第50回スーパーボウルはカリフォルニア州サンタクララで現地時間2月7日午後3時40分ごろ(日本時間8日午前8時40分ごろ)にキックオフを迎える。
 「40分ごろ」と曖昧なのは試合開始前に国歌斉唱など多くのセレモニーがあるからだ。日本ではNHK―BS1と日本テレビ系CS放送G+が生中継する。


 AFC代表は8度目の出場で3度目の優勝を狙うブロンコスだ。1998~99年シーズンにスーパーボウル連覇を果たして引退したQBジョン・エルウェー氏が2011年にチームの経営に参入。実質的なGM(正式には一昨年に就任)としてFAを中心にチームを作ってきた。


 QBペイトン・マニングもその方針によって入団した一人だ。2013年シーズンは強力なパッシングオフェンスでスーパーボウルに出場したが、シーホークスの鉄壁ディフェンスの前に大敗した。
 今季はけがで1カ月以上の戦列離脱を余儀なくされ、バックアップに降格という憂き目も見た。このスーパーボウルが彼にとってNFL最後の試合になることが濃厚だ。


 かつてのエルウェー氏は自らがオフェンスを牽引するQBとしての限界を悟り、周りの選手を生かす歯車の一つに徹することでリーグ制覇の悲願を達成した。それと同じ道をマニングもまた歩もうとしている。


 12年ぶり2度目の出場となるパンサーズは15勝1敗でプレーオフ第1シードを獲得、そのままNFCを制した。MVP最有力候補であるQBキャム・ニュートンやLBルーク・キークリーに代表されるタレント集団だ。


 しかし、個々の運動能力に頼った試合をするのではなく、それが攻守のスキームの中で生かされていることに今季の強さがある。
 ブロンコスとは違い、ドラフト指名による生え抜きの選手が多い。しかも、現HCロン・リベラ体制になった2011年以降の指名選手が多く、彼の方針のもとに選手が集められ、そうした選手が成長した結果が現在の姿だ。


 ニュートンのTD後のパフォーマンスが象徴するように、チームの雰囲気は明るく陽気だ。プレーオフの大舞台でもそれは変わることがなく、先行逃げ切りというシーズン中に幾度も繰り返してきた「勝ちパターン」をそのまま遂行してきた。
 スーパーボウルはその緊張感に選手が本来の力を出せないケースがあるが、パンサーズにとってその心配はなさそうだ。


 現地ではスーパーボウルウイークが開幕。チームはカンファレンス決勝後の1週間でゲームプランを完成させ、開催地に入ってからはそのゲームプランに沿ったプレーの精度を上げることに専念する。どんなプラン、秘策が飛び出すのか、楽しみだ。
 そんなスーパーボウルの見どころとして、試合を左右する可能性のあるポイントをいくつか挙げておこう。


 ▽ニュートンのラン
 ニュートンの脚力はこの試合の重要なポイントだ。パンサーズの勝敗はこれにかかっていると言ってもいい。ブロンコスの強力なパスラッシュをかわすにはニュートンのスクランブルは不可欠だ。
 セカンダリーがマンツーマンでカバーしている場合、QBはディフェンダーの視界から外れるため、フィールドの浅いゾーンに無警戒のエリアができる。ポケットから出てスペースを確保したニュートンは迷わず自分の足でその距離を稼ぐだろう。


 また、パンサーズはデザインされたプレーとしてもニュートンのランを使用する。特にゴール前では自らがボールを持ってエンドゾーンに走り込むプレーを多用する。
 ブロンコスはニュートンに対するコンテインを厚くしなければならない。MLBをQBに張り付かせる「スパイ」は有効だが、ILBブランドン・マーシャルとダニー・トレベイサンにとってスピードとパワーを持ちあわせたニュートンを一人でカバーするのは至難の業だ。
 そして、QBにばかり気をとられていると、自分の守備位置であるフィールド中央をエースTEグレッグ・オルセンによって攻められてしまう。SやCBも活用したバリエーションあるランサポートが必要だ。


 ▽マニングのパス
 明らかにマニングのパスは全盛期のものではない。それが年齢からくる体力の限界なのか、首の故障が影響してのものなのかは定かではないが、いずれにせよパスのスピードとコントロールはかつてのマニングの姿とは大きく異なる。
 特に10ヤードを超えるパスは、いわゆる「お辞儀をする」かのように失速する。今季被インターセプトが多いのはこれが理由だ。


 そして、プレーオフで気になったのはマニングのパスの投げる方向だ。フィールドの中央やインパターンのパスは多く成功させているが、サイドライン際やレシーバーがアウトサイドに向かうパスはオーバースローやコントロールミスが目立った。
 サイドラインやアウトパターンのパスはQBから距離があり、さらにレシーバーがどんどん遠ざかっていくだけに難しい。


 特にNFLではディフェンダーによるパスカットやインターセプトを避けるためにアウトサイドショルダーを狙うなどピンポイントのコントロールが要求される。
 マニングはむしろこうしたコントロールに長けたQBであり、エンドゾーンの最も深いコーナーぎりぎりに落とすパスでTDをとることができた。それが鳴りをひそめている。ゴール前の攻撃でアウトサイドへのパスが使えないと得点を重ねるのは苦しい。


 ▽RBロニー・ヒルマンのファンブル
 今季からラン中心に転じたブロンコスオフェンスだが、シーズン終盤でRBヒルマンが活躍する場面が目立った。今ではC・Jアンダーソンを抑えてスターターとして扱われている。
 しかし、この選手はファンブル癖があり、ジョン・フォックス前HCはそのために彼をベンチに下げたこともあった。今季の三つを含み、4年間のキャリアで計8のファンブル。NFLの先発RBとしては多すぎる。
 幸いにプレーオフでは犯していないが、リーグ最多の39ターンオーバーを誘発したパンサーズに対しては細心の注意が必要だ。


 ▽クロックコントロール
 パンサーズは今季NFLで最も多く得点した(500)チームだ。オフェンスのみならず、ディフェンスもリターンTDで点を取ることができる。プレーオフでは前半に得点を重ねてリードを奪い、試合の主導権を握った。対ブロンコスでもこの戦い方は変わらない。


 しかし、今季のブロンコスはランによって時間をコントロールできる。パンサーズは大量得点したいが、その時間を与えられない可能性がある。
 2007年シーズンのスーパーボウルではレギュラーシーズンで全勝したペイトリオッツが有利とされたが、対するジャイアンツがオープニングドライブで10分もの時間を消費した。このドライブはFGで終わったものの、ペイトリオッツは貴重な時間を使われ、結果的に敗れてパーフェクトシーズンはならなかった。
 これと同じ展開をブロンコスが実行できれば、試合はロースコアでの接戦となり、パンサーズの優位性は崩れる。


 いよいよNFLは2015年シーズンのグランドフィナーレを迎える。マニングはエルウェー氏と同様に勝って引退という最高のシナリオを描けるか。
 機動力を駆使するモバイル系QBはスーパーボウルで勝てないという、これまでの流れをニュートンが変えるのか。注目の王座決定戦はもうすぐだ。

【写真】第50回スーパーボウルの会場となるリーバイススタジアム(AP=共同)