NFLのトレーニングキャンプの注目点と言えばポジション争いだ。なかでも先発QBをめぐる争いはそのチームのシーズンを左右するほど重要である。


 今年もいくつものチームで激しい競争が繰り広げられている、と言いたいところなのだが、必ずしもそうではない。その人材で本当に大丈夫かと首をかしげたくなるようなチームが複数あるのだ。


 まずはジェッツ。今季から前カージナルスの守備コーディネーター、トッド・ボウルズ新ヘッドコーチ(HC)体制となった。QBは3年目のジーノ・スミスが先発予定だ。
 しかし、このスミスはパスのコントロールが悪く、過去2年の通算成績は25のTDパスに対して34の被インターセプト、パサーレイティングは71・5と、およそNFLでプレーオフを争うレベルではない。


 こうした場合、競争相手を獲得してポジション争いをさせることで技術の向上を図るのが普通だ。ジェッツはベテランのライアン・フィッツパトリックを獲得したにもかかわらず、早くからスミスを1番手に指名してキャンプインした。
 もちろん、キャンプやプレシーズンゲームを通じてフィッツパトリックがスミスを大きく上回る活躍をすれば先発交代はある。しかし、ジェッツはあくまでもスミスを開幕先発QBとする既定路線を維持する方針だ。


 QB育成に定評のあるチャン・ゲイリー攻撃コーディネーターの手腕に期待するところが大きいが、AFCイーストで圧倒的な力を持つペイトリッツに対抗できるQBが短期で育つとは考えにくい。
 そのジェッツの地区ライバルであるビルズも、2013年ドラフト1巡指名のEJマニュエルを正QBに育てるプランを立ててきたが、まだ成功していない。
 過去2年伸び悩んでいるマニュエルに対し、ペイトリオッツ、チーフスなどを渡り歩いたマット・キャセルを競争相手にあてがった。しかし、春のトレーニングセッションではキャセルが予想外に不振で意味をなさなかった。


 ブラウンズのQB戦略もちぐはぐだ。昨季はドラフト1巡でジョニー・マンゼルを指名。ところが、伏兵ブライアン・ホイヤーが先発として活躍してマンゼルはシーズン後半まで温存することとなった。
 プレーオフ争いからチームが脱落した時点で満を持してマンゼルを投入するも不調で、先発2試合目で故障してシーズンを棒に振った。


 今年はフリーエージェントとなったホイヤーを慰留せずに、ジョシュ・マッカウンを獲得。キャンプインの時点ではマッカウンが1番手、マンゼルはバックアップの扱いだ。
 このマッカウンはベアーズ時代の2013年に故障欠場のジェイ・カトラーに代わって8試合に出場し、100を超えるレイティングで活躍をした。それが認められて昨年はバッカニアーズの先発に抜擢されたのだが、レイティングは70台にまで落ち、スターターの器ではないことが露わとなった。


 こうしたチームがある一方で、熾烈なQB争いが期待されるチームもある。イーグルスは前年から残留するマーク・サンチェスとラムズからトレード移籍のサム・ブラッドフォードの競争だ。
 イーグルスは昨年の開幕先発ニック・フォールズをブラッドフォードとの交換トレードで放出し、新たな体制を築こうとしている。


 チップ・ケリーHCのアップテンポなオフェンスをすでに経験済みという点ではサンチェスが有利だが、1年を通じてコンスタントに活躍できるかは不明だ。
 ブラッドフォードはパスの能力に定評があるが、2年連続で膝の靱帯を断裂するというNFLのQBとしては前代未聞の負傷からの復帰を図る最中。過去に前例がないだけに、体調への懸念は付きまとう。


 テキサンズではホイヤーとライアン・マレットがしのぎを削る。実績と経験ではホイヤー、肩の強さと将来への期待度ではマレットが上回る。
 QBのポジション争いは、いつのシーズンでも最も注目される話題の一つだ。それだけフランチャイズQBと呼ばれる、長期に安定した活躍を見せる人材の確保が難しいということでもある。


 スムーズに世代交代をしたパッカーズ(ブレット・ファーブ~アーロン・ロジャース)やコルツ(ペイトン・マニング~アンドルー・ラック)などは稀有な例なのだ。
 フットボールはすべてのポジションがそれぞれの働きをすることで初めて機能するスポーツだ。それでもQBがチームの浮沈に与える影響は大きい。それだけに、このポジションの実力を向上させる育成方針や競争は、チームの成功のために不可欠なのだ。

【写真】テキサンズで先発QBの座を目指すブライアン・ホイヤー(AP=共同)