合が多いものだ。


 ビジネスの面からはもっと生臭い問題が見え隠れする。決断が遅れれば遅れるほどチームの補強計画に影響を及ぼし、さらに契約の自動更新やロースターボーナス(既定の期日まで在籍することで支払われる功労金)が発生して球団経営を圧迫するからだ。
 マニングも例外ではない。2016年のリーグ“新年度”が始まる3月9日にマニングが在籍していた場合、2012年に結んだ5年契約の最終年が有効となり、1900万ドルの年俸支払い義務がブロンコスに生じる。


 これだけの金額をマニング一人に払うことになれば、スーパーボウルMVPのLBボン・ミラー、スーパーボウルでファンブルリカバーによるTDを挙げたDTマリック・ジャクソンら2015年限りで契約の切れる選手との再契約が難しくなる。
 そればかりではない。やはり契約切れでフリーエージェントとなるQBブロック・オスワイラーとの契約延長問題にも影響するのだ。


 マニングが現役続行を決意すれば、来季も控えで開幕を迎える可能性のあるオスワイラーに多額の金額は払えない。かと言って、マニングの健康状態に不安がある中で、先発として5勝2敗の実績を積んだオスワイラーを手放すわけにはいかない。マニングよりもむしろオスワイラーの方がブロンコスの長期プランには合致するのだから。


 チーム経営の見地から、ブロンコスとしてはマニングに引退してもらうほうが都合がいいというのが本音だろう。もしくは双方の合意のもとに契約を打ち切って移籍の自由を与えたい。
 全盛期の面影はないにせよ、マニングを欲しがるチームは皆無ではない。レシーバーやOLの人材次第では7、8勝をもたらすことも可能だろう。


 冒頭の質問に答えるとしたら「わからない」としか言いようがない。それでも筆者の見解を求められるなら、やはり引退するべきだと考える。
 チーム構想を乱してまで現役続行を決断するのはマニングらしくないし、威力のなくなったパスを無理に投げる姿は痛々しい。NFL史に残る名パサーだけに晩節を汚す姿は見たくない。

【写真】スーパーボウルでパスを投げるブロンコスのQBマニング(AP=共同)