今季は7チームでヘッドコーチ(HC)が交替し、新たなスタートを切る。ファルコンズのダン・クィン以外は全員、過去に代行を含むNFLでのHC経験がある。チーム再建を願うオーナーたちがフレッシュな顔ぶれよりも、NFLでの経験を重視した結果だと言える。


 その例がベアーズの新HCとなるジョン・フォックスだ。フォックスは昨年まで4年間ブロンコスで指揮を執り、いずれのシーズンもチームを地区優勝に導いた。
 しかし、ジョン・エルウェーGMとのチーム運営方針に差異が生じたため昨季限りで退団。その直後にベアーズが契約を打診して就任が決まった。


 フォックスHCはパンサーズ、ブロンコスで急速にチーム再建を達成した手腕が評価されている。いずれのチームでもスーパーボウル出場を果たしており、異なる2チームをスーパーボウルに導いた史上6人目のHCでもある。ただし、優勝経験はない。


 過去8シーズンで7度もプレーオフを逃しているベアーズは、フォックスに立て直しを委ねた。ディフェンス畑出身のフォックスは強い守備で知られたベアーズの復活を目指す。


 打倒ペイトリオッツに異様な執念を燃やすレックス・ライアンHCはジェッツからビルズへの「移籍」だ。ライアンは昨季限りでジェッツを解雇されたが、同じ地区のビルズとすぐに契約し、敵視するペイトリオッツとビル・ベリチックHC打倒を虎視眈々と狙う。


 ビルズは昨季、9勝7敗と10年ぶりの勝ち越しを果たしたにもかかわらず、ダグ・マローンHCが突然の辞任。せっかくの上昇気流を滞らせないためにもNFL、それもAFC東地区を熟知するライアンの指導が必要だった。
 ライアンの持ち味は、その強烈なリーダーシップとアグレッシブなディフェンスの構築だ。ビルズはディフェンスにタレントがそろっており、ライアンの就任はベストマッチだろう。


 ジェッツはライアンの後任にトッド・ボウルズを招聘した。ボウルズは昨年までカージナルスの守備コーディネーターを務め、ディフェンスの改善に大きく貢献があった。昨季新設されたアシスタントコーチ・オブ・ザ・イヤーの初代受賞者でもある。


 ボウルズはいきなりチーム内の問題に直面した。開幕先発が予定されたQBジーノ・スミスがLBのIK・エネムクパリに殴られてあごを骨折。シーズン序盤を欠場する見込みとなった。エネムクパリは即日解雇され、なんとライアンのビルズに拾われた。
 ロッカールームでのアクシデントはチームに悪影響を及ぼしかねない。ボウルズは開幕への準備を進めながら、このトラブルを平穏に収束させなければならない。


 ブロンコスはかつてチームで攻撃コーディネーターとしてスーパーボウル優勝に貢献したゲイリー・キュービアクをHCとして呼び戻した。キュービアクは現役時代にブロンコスでエルウェーのバックアップQBだった。
 引退後はマイク・シャナハンに師事して49ersのQBコーチとなる。シャナハンのブロンコスHC就任に同行する形で攻撃コーディネーターとなり、1997―98年シーズンのリーグ制覇で名を挙げた。


 80年代後半から90年代半ばまでのブロンコスは、言ってしまえばエルウェーのワンマンチームだった。しかし、年齢や度重なる故障でエルウェーの持ち味であった機動力と鋭いパスは鳴りをひそめていった。
 そんな中、シャナハンとキュービアクはOLのカットブロックを土台としたラン攻撃の構築に着手する。6巡指名のRBテレル・デービスを開花させ、彼のランをオフェンスの中心に据え、エルウェーの負担を減らしていった。いや、むしろエルウェーにはオフェンスの中の歯車の一つとして働くように、その影響力を弱めていったのだ。


 それが功を奏した。97年シーズンには、それまで4度の挑戦で一度も勝てなかったスーパーボウルでの優勝を果たし、翌年には史上7例目(当時)となる2連覇も達成したのだ。
 エルウェイはまさに同じ歴史が繰り返されることを期待している。依然としてリーグを代表する好パサーとはいえ、ペイトン・マニングも39歳。昨年終盤は脚の負傷が原因でパスのパフォーマンスが落ち、ディビジョナルプレーオフで敗退した。


 マニングだけに頼ってはスーパーボウルで勝てないと判断したエルウェーはかつての自分のように、マニングをオフェンスの歯車の一つとすることがいい結果を生むと信じている。それが吉と出るか凶と出るかは今季の大きな見どころの一つだ。


 レイダーズが再建を期待するのは元ジャガーズのHCジャック・デルリオだ。ただし、以前にこのコラムでも触れたように、デルリオはHCというよりは守備コーディネーターとして手腕を発揮する人物で、どれだけの結果を出せるかは不透明だ。
 もっとも、LBカリル・マックを中心にディフェンスには人材が集まりつつあり、守備を中心としたチーム再建の設計図は描きやすい。


 4年の就任期間中に49ersを3年連続でNFC決勝(うち一つはスーパーボウル出場)するほどの強豪に育て上げたジム・ハーボウは、母校ミシガン大学のHCになるべく退団。その後任となったのはDLコーチから昇格したジム・トムスーラだ。


 トムスーラの初年度は前途多難だ。RBフランク・ゴア、LBパトリック・ウィリス、アルドン・スミス、DEジャスティン・スミス、OLマイク・ユーパティらが移籍や引退、解雇などで次々と退団。いずれもハーボウ時代に主力として活躍した選手ばかりで、この穴を埋めるのは難しい。スーパーボウル3年連続出場を目論む同地区のシーホークスのライバルにはなりえない。


 ただ一人HC初経験のクィンは、シーホークス時代に培った「勝ち組」意識をファルコンズに導入したい。過去2年は負け越しに終わったものの、QBマット・ライアン、WRフリオ・ジョーンズ、ロディ・ホワイトといった主力は残っている。
 パンサーズが2連覇中とはいえ、団子状態のNFC南地区では十分に逆転のチャンスはある。


 新HCが就任1年目で好成績を残すのは簡単ではない。しかし、今年はビルズやブロンコスのようにタレントは豊富である程度整備されたチームに、コーチ歴豊富なベテランの指導者が就任するケースがある。すでにある基礎に、コーチのフィロソフィーが合致すれば躍進も期待できる。

【写真】今季からベアーズを指揮するジョン・フォックスHC(AP=共同)