NFLの2015年度の最初の1週間は目まぐるしいほど選手の動きがあり、近年まれにみる大物選手の移籍が相次いだ。


 イーグルスはRBルショーン・マッコイをビルズにトレードし、代わってLBキコ・アロンソを獲得したのに続き、QBニック・フォールズをラムズに譲渡し、引き換えにQBサム・ブラッドフォードを得た。
 RBの穴は昨季のリーディングラッシャーのデマルコ・マレーをカウボーイズから獲得することで埋めた。


 注目されたライオンズDTダムコング・スーはドルフィンズと契約し、そのドルフィンズはWRマイク・ウォレスをバイキングズにトレードした。


 コルツはフリーエージェント(FA)戦略でもっとも活動的だったチームの一つで、RBフランク・ゴア(49ers)、WRアンドレ・ジョンソン(テキサンズ)、LBトレント・コール(イーグルス)らを次々と獲得して、昨季あと一歩届かなかったスーパーボウル出場に向けての補強を進めている。


 シーホークスはセインツとのトレードでTEジミー・グレアム獲得し、RBマーション・リンチの慰留とともにオフェンスの戦力維持、強化に成功した。
 それぞれのポジションでリーグトップクラスの選手がこれほどまでに移籍するのは珍しい。今から9月のシーズン開幕が楽しみだ。


 さて、こうした派手な移籍劇の裏で年齢的に早すぎる引退を決断した選手たちもいる。QBジェイク・ロッカー(26歳)、LBパトリック・ウィリス(30歳)、LBジェイソン・ワールズ(27歳)だ。


 ロッカーは2011年ドラフト1巡(全体の8番目)指名を受けてタイタンズに入団した。将来のフランチャイズQBとなることを期待された人材だったが、度重なる故障のために結果を出せず、昨季後半にはベンチに下げられてしまった。
 そして、タイタンズとの契約が満期を迎えると同時にFAとなって他球団への移籍を模索するものと思われていた。


 しかし、本人いわく、「フットボールを続けていくための燃えるような意欲をなくした」ため、移籍先のチームに迷惑をかけないようにユニフォームを脱ぐ決意をした。4年間のNFL在籍で出場試合は先発23回を含むわずか30試合に終わった。


 ウィリスはオールプロに5回、プロボウルにも7回選出された実力者で、チームリーダーとしても49ersを牽引してきた。故障にも強い選手だったが、昨季には足の親指の負傷でシーズンの後半を棒に振った。その後も回復は思わしくなく、これが引退を決意する直接的な理由となった。


 引退会見でウィリスは「言い訳はしない。今の自分の足は、みんなを驚かせるようなプレーを披露できる状態にない」と述べた。選手寿命の伸びているNFLでは30歳という年齢は必ずしもピークを過ぎたものではない。
 しかし、理想とするプレーができない状態で現役を続行することはウィリスの美学に反するのだろう。


 スティーラーズのワールズはパスラッシャーとしてスターターの地位を確立し、キャリアベストの成績を残した直後での引退宣言だ。
 昨季はチームトップの7・5サックで大きく貢献した。2010年にドラフト2巡で指名されてスティーラーズ入り。2巡指名のLBは大成するというスティーラーズの伝説を立証する存在で、FAでも大きな関心を寄せられると予想されていた。
 しかし、「ほかの関心ごとを追い求めていくことにした」と、あっさりとNFL生活にピリオドを打った。


 理由はそれぞれだが、引退という決意は人生の中で大きなものだ。我々ファンにとって彼らはNFLの世界の住人だが、彼らとその家族にはそれぞれの人生がある。
 プレーを見られなくなるのは残念だが、彼らの人間性を垣間見ることができるのもこの引退の瞬間だ。今後の人生に幸多かれと祈りたい。

【写真】セインツからシーホークスへ移籍したTEグレアム(AP=共同)