3月21日に大阪のキンチョウスタジアム(長居球技場)で関西学院創立125周年記念試合として関学大ファイターズ対米アイビーリーグのプリンストン大タイガース「レガシーボウル」が開催された。結果は7―36で4年連続大学王者の関学が大敗した。


 筆者は関学大がプリンストン大を破り、アイビーリーグのフットボールのレベルを日本が越えるというシナリオを期待していたのだったが、それはかなわなかった。


 それどころか、身長差、体重差、スピード差を埋めることができず、日本がアメリカやカナダと対等に戦うための基本的要素がまだ整っていないとの印象を受けた。


 これまでいくつもの国際試合を取材してきて、日本のチームはスピード、クイックネス、テクニックではアメリカやカナダにある程度通用するのではないかとの印象を持ってきた。


 もちろん、NCAAで全米王座を目指し、将来のNFL選手を多く輩出するメジャーカレッジにはかなわないにしても、アイビーリーグやディビジョン2を相手にして遜色のない戦いをするのではないかという期待があった。ことに、4年連続で学生王座に君臨し、打倒社会人を目標に掲げている関学大ならばという思いも強かった。


 その期待が無残にも砕かれたのがレガシーボウルだった。もちろん、関学大だけの戦力で日本のフットボールを代表することはできないし、3月中旬という時期的な状況を考えても日本の大学フットボールがそのポテンシャルを存分に発揮できる環境にあったとは言えない。


 しかし、それはプリンストンタイガースも条件は同じだ。彼らは昨季の4年生を除いた新チームで来日しており、昨シーズンに4年生で先発したQB斎藤圭やRB鷺野聡が途中出場した関学大と状況が異なる。


 ちなみに斎藤が出場したドライブは計6回のパス試投で4回の成功、1インターセプトに終わった。一方で次世代のエースを担う伊豆充浩は35試投で17回成功、141ヤード、1TD獲得の成績を残した。
 プリンストン大で印象的だったのはスピードとアジャスト能力の高さだった。パスラッシュのスピードはもちろんだが、パスのターゲットとなるレシーバーへのクロージングスピードが速く、関学大はパスキャッチ後もゲインを重ねられなかった。


 パスラッシャーをあえてもらしてすれ違いにパスを投げるスクリーンプレーでは、ラッシャーのスピードが予想以上に速かったのか、斎藤も伊豆も投げるタイミングを急がされた。
 関学大が最初にロングゲインをしたのは第1Qの3回目のオフェンスドライブでの伊豆から鷺野へのショベルパス(28ヤードゲイン)だった。これをきっかけにドロー系のタイミングを遅らせるプレーが効果を発揮したが、それも後半には対策を講じられ、後半はほとんどゲインができなかった。


 あらゆる場面で関学大らしさがプリンストン大のフィジカル面での強さに封じられた印象の強い試合だった。
 試合の結果は残念だったが、プリンストン大の今回の来日に対する真摯な態度には感銘を受けた。チームが来日したのは3月14日だ。試合まで中5日あったので十分にコンディションを整えることが可能だった。


 アメリカからチームが来日する場合、予算の都合もあり、木曜日に到着して日曜日に試合を行って直後に帰国というパターンが一般的だ。ただ、これでは時差ボケが十分に取れない可能性が高い。
 今回は関西学院の創立記念行事という恵まれた環境もあったのだろうが、滞在日程を長くして体調を万全にする時間があった。それだけプリンストンもこの試合を重視していたということだ。


 NCAAの規定では大学は春季のフットボール活動は12回と決められており、それぞれ活動できる時間も細かく設定されている。プリンストン大は地元ニュージャージーで8回の練習を行い、来日後に関学の施設内で練習を3回行った。
 そして、レガシーボウルが12回目かつ最後のフットボール活動だった。これを最後に夏のキャンプまでチームとしてフットボール活動を行うことはない。


 関係者から聞いた話だが、今回の来日に際し大学側から観光などの行事をあまり詰め込まないように要請があったそうだ。それは、一日に1、2時間はホテルで勉強をする時間を確保するためだという。 事実、彼らが宿泊していたホテルではロビーで教科書を読みこんでいる選手の姿が見られたそうだ。
このあたりを、試合前日に関学大で講演した同大学の体育事業部副部長のアリソン・リッチ博士に話を聞いた。プリンストン大では学生の指導として「タイムマネジメント」と「レスポンスビリティ」を重視しているという。


 タイムマネジメントは、学生個々が授業など義務付けられたものに費やす時間と余暇をいかにうまく使い分けるかの指導だそうだ。一日の中で授業のない時間帯をいかに使うか。もちろん、フットボール活動はこの時間内に行わなければならず、選手はそれぞれにスケジュール管理をして時間を有効に使うことを要求される。そこには、学生の本分ともいうべき学業を優先するという大前提が存在する。


 本分を全うするということはプリンストン大の学生としての責任を全うするということにもつながる。その上で、それぞれが達成すべき目標を持ち、自主的に必要な行動をする。この責任感と自主性の合わさったものがリッチ博士の言う「レスポンスビリティ」なのだ。
 プリンストン大の姿勢には、学生スポーツの本来あるべき姿が存在する。それを理想と片付けるのではなく、実践しているところがすばらしい。アメリカのフットボールのレベルに追い付くことを目標とすることも重要だが、こうした学生スポーツの在り方を見習うこともまた大切だ。

【写真】「レガシーボウル」はプリンストン大が関学大を圧倒した=撮影:山岡丈士、3月21日・キンチョウスタジアム