オフシーズンに突入したばかりのNFLだが、3月10日はフリーエージェント(FA)となっている選手の契約締結が解禁となる日で、早くも補強に向けた動きが最初の山場を迎える。


 今年はダムコング・スー(ライオンズDT)、ジュリアス・トーマス(ブロンコスTE)、デマリアス・トーマス(ブロンコスWR)、ジャスティン・ヒューストン(チーフスOLB)、デズ・ブライアント(カウボーイズWR)らビッグネームが契約満了を控えており、米国東部時間10日午後4時(日本時間11日午前6時)よりも前に現在所属するチームとの間に新たな契約が成立しなければFAとなってどのチームとも契約交渉が可能となる。


 FAとなる可能性のある選手を引き留める方法はいくつかある。まずは10日の期限が来る前に契約を延長することだ。すでにチームと選手の代理人の間では交渉が行われているはずで、契約期間と年俸で折り合いがつけばすぐに契約書にサインして成立する。
 ただし、主力選手の契約延長には大幅な年俸アップと締結時に払うボーナスが付きまとい、これがチーム経営をひっ迫する可能性がある。その場合、チームは選手との契約延長を断念して退団を容認することになるのだ。


 また、該当する選手がFAとなっても他のチームからの「引き」がそれほどないはずとチームが判断した場合、あえてFAとさせておいてから契約交渉に入る場合もある。移籍先を見つけられない選手とは年俸交渉が有利に進めやすいからだ。


 FA選手の引き留め策として「フランチャイズ指名」という制度がある。これは「選手がチームのフランチャイズ選手である」と宣言することで、優先的交渉権を確保する方法だ。フランチャイズ指名を受けた選手は一時的に他球団との交渉が制限される。


 一見、FA選手には不利な条件に見えるが、その代わりチームはFA選手のポジションの年俸トップ5の平均額以上か、選手の前年の年俸の2割増しのどちらか多い方を払う契約を結ばなければならない。


 フランチャイズ指名には「独占的」と「非独占的」の2種類があり、前者はフランチャイズ指名を受けた瞬間に他チームとの交渉が許されなくなる。選手がフランチャイズ指名に同意して契約書にサインした時点で1年契約が成立する。この場合でも選手とチームが合意すればさらに契約を更改して延長することも可能だ。


 非独占的フランチャイズ指名ではすべてのチームとの交渉が許される。しかし、あくまでもチームが優先的にFA選手と交渉するために制度なので、完全に自由ではない。
 たとえば、他チームからの契約のオファーにFA選手が合意した場合でも、旧チームがそれと同等の内容の契約を提示すれば移籍を防ぐことができる。また、あえて同等内容の契約を提示せずに移籍を容認した場合、移籍先のチームからドラフト1巡指名権を二つ譲渡される。


 フランチャイズ指名は各チーム1年に1回しか行使できないが、総じてFA選手はこれを嫌う。他チームと自由に交渉できた方が年俸も上がるし、二つの1巡指名権を譲渡してまでFAで選手を取ろうとするチームは少ないからだ。フランチャイズ指名を受けた選手が、それを不服として契約をせずに、チームともめるという事態も珍しくない。


 フランチャイズ指名と似たような制度に「トランジッション指名」というのがある。トランジッション指名では選手に約束される年俸が同ポジションのトップ10の平均か2割増しの多い方となる。また、移籍を容認しても、旧チームには見返りがない。
 チームは1年につきフランチャイズかトランジッションのどちらか一つしか使うことができない。


 このフランチャイズとトランジッション指名をいかに使いこなすかはGMの手腕と交渉術の見せ所だ。キッカーやパンターのように平均年俸が低いポジションには指名制度は有利で、過去にも行使された例が多い。
 今年は先述のように多くの主力選手が旧契約の満了を迎える。契約延長か、指名制度の適用か、それとも移籍の容認か。これはファンのみならず、選手補強をもくろむ他チームも大いに注目するところだ。

【写真】契約満了を迎えるブロンコスのWRデマリアス・トーマス(AP=共同)