ドラフトはフリーエージェント(FA)制と並んでオフのチーム補強の重要な柱の一つだ。ドラフトによる補強に成功すれば長期にわたってチーム力が安定する。
 FAで選手を獲得するよりも年俸を低く抑えられるのと同時に、若手の成長によって世代交代がスムーズに進むからだ。


 ところが、失敗するとそのダメージは大きい。とくに1~3巡のように早いラウンドで指名した選手が期待外れに終わると、貴重な指名権と年俸、契約ボーナスを無駄にするばかりか、ファンの心は離れ、GMをはじめとする人事担当者は信頼を失う。
 こうした期待外れの選手は「Bust(バスト)」と呼ばれ、悪い意味で語り継がれていくのである。


 その最たる例が1998年にドラフト1巡、全体の2番目指名でチャージャーズに入団したQBライアン・リーフだ。ドラフトのバストと言えばこの人というくらい必ず引き合いに出される人物だ。


 なんと、このリーフは今でもNFLで大活躍する名QBと全体1位指名を争ったのだ。その名QBとは歴代屈指のパサーの呼び声も高いペイトン・マニング(コルツ―ブロンコス)だ。
 今では信じられない話だが、当時はどちらが先に指名されてもおかしくないくらい同等の扱いだったのだ。


 では、そのリーフはNFLではどうだったのか。ワシントン州立大学時代に高い評価を得た肩の強さは本物だった。しかし、コントロールが定まらず、先発QBとして定着することがなかった。しまいにはチャージャーズのファンやGMといざこざを起こして解雇されてしまう。


 いくつかのチームを転々とした後、人知れず引退。通算成績は4勝17敗。14個のTDパスに対して被インターセプトは36を数え、パサーレイティングはわずか50という数字だった。
 チャージャーズが彼に払った3200万ドルはそのほとんどが無駄金に終わったのである。そして、現在リーフは薬物売買の罪に問われ、服役中だ。


 レイダーズが2007年に全体1位で指名したジャマーカス・ラッセルも悪名高きバストの一人だ。QBでありながらLB並みの体格を持ち、優れた身体能力の持ち主だったが、パスの技術はまったく向上しなかった。


 ラッセルはカレッジでは活躍したアスリートQBがNFLに順応できないまま終わる典型的な例の一人として挙げられる。
 NFLでQBに求められる資質は運動能力よりもパスの能力だ。それに対応できなかったところにレイダーズとラッセルの失敗があった。


 1995年シーズンを最後に一度はNFLから姿を消したクリーブランド・ブラウンズは4年後に新興チームとして復活した。その年に特別措置として与えられた1位指名権で獲得したのがQBティム・カウチだ。
 あまりの期待の大きさに、ドラフト当日を待たずに指名を発表し、契約まで済ませてしまうという事態まで起きた。それでも伝統あるブラウンズのファンを納得させる活躍はできなかった。


 カウチにとって不幸だったのは新興チームであるために選手のレベルが低く、彼の成長を助けることができなかったことだ。2002年のプレーオフ進出に貢献はしたが、1位指名のQBとしてそれは決して十分な仕事でなかった。


 バストにQBが多いのは重要なポジションであると当時に、カレッジからプロへの順応が難しいのが理由だ。これは今でも解消されていない大きな課題と言っていいだろう。
 ドラフト戦略はチームや担当するGMの方針によって大きく異なる。OLを1巡で指名するか否かもチームの性格が表れやすい。


 OL指名は中盤以降のラウンドで十分と考えるチームもあることは事実だ。その一方で、カウボーイズのようにOLの重要性を意識して積極的に1、2巡で指名して成功を収めているチームもある。
 ただし、1巡指名したOLがバストであると、スキルポジションに行使しておけばよかったと後悔する羽目になる。1989年に全体2番目でOTトニー・マンダリッチを指名したパッカーズもその一つだ。


 巨漢のマンダリッチは即戦力と期待され、当時のOL最高年俸で契約した。しかし、NFLの素早くパワフルなDLに翻弄される試合が続き、2年も持たずに解雇された。
 彼が指名されたドラフトではQBトロイ・エイクマン、RBバリー・サンダース、DBディオン・サンダース、LBデリック・トーマスといった、のちの殿堂入り選手を輩出している。


 実際にはエイクマンは全体1番目ですでにカウボーイズに指名されていたが、もし、彼を指名したのがパッカーズだったら90年代のNFLの様相は大きく変わっていただろう。
 90年代前半に49ersと覇権を争ったのがカウボーイズではなくパッカーズだったかもしれないし、ブレット・ファーブが台頭する環境は生まれなかったかもしれない。


 間もなく今年のドラフトが始まる。今年は4月30日から3日間の日程でシカゴで開催される。選手の見極めはGMや人事担当者の手腕の見せ所だ。期待された選手がバストとなって消えていくのは寂しいものだ。
 反対に、下位指名選手が次々とスターターになってスーパーボウルで優勝したシーホークスのような例もある。どうせ予想を裏切られるなら、後者のような意外性を期待したい。

【写真】レイダーズが1位指名したが期待外れに終わったQBジャマーカス・ラッセル(AP=共同)