3月10日をもってNFLは正式に2015年度を迎えることになる。そして、同時にフリーエージェント(FA)選手との契約やトレードが解禁となり、チーム補強がいよいよ活発化する。


 今年はいきなり大きなトレードが持ち上がった。イーグルスがRBルショーン・マッコイをビルズにトレードし、代わりにLBキコ・アロンソを獲得することで合意した。正式な移籍成立は10日以降となるが、すでにマッコイとビルズの間で新契約で合意に達するなど、水面下での準備は進行している。


 NFLでは選手とドラフト指名権との交換が一般的で、選手同士のトレードはむしろ珍しい。複数の報道によればマッコイとチップ・ケリーHCの間に確執があり、それが放出につながったようだ。
 一方のビルズは前ジェッツHCのレックス・ライアンが指揮官となり、改革を推し進めている。アロンソは新人だった2013年シーズンに大活躍したが、昨年は膝の靱帯断裂で棒に振った。


 このトレードのあおりを食ったのがビルズのRBのC・Jスピラーだ。フレッド・ジャクソンとの二枚看板で貢献してきたが、マッコイの入団でビルズからは契約延長が見送られFAとなる。


 今年のFA市場はRBに人材が豊富で、リーディングラッシャーのデマルコ・マレーを筆頭にビッグネームがそろう。ラッシング王がFAとなるのは異例だ。カウボーイズはマレーとWRデズ・ブライアントが同時に契約満期を迎えたが、ブライアントをフランチャイズ指名することでこちらの契約延長を優先にした。
 カウボーイズはOLが強いので、マレーでなくてもランオフェンスが展開できるとの判断があったかもしれない。


 また、今年のFAのRBにはドラフトで1巡指名を受けた選手が7人もいる。上記のスピラーもそうで、これも珍しい。出場停止処分が明けたエイドリアン・ピーターソン、レイ・ライスの去就も気になるところだ。


 最も注目を集めているFAがDTダムコング・スーだ。2010年の入団以来ライオンズのDLの中心として活躍してきた。すでにドルフィンズが獲得の意思を表明しており、マイアミ行きが確実視されている。
 スーのチームメートのニック・フェアリーもFAとなっているので、ライオンズは自慢のディフェンスから一気に二人のDTを失う可能性が高い。


 ディフェンスではFSデビン・マコーティ、CBバイロン・マックスウェル、OLBジェイソン・ワールズが高い評価を得ている。
 オフェンスではレシーバーの需要が高く、WRトーリー・スミス、TEジュリアス・トーマス、ジョーダン・キャメロン(富士通フロンティアーズのQBコービー・キャメロンの実兄)らの獲得競争が激しくなりそうだ。


 現行のFA制度が導入されたのは1993年のことだ。その直後は49ersやカウボーイズが躍起になってタレントを集め、それがスーパーボウル優勝に直結した。その象徴的な存在が殿堂入りも果たした名CBディオン・サンダースだ。
 サンダースは1994年にファルコンズから49ersへFA移籍し、スーパーボウル優勝に貢献した。その翌年にはカウボーイズと契約し、ここでもリーグ制覇を達成した。


 有能な選手の引き抜き合戦は年俸の高騰を招き、チーム経営をひっ迫するだけでなく、主力選手の放出による低迷の原因となった。49ersとカウボーイズもその例外ではなく、ヒューストン・オイラーズ(現テネシー・タイタンズ)なども無計画なFA戦略で長期の低迷を経験した。


 その一方でスティーラーズのように、伝統的にドラフトによるチーム作りを貫くチームもある。その利点は年俸を比較的安く抑えながら長期の成功が見込めることだ。
 ただし、選手育成プログラムが整備されている必要があり、また、育てた選手の再契約時には年俸上昇も覚悟しなければならない。チームが補強の結果を出すまでに時間がかかってしまうことも少なくない。


 最近ではドラフトをチーム作りの中心にしながら、必要に応じてトレードやFAで弱点を補うチームが成功している。シーホークスやペイトリオッツがそうだ。


 シーホークスではQBラッセル・ウィルソン、CBリチャード・シャーマンといった生え抜きとトレード加入のRBマーション・リンチが絶妙のバランスを生み出した。
 ペイトリオッツはドラフトで指名したLBドンテ・ハイタワー、DEロブ・ニンコビッチを育成する一方で、CBブランドン・ブラウナー、ダレル・リービスらFA加入組がセカンダリー強化で役割を果たし、10季ぶりのスーパーボウル制覇を達成した。


 チーム補強の方法はオーナーを筆頭にGMやHCの方針が如実に表れる。チームの経済状況を見ながらの補強は決して簡単ではないが、だからこそフロント陣の手腕と工夫が発揮される分野でもある。
 いよいよ始まるFA戦略と、4月30日から5月2日までシカゴで開かれるドラフト会議。それぞれの利点をどのように生かしてチームを作るか。日本のフットボールやカレッジフットボールとは違った面白さがここにもある。

【写真】ビルズに移籍するイーグルスのRBマッコイ(AP=共同)