NFLがいよいよキャンプシーズンを迎える。7月下旬から8月中旬にかけて、各チームでスケジュールは若干異なるものの、約3週間にわたるトレーニングキャンプが行われる。
 その後、4試合のプレシーズンゲームを経て現地時間9月10日の試合を皮切りに2015年シーズンが開幕する。
 今季の開幕戦ではスーパーボウル王者のペイトリオッツが地元ジレットスタジアムにスティーラーズを迎える。


 NFLのキャンプでは最大90人の選手が参加できる。それが9月1日(現地時間)に75人に、その4日後にシーズン中のロースター上限枠である53人にまで減らされる。最終的に4割を超える選手が淘汰される厳しい競争だ。


 ヘッドコーチ(HC)たちは口をそろえて「キャンプでの競争は平等であり、誰にでもチャンスはある」と語るが、そんなことはない。選手の能力、ドラフト上位指名か否かなどによって最初から与えられるチャンスが違うというのが現実だ。
 最も多くの練習時間を与えられるのがファーストチームと呼ばれる、スターターとそれに準ずるメンバーだ。実際のシーズンはこのファーストチームを中心に戦うのだから、彼らに多くの時間を割かれるのは当然だ。


 このファーストチームの中でも激しいポジション争いが繰り広げられる。最も注目を浴びるのはQBだ。パッカーズ(アーロン・ロジャース)、スティーラーズ(ベン・ロスリスバーガー)のように不動のスタートQBがいるチームは、彼らを中心にファーストチームの練習が行われるが、ブラウンズ(ジョシュ・マッカウン、ジョニー・マンゼル)、イーグルス(サム・ブラッドフォード、マーク・サンチェス)ではファーストチームの練習と同時に競争が行われる。すべてのプレーが査定の対象で、その緊張感はHCによって先発QBが指名されるまで続く。


 新人選手の中でも上位指名を受けた選手と新人フリーエージェント(ドラフト外入団の選手)では最初から待遇が違う。
 1、2巡指名選手はファーストチームに参加することも少なくないが、6、7巡指名、ドラフト外の選手はまずスペシャルチーム要員に数えられる。


 これが意外と試練になる。ドラフトで上位指名を受けなかった選手でも、カレッジ時代はそれなりにスター街道を歩んできた者が多い。こうした選手は大学時代にスペシャルチームを経験していない場合があり、いきなりレベルの高いNFLで新たな役割に挑戦しなければいけないのだ。


 そして、こうした選手がオフェンスやディフェンスで練習をするときはセカンドチームに加わる。すなわち、控えの選手だけの練習になるわけだ。
 当然ファーストチームに比べてレベルが劣るし、オフェンスならエースQBと一緒にプレーする機会もない。セカンドチームは最終ロースターに残るギリギリの選手が多いから、すべてのポジション競争がサバイバルバトルだ。けがで数日間休もうものなら、自分の居場所はなくなると思った方がいい。


 もっと過酷なのはQBだ。キャンプでは最終ロースターに残る可能性のある2、3人のQBのほかに「キャンプアーム」と呼ばれる選手が参加する。野球でいうところのバッティングピッチャーのようなもので、レシーバーの練習台の役割を果たす。


 目覚ましい活躍をすれば彼らにもロースター残留のチャンスはあるが、それはあくまでも机上での話だ。実際にはプレシーズンゲームに出場する機会も稀で、首脳陣の目に留まることもない。


 過去に実績を積んだベテラン選手にとってキャンプは選手生命をかけた戦いの場だ。たとえば、コルツでペイトン・マニング、アンドルー・ラックとホットラインを形成したレジー・ウェインはこのオフにコルツから解雇された後、現在でも所属するチームがなくフリーエージェントのままだ。
 キャンプ中にレシーバーの人材が薄くなったチームから声がかかる可能性もあるが、このままシーズンインを迎えるようだと引退しか選択肢がなくなるかもしれない。


 NFLが激しい競争社会だと実感するのがトレーニングキャンプだ。プロフットボール選手としての栄光を享受することができるのは、この競争に勝ち抜いた者だけだ。

【写真】トレーニングキャンプでパスを投げるスティーラーズのQBロスリスバーガー(AP=共同)