51年ぶりにシカゴに舞台を移したNFLドラフトは、3日間の日程の初日にあたる現地時間4月30日に1巡の指名が行われた。
 事前に噂されたようなベテラン選手を巻き込む大型トレードは起こらず、上位指名もほぼ予測通りで波乱のないものだった。


 全体1位のバッカニアーズは予想通りにフロリダ州立大学のQBジェーミス・ウィンストンを指名し、続くタイタンズがオレゴン大学のQBマーカス・マリオタを獲得した。
 ともに大学最優秀選手に贈られるハイズマン・トロフィーの受賞経験者で、こうした選手が全体1、2位で指名を受けたのは史上初めてのことだという。


 ともにカレッジで成功したQBだが、ウィンストンがプロタイプと呼ばれるポケットパサーなのに対し、マリオタはスプレッドオフェンスで育ったアスリートタイプだ。
 プロのスタイルへの順応性はウィンストンの方が高いと予測されているが、大学時代の婦女暴行疑惑、万引き騒動など素行でいくつかの問題を起こした点が懸念されている。


 素行には全く問題ないマリオタだが、Cの真後ろでスナップを受けるプレースタイルをほとんど経験しておらず、ドロップバックしてからのパスのセットアップが大きな課題だ。


 タイタンズの2位指名権にはイーグルスやブラウンズが大きな関心を寄せており、トレードの打診も実際にあったと伝えられる。イーグルスのHCチップ・ケリーは前オレゴン大学のHC。かつての教え子のマリオタを獲得して、スプレッドオフェンスの本格的な導入を図ったものと考えられる。
 また、タイタンズにはチャージャーズとのトレードでQBフィリップ・リバースを獲得するのではないかとの噂もあった。しかし、タイタンズは一切のトレード話になびくことなく、マリオタを将来のフランチャイズQBとして育成する決断をした。


 さて、NFLのオフの補強には前年に成功したチームのプレースタイルや流行の戦術などの影響が色濃く反映される。今年のドラフトも例外ではなかった。今年の第1巡の特徴はRBとOLが多く指名されたことだ。
 過去2年のドラフトでは1巡指名されることのなかったRBは、ラムズから10番目指名を受けたトッド・ガーリー(ジョージア大学)とチャージャーズがトレードアップして15番目で指名したメルビン・ゴードン(ウィスコンシン大学)がNFL入りを果たした。


 OLはアイオワ大学のブランドン・シャーフ(レッドスキンズ、5番目指名)を筆頭にエレック・フラワーズ(マイアミ大学、ジャイアンツ)、アンドラス・ピート(スタンフォード大学、セインツ)、キャメロン・アービング(フロリダ州立大学、ブラウンズ)、セドリック・アブイヒ(テキサス農工大学、ベンガルズ)、D・Jハンフリーズ(フロリダ大学、カージナルス)、レーケン・トムリンソン(デューク大学、ライオンズ)の7人が指名を受けた。


 2巡目でもこれらのポジションは人気を集め、RBが2人、OLが6人指名を受けた。こうした傾向の背景にあるのはNFLにおけるバランスアタックの再評価だ。
 NFLではパス偏重型のオフェンスが主流だ。2、3年前まではどのチームもWRやTEの人材集めに躍起になり、1試合中におけるパス使用率が7割以上に達するチームも多く現れた。この時期はRBが1巡で指名されなくなった時期と一致する。


 しかし、リーグ1位のパスオフェンス力を持った2013年のブロンコスがその年のスーパーボウルでシーホークスに大敗したことで潮流が変わる。
 苦杯をなめたブロンコスはもちろん、ペイトリオッツやスティーラーズなどがこぞってランプレーに力を入れ始めたのだ。そして、それは高い効果をもたらした。スティーラーズはRBレベオン・ベルの台頭で昨季は3季ぶりのプレーオフ復帰を果たした。


 ペイトリオッツもラン重視の方針が功を奏してスーパーボウルで優勝、ブロンコスですらQBペイトン・マニングが故障で不振な試合をランで打開した。
 もっとはっきりとランプレーをオフェンスの中心に据えるチームもあった。カウボーイズやイーグルス、シーホークス、49ersなどだ。カウボーイズは言うまでもなくリーディングラッシャーとなったデマルコ・マレーの活躍で、これも久しぶりにプレーオフに進出した。


 ランプレーを支える重要なポジションがOLだ。特に、カウボーイズのOL重視のチーム作りは他チームに大きな影響を与えた。
 カウボーイズはGMを兼務するジェリー・ジョーンズ・オーナーの方針もあって、ドラフト上位で有能なOLを集める傾向がある。その結果、タイロン・スミス、ザック・マーティンらを中心とした強力なラインアップが誕生した。


 OLの布陣が固定されるとチーム力が安定する。そして、それは数年間続くのが過去のNFLの例だ。2007年、2011年シーズンにスーパーボウルを制したジャイアンツ、2005年から10年の間に3回のスーパーボウル出場を果たしたスティーラーズ、1997~98年シーズンに2連覇を達成したブロンコスなどはいずれもOLに有能な人材がそろっていた。


 今年のオフのカウボーイズは、マレーがFAとなって移籍するのを引き留めなかった。慰留には莫大な契約金がかかるためでもあるが、今のOLであればほかにも活躍できるRBを発掘できるという計算も働いた。それだけカウボーイズのOLは充実している。


 他チームの成功に敏感なNFLでは、有効な手段は迷わずに導入して成果を求める。「コピーキャット(まねっこ)リーグ」と呼ばれるゆえんだが、これがまた戦力均衡を生む理由の一つでもある。
 パス偏重という基本路線に変更はないが、よりバランスのとれたオフェンスを目指す傾向はこれからも強くなるだろう。
 RBやOLに対し1巡指名を行使したチームは、最近の傾向に敏感だということだ。OLの整備には時間がかかるかもしれないが、RBは即戦力として活躍しやすい。
 今年は1巡で指名された選手のうち、QBやOLB、DEだけでなく、RBやOLの活躍にも注目したい。

【写真】ラムズから1巡指名を受けたジョージア大RBトッド・ガーリー(AP=共同)