NFLでは現在Organized Team Activity(OTA)と呼ばれるチーム全体練習が行われている。春季に行われる短期集中練習で、ドラフトやFA、トレードで加入した新戦力の実力をはかったり、新ヘッドコーチ(HC)が自らの戦術をチームに導入したりする機会でもある。
 ただし、夏のトレーニングキャンプほどの強制力はなく、ベテランやまだ契約が完了していない選手は参加を免除されることが多い。


 今年もOTAの最大の話題はQBだ。ただし、ポジション争いというよりは復活をかけるQBに注目が集まる。
 2年目を迎えるジョニー・マンゼル(ブラウンズ)は、テキサス農工大時代、史上初めて1年生で全米大学最優秀選手に贈られる「ハイズマン・トロフィー」を受賞した逸材だ。
 しかし、昨季終盤につかんだ先発QBの座を白紙に戻されてしまい、第15週にようやく先発出場のチャンスを得た。


 それは、彼自身のみならずブラウンズファンが待ち望んでいた瞬間だった。しかし、被インターセプト2、3サックを喫するなど不調で、チームも地区ライバルのベンガルズに0―30で完封負け。翌週のパンサーズ戦では得意のランプレーを展開中にヒットを受けた際にハムストリングを痛めて途中退場し、最終週を待たずにシーズンエンドを迎えてしまった。


 このオフにブラウンズは、昨年の開幕先発を務めたブライアン・ホイヤーを慰留せず、35歳のベテラン、ジョシュ・マッカウンを獲得し、デプスチャートのトップに登録した。つまり、オフの時点で開幕先発の最有力がマッカウンで、マンゼルは2番手の扱いを受けるということだ。
 もちろん、トレーニングキャンプやプレシーズンゲームを経て正QBが決定されるのだが、マンゼルが昨季のわずかな出場機会でチームの信頼を勝ち取ることに失敗したことは事実だ。


 マンゼルの課題はパスだ。NFLでプレーする以上、ポケットの中で留まって正確なパスを投げる技術は不可欠だ。彼の持ち味である脚力はパスに対するプラスアルファの要素にはなっても、中心的な武器にはならない。それがNFLとカレッジの違いである。
 こうしたプロのスタイルをしっかりと習得することが先発の座を奪回する唯一の方法だ。


 レッドスキンズの「RG3」ことロバート・グリフィンⅢ世も復活を期する一人だ。2012年にNFLでは珍しいオプション型QBとして話題となり、リードオプションブームを巻き起こした。
 オフェンスの新人王に輝くほどの実績で、レッドスキンズをプレーオフに導いたが、そのプレーオフで膝の靱帯を切る重傷を負った。


 翌年は復帰を急ぎすぎたのか、ルーキーの時に見せたキレのいい動きは鳴りをひそめ、当時のマイク・シャナハンHCとの確執もあって、シーズン終盤には3番手に降格させられた。
 ジェイ・グルーデンを新HCに迎えた昨年は、ポケットパサーに転じて「ウェストコースト・オフェンス」に挑戦したが結果が出せず、完全復調は今年への課題と持ち越された。


 グリフィンは今季が正念場だ。それには理由がある。グリフィンは入団時にレッドスキンズと4年契約を結び、本来なら今季がその最終年にあたる。しかし、レッドスキンズはチームに選択権のある5年目の契約を行使。すなわち、グリフィンは2016年までチームとの契約下に置かれた。


 ところが、このオプションの5年目というのは、実は何の保証もされていない。レッドスキンズは来年のリーグ新年度開始日(来年の3月上旬)の前であれば5年目の契約を破棄できるのだ。唯一の例外は今季中に来季にまで影響を及ぼすような故障をグリフィンが負った場合で、この際には自動的に5年目の契約内容が保証される。


 つまり、グリフィンが今年も結果を出せなければ来年は解雇される可能性がある。逆に、成長を見せて先発QBとして安定すれば、レッドスキンズは5年目契約をそのまま生かすか、複数年契約を結び直せばいい。


 バイキングズからレイダーズに移籍したクリスチャン・ポンダーも、まだスターター復帰をあきらめたわけではない。2011年に1巡指名受けてバイキングズに入ったポンダーだが、期待に応えることができずに、昨年は新人で1巡指名のテディ・ブリッジウオーターにポジションを奪われた。
 移籍先のレイダーズではデレック・カーのバックアップという立場だが、カーが故障したり不振に陥ったりした時はチャンスが回ってくる。そのチャンスを生かせるかどうかは、ポンダーがNFLで生き残れるかどうかと同等の意味を持つ。


 OTAはトレーニングキャンプと違い、装備も軽めでフルコンタクトの練習はない。しかし、そこで展開されるポジション争いや生き残りをかけた戦いは決して易しいものではない。シーズンさながらの激しい競争が展開されているのだ。

【写真】春季短期集中練習に参加したブラウンズのQBジョニー・マンゼル(AP=共同)