NFLの最高決定機関にオーナー会議というものがある。年に数回開催され、ルールやリーグ運営方針について協議する。議決は32チームのオーナーの投票で行われる。


 春のオーナー会議ではルール改正が大きな議題だ。今年は5月18日から3日間の日程でカリフォルニア州サンフランシスコで開かれ、TD後のエキストラポイントのキックのボール位置が従来の2ヤードから15ヤードラインに下げられることが決定した。 


 従って、エキストラポイントのキックは32~33ヤードのFGと同じ距離を蹴ることになる。2ポイントコンバージョンを狙う場合はこれまでと同じゴール前2ヤードからの攻撃となり、TDをあげたチームはどちらかを選択することができる。


 また、新ルールではエキストラポイントの際にディフェンス側にも得点のチャンスが与えられる。キックの失敗やインターセプト、ファンブルなどのフリーボールをディフェンスが確保してエンドゾーンまで持ち込んだ場合に限り、2点が与えられる。
 エンドゾーンに届かなければその時点でボールデッドとなる。その後はキックオフによって試合が再開されるため、リターンによるボールの位置は次のプレーの開始地点とはならない。


 これまでのアメフットの形を大きく変えるルール変更だ。しかし、これには理由がある。NFLが明らかにしたデータでは、2ヤードラインからのエキストラポイントのキックは過去数年間で99%を超えるという。
 これについてNFLのロジャー・グッデル・コミッショナーは「あまりに自動的で意味がない」との考えを表明していた。そこで難易度を高めるためにボール位置を下げる案が議論されてきた。


 NFLはルール変更について意外なほど柔軟だ。最近ではキックオフの位置が自陣30ヤードから35ヤードに変更された。これはリターンゲームにおける選手のけがを少なくする目的だ。キック位置が前に進んだことにより、タッチバックが多くなった。


 エキストラポイントキックも過去に変更があった。NFLと旧AFLが合併した1970年からはエキストラポイントキックは1点しか与えられなかった。しかし、接戦を増やす目的で1994年にルールが改正され、2点コンバージョンが認められた。


 今でこそ野球やテニスでも一般的になったチャレンジの行使、いわゆる「インスタントリプレー」の導入も早かった。
 1985年にほかのスポーツに先駆けてビデオによる判定の検証が認められた。しかし、リプレーに時間がかかり、試合時間が長くなるとして1992年に廃止された。


 ところが、映像技術の進歩によって「誤審」が目立つようになり、それによって重要なプレーオフの結果が左右される事態が起きると、インスタントリプレー再導入論が湧き上がる。
 そして、チャレンジ失敗時にはタイムアウトを没収される、リプレーは最大90秒までなどといった制限を加えた新ルールという形で1999年に復活した。その後も毎年検証され、細かいルール変更を経て現在に至っている。


 NFLがルール変更に積極的なのは、競技をより面白く、スリリングにすることが目的だ。接戦の試合を増やし、チーム間格差を小さくすることで競争力を高め、勝敗予想を難しくする。結果的に劇的な展開の試合が増え、リーグ最大のコンテンツであるゲームそのものをより興味深くするのだ。


 野球やバスケットボールと違って、各チームが年間に16試合しかレギュラーシーズンゲームを行わないNFLだからこそ1試合に重みがある、それを魅力的にすることがリーグ運営の根幹なのである。
 NFLは諮問委員会として「競技委員会(Competition Committee)」を設置している。構成メンバーはヘッドコーチやGMら現場に深くかかわっている人材で、競技全般を監督する。NFLのルール変更にはこの競技委員会が大きな影響力を持つ。


 各チームはオーナー会議に先立ち、必要と考えるルール変更案を提出する。ちなみに今年のエキストラポイントのルール変更についてはペイトリオッツとイーグルスから提案があった。
 チームから寄せられた提案を検証するのが競技委員会だ。競技委員会は複数の提案を検証した上で、オーナー会議に諮るか否かの決定を下す権限を持ち、さらに独自のルール改正案を提案することもできる。これが正式にオーナー会議で審議される議案となる。


 NFLほどルール変更が頻繁に行われるプロリーグは他に例を見ない。これも全米でナンバーワンの人気を誇る理由の一つなのだろう。旧態依然の古い体制に固執する保守的なリーグには、まねのできない姿勢である。

【写真】サンフランシスコで開催されたオーナー会議で演説するグッデルNFLコミッショナー(AP=共同)