「チーム崩壊」というとあおりすぎの印象もあるが、今年のオフの49ersはまさにそう表現せざるを得ない状況だ。


 主力選手のチーム離脱が止まらない。先週、RTアンソニー・デービスがわずか25歳にして引退を発表。その翌日にはパンターのアンディ・リーがブラウンズにトレードされた。
 デービスは昨シーズンの脳しんとうが引退の理由だ。4試合欠場するきっかけになったこの脳しんとうのため、将来の健康に不安が生じ、ユニフォームを脱ぐ決意をした。2010年にドラフト1巡で指名され、チーム再建に貢献した一人だった。


 これで今年の2月以降だけでも49ersの引退者は4人目だ。7回のプロボウル選出、2回のオールプロ受賞を誇った名LBパトリック・ウィリスは脚の故障が癒えず、本来のプレーができなくなったとして引退を表明した。


 その後も2年目のLBクリス・ボーランドが健康状態を理由に、DLジャスティン・スミスが年齢のためNFL生活にピリオドを打った。いずれも主力として活躍した選手だけに、チームが受けるダメージは大きい。


 人材の流出は昨季終了直後に、チーム最高指揮官であるヘッドコーチ(HC)から始まった。過去4年間チームを率いたジム・ハーボウが母校のミシガン大学のHCとなるべく退団した。シーズン最終戦のわずか2日後の発表だった。


 ハーボウは名門復活を実現した立役者だ。就任1年目で49ersをNFC決勝にまで導いた。これは80年代から90年代半ばにかけて黄金時代を迎えたチームにとって9季ぶりのポストシーズン復帰だった。


 翌2012年は、シーズン途中からコリン・キャパニックを正QBに起用してスーパーボウルに出場。実兄ジョン・ハーボウがHCを務めるレーベンズに敗れたものの、49ersの復活を印象づけた。一昨年もNFC決勝に駒を進めたが、昨季は8勝8敗と後退し、プレーオフ出場を逃した。

 
ハーボウの後任にはDLコーチだったジム・トムスーラが内部昇格する形で就任した。チーム内からの人材登用は低迷期を脱したチームのいい流れを継続したいという狙いもあったのだろうが、トムスーラはいきなり大きな課題に直面することになった。フリーエージェントによる選手の流出だった。


 エースRBフランク・ゴア(コルツ)、先発OGマイク・ユーパティ(カージナルス)、キャパニックのメインターゲットだったWRマイケル・クラブツリー(レイダーズ)、ハードヒッターのCBペリッシュ・コックス(タイタンズ)が次々とチームを去り、49ersは一気に「再建モード」に突入したのである。


 逆にフリーエージェントで獲得できた選手にはRBレジー・ブッシュ、WRトリー・スミスらがいるが、引退を含め喪失した人材の影響の方が大きい。


 49ersは、同じ地区に過去2年連続でスーパーボウルに出場したシーホークス、進境著しいカージナルスが存在する。低迷しているとはいえ、ディフェンスの整備が進むラムズも上位進出の機会をうかがう。安穏としていられる事態ではなく、チーム再編が急がれる。


 トレーニングキャンプが始まるまであと1カ月余りとなった今、フリーエージェントやトレードで急速な補強をするのは現実的ではない。
 それだけの資金もないし、獲得可能な選手も多くはないからだ。現有の戦力を育てていくしか方法はない。


 逆に言えば、新人や昨季まで控えに甘んじていた選手にもチャンスが巡ってくるということだ。こうした選手がそれを自覚し、チャンスを生かせるかどうかが大切になる。
 現在のチーム状況は厳しい。しかし、それに目をそむけてしまっては低迷期に戻ってしまう。チームが一丸となってこの逆境にいかに立ち向かうか。今こそトムスーラをはじめとするチーム首脳陣の手腕が問われる。

【写真】49ersのエースQBコリン・キャパニック(AP=共同)