ペイトリオッツが不正に空気圧を低くしたボールを使用した疑惑が持たれている、いわゆる「デフレートゲート」は、NFLの処分発表から1カ月以上が過ぎた6月下旬に、ロジャー・グッデル・コミッショナーによるヒアリングが行われた。


 これは開幕から4試合の出場停止処分を不服とするペイトリオッツのQBトム・ブレイディの異議申し立てをコミッショナー自らが聴くという会談だ。
 23日にニューヨークのNFL本部で行われたこのヒアリングは、約10時間に及ぶ長丁場となった。完全に非公開で、どのような話し合いが行われたかは明らかになっていない。


 また、このヒアリングを受けてブレイディの処分が軽減されるのか、または処分内容に変更はないのかもまだ発表されていない。 その決断にはしばらく時間がかかるとみられている。


 弁護士のテッド・ウェルズ氏がデフレートゲートを調査してまとめた報告書では、ペイトリオッツのチーム関係者二人が減圧行為に関与していたと断じ、その事実をブレイディも知っていた可能性が高いと述べている。
 この報告書を基にNFLは、ペイトリオッツに対しては100万ドルの罰金に加え、来年のドラフト1巡指名権、再来年の4巡指名権の剥奪、ブレイディには出場停止処分を科した。


 チームは罰則を受け入れる方針だが、ブレイディが身の潔白を主張したため今回のヒアリングが行われることになった。
 ブレイディはボールの減圧行為に無関係であることを証明しなければならず、無実を確実に証明する証拠が必要だ。


 一方のグッデル・コミッショナーも処分を正当化するだけの十分な説明が必要だ。ウェルズ氏の報告書には提示する証拠不十分であるとの批判もあり、それを覆すための材料を示さなければいけない。
 ブレイディを支援するNFL選手会は、リーグの処罰決定の過程を労使協約(CBA)違反であると抗議している。


 現行のCBAの規定では、処罰の決定権限はコミッショナーにのみ与えられている。今回の処分はNFL上級副社長の立場にあるトロイ・ビンセント氏(元イーグルスDB)から通達されたことに対する反発だ。
 グッデル・コミッショナーは「ビンセントから進言を得て私が結論を出し、彼に通達する権限を与えたもので、正当だ」と反論した。


 NFL選手会はビンセント氏の越権行為を責めることで、ブレイディの処分を無効とするのが狙いだが、これは論点がずれている。


 デフレートゲートで問題となっているのは、AFC決勝という重要な試合で不正行為が行われたと考えるに十分な証拠(実際に減圧されたボールが試合中に11個確認されている)があるからだ。
 そして、重要なことはこうした行為が恒常的に行われていたのか否か、ブレイディが違反行為を知っていて放置していたのか、またはブレイディ自身が指示を出して減圧させていたのかなどの疑惑をすべて明らかにすることだ。


 ウェルズ氏の報告書では減圧行為に関与した当事者同士のメールのやり取りが詳細に記されており、同様の違反が過去の試合でも行われていたように読み取れる箇所がある。
 ただ、残念ながら報告書はそれについては深く言及しておらず、調査そのものもAFC決勝以外の試合を対象としていない。これでは不正行為の全貌を明らかにしたとは言えない。


 ヒアリングを受けて世間の注目は、ブレイディの処分が軽減されるかどうかに集まっている。処分撤回となれば、ブレイディは形式上は潔白を証明したことになる。しかし、それでファンは納得するだろうか。


 軽減されるにせよ、出場停止処分がそのまま科せられればブレイディは訴訟を起こして法廷で無実を主張することになるだろう。
 この場合、係争中はNFLの処分は効力を持たないので、判決が出るまでブレイディは出場停止処分を受けずに済む。これもまたファンには不満の残るやり方だ。


 ブレイディはウェルズ氏の調査に対し、自分の携帯電話の通信記録など求められた証拠品の提出を拒んだ。身の潔白を証明したいのならば、これをすべて提示したうえで主張するべきだ。
 また、グッデル・コミッショナーも処罰が妥当であるとするならばその根拠を提示しなければいけない。その上で、デフレートゲートに関する疑惑の一つひとつを解明し、全容を明らかにする義務がNFLとペイトリオッツ、そしてブレイディにはある。


 ブレイディの処分は、このオフ最も注目に値する事案だ。しかし、論点はその処分の軽重ではなく、疑惑の全容解明にあることを忘れてはいけない。

【写真】コミッショナーによるヒアリングのため、NFL本部のあるニューヨークに到着したペイトリオッツのQBトム・ブレイディ(AP=共同)