第5回IFAFアメリカンフットボール世界選手権アメリカ大会(7月9日~18日・米オハイオ州カントン)に出場する日本代表の45人が発表された。
 最終ロースター締切りの7月8日(現地時間)まで故障者などによる入れ替えの可能性はあるものの、これが現在の日本アメフットが誇るナショナルチームだ。


 最終選考を前に日本代表候補チームは14日に富士通スタジアム川崎で、慶応大学の現役・OBにXリーグの選抜選手を加えた特別チーム「TEAM HOPE」を相手に壮行試合を行った。
 結果は攻守に圧倒した代表チームが58―0と圧勝。3大会ぶりの世界タイトル奪還に向けて幸先のいいスタートを切った形となった。


 TEAM HOPEには、仮想アメリカを意識してXリーグで活躍するアメリカ人選手が参加した。試合ではRBとして出場したイノケ・フナキ(エレコム神戸QB)、LBデービッド・モトゥ(パナソニック)、DEタイラー・オズボーン(エレコム神戸)、DBアルリワン・アディヤミ(富士通)、OLアーロン・カーブリー(BULLS)らだ。


 ただし、オフェンスのQBは日本人選手3人がローテーション出場し、フナキもスポットでのプレーにとどまるなど、アメリカチームで最も警戒するべきフィジカルなランプレーに対するシミュレーションは壮行試合ではできなかった。


 それでもレシーバーのキャッチ力の高さ、キッキングにおけるカバーチームの当たりの強さなど代表チームらしいプレーは随所に見られた。
 この日本代表チームの仕上がりを、対戦相手のヘッドコーチ(HC)であり、かつてリクルート・シーガルズ(現オービック・シーガルズ)を日本一に導いたデービッド・スタント現慶応大学HCにはどう映ったのか。


 壮行試合の後あいさつに行くと、スタントHCは「今日はこんな試合をして申し訳ない。もっとジャパンを追い詰める試合をしたかったんだ」といきなり切り出した。
 やはり寄せ集めのチームで短期間の練習時間しか与えられない条件下では思うようなチームが作れなかったようだ。


 「ディフェンスは何とかなる。でも、オフェンスには時間が必要。たった2日の練習では用意したプレーの3分の1も使えなかった」とスタントHCは嘆く。
 昨年慶応大学で指導したQB髙木翼(現オービック)の合流も試合前日だったそうだ。そんなスタントHCにジャパンの印象を聞いたとき、一瞬だけ彼の表情が曇った。


 「いいチームだとは思う。でも、ジャパンにはアウトスタンディング(特別に秀でた)な選手がいない。彼にボールを持たせればなんとかしてくれるという、例えばフロンティアーズ(富士通)のRBジーノ・ゴードンのような選手がいればいいと思う」とスタントHCは言う。
 「パスにしても、ワイドオープンになっているレシーバーへのパスがワンバウンドでインコンプリートになるのはいただけない。アメリカ相手ではこんなプレーは通用しない」と手厳しい。


 そんなスタントHCがディフェンスは高く評価した。「今日のジャパンはミスタックルがなかったんじゃないだろうか。特にファーストタックルは確実だった。相手が体格の大きい選手でもファーストタックルが成功すればほかの選手の助けも得てプレーを止めることはできる。これはアメリカでの指導でも重視されていること。それができているのは素晴らしい。そして、オープンスペースでの1対1のタックルでもミスがない。これは自分より体格の優れている選手と対戦するときにはとても大事なことだ。それが今のジャパンはできている」と彼は述べる。日本選手を長く指導しているからこそ分かるスタントHCの視点だろう。


 今回の世界選手権で日本は初戦に予定されていたカナダ戦が相手の棄権で不戦勝となり、自動的に所属する予選グループAの決勝戦への進出が決まった。
 決勝での対戦相手は7月9日(現地時間)に行われるアメリカ対メキシコ戦の勝者だが、実力差から言ってアメリカだと予想される。


この仮定における決勝でアメリカ戦に勝てばグループAの1位通過となり、順位決定トーナメントでは下位であるグループB(オーストラリア、韓国、ブラジル、フランス)の1位チームとの対戦で優勝決定戦進出を争う。
 この場合はほぼ間違いなく進出を決めるだろう。相手は再びアメリカ対メキシコ戦の勝者となり、アメリカとの再戦の可能性が高い。


 グループA決勝でアメリカに負ければグループ2位の扱いとなり、3位のメキシコ戦と順位決定トーナメントで決勝進出を争う。この試合に勝てば、決勝の相手はやはりアメリカである可能性が高い。


 初の地元開催とあって、アメリカの力の入れ具合は過去2大会の比ではないと伝えられる。それだけ3大会連続の優勝に向けて本気で臨むということだ。
 日本はアメリカと対戦するチャンスが最大で2回ある。打倒アメリカを標榜する日本にとってはこれ以上のチャンスはない。1勝すれば過去にない快挙となるだろう。


 しかし、目標はあくまでも世界選手権王座の奪回だ。そのためにはアメリカに2勝する心構えが必要で、それを実現するには壮行試合を含め、これまでの代表候補の練習での反省点を一つひとつクリアしていくことが最低条件だ。その意味で、スタントHCのジャパン評には耳を傾ける価値があるだろう。

【写真】日本代表の壮行試合で、相手チームを率いたデービッド・スタント慶大ヘッドコーチ